風にのって【チベット旅行記7】
こんにちは!yukiです。
今回は、
チベット旅行記の最終回となります。
これまでの投稿を
多くの方に読んでいただけて、
とても嬉しいです。
ありがとうございます!
チベットの旅では、
本当にたくさんの
ご縁をいただきました。
今回は、
チベット最後の町での
出会いと別れのエピソードを
書いていきたいと思います。
それでは、どうぞ!
最後の町、マルカム
チベット旅の最後に
訪れることにしたのは、
マルカム(馬爾康)という町です。
ここは、
元々は行く予定がなかった町。
行くことに決めたのは、
旅の途中で出会った僧侶・フォーさんに
おすすめされたからです。
僕はフォーさんに尋ねました。
「この後の行き先、
まだ決めかねているんです。
フォーさんがお好きな場所って
ありますか?」
すると、
「マルカムは良いところですよ。
時間があったら、
寄ってみてくださいね」
と教えてくれました。
フォーさんがそう言うなら、
と行ってみることにしたのです。
ものすごい悪路
マルカムには、
セルタ(色達)という町から
バスで向かったのですが…
スーパー悪路でした。
夜明け前の食堂でお粥を食べ、
バスに乗り込みます。
バスは、
これまでのような草原ではなく、
谷間の道を下っていきます。
町を出てからほどなくして、
道が悪くなってきました。
揺れる…めっちゃ揺れる!!
1分に1度は身体が宙に浮き上がります。
ひどいときは20cmくらい。
舌噛みそう、シェイクされてる感じ
周りのお客さんも、
座席や手すりに
必死でしがみついていました。
そんな激しい揺れが、
3時間以上、
ノンストップで続いたのです。
10時間かかって、
夕方ごろマルカムに到着しました。
まさかこんなに時間かかるとは。
ヘトヘトだけど、
無事でよかった…
ユビさん
マルカムは、
谷間の川沿いにある小さな町でした。
人の少ない通りを歩いて、
通りがかった人に
「泊まれるところ知りませんか?」
と聞いていきます。
なかなか見つからずに困っていると、
「宿探してるの?」
と小柄な女性に声をかけられました。
あっ、この方、
さっき同じバスに乗ってた…
荷物からして旅行者です。
たぶん、一回りくらい年上。
「私も探してるところなの。
よかったら一緒に探さない?」
女性はユビさんといって、
中国人でした。
ようやく1軒見つけたのですが、
ちょっと高い!
貧乏旅行の学生にはキツイ。
苦笑いしている僕を見て、
「アハハ、ちょっと高いね。
よかったらシェアする?」
と言ってくれ、
ありがたくお願いすることにしました。
自由旅行をされない方には
けっこう驚かれるのですが、
たまたま出会った人と
部屋をシェアすることはよくあるのです。
しかし、チェックインして部屋に入ると、
寝室の横はガラス張りのトイレとお風呂…
「あーー」
苦笑するしかありません。
「シャワー浴びるでしょ?
外出てるから、10分でお願いね!」
先どうぞ、と言ったのですが、
「いいからいいから!」
と出て行ってしまいました。
10分後。
ユビさんは、
リンゴを2つ持って帰ってきました。
「はい、あなたの分。」
「ありがとうございます!」
丸かじりしながら少し話します。
「中心街はちょっと離れてるみたいね。
今日、これからどうするの?」
「お寺行ってから、
中心街も行こうかなと思ってます。
ユビさんはどうするんですか?」
「私はお寺には行かないけど、
中心街は行こうと思ってるわ。
もし向こうで会えたら夕飯食べましょ。」
運に左右される約束をし、
外に出てお寺へ向かいました。
辺境のお寺
マルカムは標高が低く、
町の周囲には青々とした森が
広がっています。
お寺の方向を聞きながら歩きましたが、
この土地の皆さんも、とても優しい。
気になったのは、
これまで高地で会った人々と
服装が違うのです。
チベットっぽい服装じゃなくて、
東南アジアの少数民族っぽい服装。
そして、家も特徴的です。
細かい石を組み合わせたようで、
卍が書いてある家も多々。
マルカムのお寺は、
山の斜面にありました。
坂を登ってお寺に着いたとき、
ブルーの上着を着た背の高い男性が
敷地に入るのが目に入ります。
挨拶すると、彼も旅行者。
彼はウィリアムさんといいました。
カナダ出身で北京に住んでいる、
仏教徒の中国人です。
一緒にお寺を見学することにして、
お堂を覗いてみました。
お堂の中では、
一人の僧侶が読経されていました。
こちらに気づき、
「入ってどうぞ」と合図をされます。
中に入ると、
薄暗く四角いお堂の奥に、
おどろおどろしい像が
立ち並んでいました。
かすかに、
お香の匂いが漂っています。
僧侶が一人で読経しながら
ベルを鳴らしているだけなのに、
お堂の中は
凄まじいエネルギー空間でした。
空気の振動を肌で感じるほど、
響きが充満しているのです。
ウィリアムさんが五体投地を始めたので、
僕も一緒に行います。
(五体投地はこちらの記事で解説してます)
それから、お堂の中を
右回りで見学しようとしました。
チベットでは
右回りが良しとされるからです。
しかし、ウィリアムさんが
「ここは左回りなんだよ」
と耳元で囁きます。
・・・左回り?どういうこと?
よく分かりませんが、
左回りで見学し、
礼をして外へ出ました。
ウィリアムさんに、
「なんで左回りだったんですか?」
と聞くと、
「ここは、
仏教より前からあった
信仰のお寺なんだよ」
といいます。
それを聞いてハッとしました。
ボン教か!
ボン教とは、
仏教が入ってくる以前から
チベット全土で信仰されていた宗教です。
その特徴は、アニミズムと祖霊信仰。
神道のような土着の信仰と考えると
分かりやすいかもしれません。
しかしボン教は、
仏教の拡大に伴って衰退し(融合ともいえる)、
辺境の地に僅かに残るのみと
聞いていました。
ボン教では仏教と違い、
左回りが良しとされます。
卍も、ボン教の印。
思いがけずボン教にふれて
驚いたと同時に、
チベット世界のはずれまで
来ていることに気付いたのでした。
「素晴らしかったチベットの旅も、
本当に終わっちゃうんだな…」
少し、しんみりした
気持ちになったのです。
チベット最後の夜
ウィリアムさんと、
「中心街で一緒にご飯食べよう」
ということになり、
お寺のある斜面を下っていきます。
「ユビさんいるかな?」
と宿に寄りましたが、
すでに外出されていました。
中心街に着くころには、
辺りは真っ暗。
通りがかった運動場では、
地元の方が、
大音量のなか踊っていました。
眺めていると、
「おいで!」って手招きされて、
ウィリアムさんと僕も踊ってみます。
ゆったりしたシンプルな動きだから、
マネできました。楽しい。
私たちを見て、
地元の皆さんもニコニコでした。
しばらく踊ってから、
夕飯のお店を探します。
ウィリアムさんは、
「やっぱさ、マルカムの
ローカルフード食べたいなあ。
yukiもそうでしょ?!」
とグイグイ引っ張ってくれました笑
しかし結局ユビさんには会えず…泣
チベットのご飯って優しい味つけだし、
口に合うので毎日幸せだったのですが、
この日の食事は格別でした。
何なのこれ、
信じられないくらい美味しい!
ウィリアムさんは、
「今は北京の近くに住んでて、
ポーター(登山で荷物運ぶ人)
の仕事してるんだ。」
といいます。
サイクリングが好きで、
今回のチベットも自転車旅。
チベットでヒルクライムとか、
凄すぎですね。
ポーターされてるだけあります。
美味しすぎる食事のあと、
ウィリアムさんは、
「yukiはまだ学生だから、
ご馳走するよ。
俺も、昔いっぱい
ご馳走してもらったからさ」
と言って払ってくれたのです。
さっき会ったばっかなのに…!
こういう人になりたいなあ。
レストランを出ると、
なんとユビさんと
ばったり会いました。
「ごめんなさい、
ご飯食べちゃったんですけど、
ユビさんもう食べました?」
「いま会うなんてね!
私も、もう食べたよ〜」
良かった…!
ウィリアムさんは
別の宿に泊まっていたのですが、
私たちの部屋に呼んで、
夜が更けるまでおしゃべりしました。
ウィリアムさんは、
僧侶と一緒に山登ったり、
お寺に泊めてもらったりしたそう。
今は北京への帰り道です。
ユビさんは、
遥か遠い、聖地カイラスの帰り。
旅の話をして、
写真を見せ合って、
楽しい夜となったのでした。
ウィリアムさんとは、
宿の入り口でお別れ。
「会えて良かったよ。
気をつけて日本帰るんだよ!」
「こちらこそ、楽しかったです!
ウィリアムさんこそ、
自転車の旅お気をつけて。」
握手して、
姿が見えなくなるまで
見送ったのでした。
旅の終わり
翌朝。
まだ暗い中、
ユビさんと宿を出て、
食堂で朝食を食べます。
味のついてないお粥と、
味の薄いお漬物でした。
「ユビさんは、
まだ旅を続けるんですか?」
「ええ。もうちょっと、
この辺りの小さな集落を
周ってみようと思ってるわ。」
朝食を終え、
夜明けの冷たい空気を浴びながら、
薄明かりのバスターミナルへ。
「楽しかったわ、ありがとう。
気をつけて日本帰ってね!
良い旅を!」
「こちらこそ、楽しい時間を
ありがとうございました。
ユビさんもお気をつけて、
良い旅を!」
握手してお別れしました。
旅は、出会いと別れの繰り返し。
嬉しくて、切なくて…
そんな複雑な感情は、
やがてまとまっていき、
ひとつの美しい思い出になるのです。
僕が乗ったバスは
山間部から平地に入り、
やがて大都市・成都に着きました。
「あたたかい旅だったな…」
都会をひとり歩きながら、
遥かチベットに思いを馳せたのでした。
風にのって
チベットのあちこちで目にする、
5色の旗・タルチョー。
タルチョーに描かれた
風の馬・ルンタは、
風にのって祈りを届けます。
「世界が安らぎと
平和に包まれますように」と。
いま、日本の僕がふれる風にも、
きっとルンタがのっている。
そう思うと、
穏やかで優しい気持ちになれるのです。
世界中の人に、
チベットからの安らぎと平和の祈りが、
風にのって届きますように。
これでチベット旅行記は終わりです。
読んでくださり、
本当にありがとうございました。
今回、取り上げきれなかった
出会いもたくさんありました。
旅で出会った全ての方に、
心から感謝しています。
それでは、
良い1日をお過ごしください!
【関連記事】
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?