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第163回 【該当者なし?】or【該当者なし】――YouTube動画のサムネイル、どっちにすべきか? たった1文字の「?」が、観る人をコントロールする!
今バズっている密着ドキュメンタリー『BackStory』の動画マーケティング戦略の最前線
サムネイルのキャッチコピーを「疑問形にしない」という結論! 今まさに行われている、西野亮廣の「仮説&検証」とは
今日は【動画のサムネイルに『?』は要らない?】です。
セミファイナル1日目の結果は「合格者無し」
ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の密着ドキュメンタリー『BackStory』の最新回が配信されましたが、ご覧になられましたでしょうか?
「まだ観てない」という方はYouTubeの西野亮廣チャンネルにアップされておりますので、先にそちらをご覧ください。
【BackStory】最新話『全員不合格』
というわけで、ここからはネタバレを含む最新回の感想や裏話を話しつつ、密着ドキュメンタリー『BackStory』のマーケティング戦略についてお話しさせていただきたいと思います。
今回はメインキャストである「アントニオ」と「レベッカ」のオーディションの模様が配信されました。
オーディション当日の段取りを少しだけご説明させていただくと、オーディションは『M1グランプリ』の予選みたいな感じで何日かに分けておこなわれ、事情により、どうしても現場に来れない方は(望み薄ではありますが)「動画審査」という形をとらせていただき、後日おこなわれる「最終オーディション」に進む…というスケジュールとなっていました。
そのうちの1日を使って、「アントニオ」のオーディション(セミファイナル1日目)がおこなわれたのですが、なんとその日の結果は「合格者無し」だったんです。
一応、その様子をカメラでまわしてはいますが、僕らは動画を盛り上げる為にオーディションをやっているわけではないので、「全員不合格」という結果が出た時は、演出の吉原光夫さんをはじめ、スタッフ全員が頭を抱えました。
僕らとしても、ここで決めたかった(安心が欲しかった)のですが、それが叶わなかったのが、アントニオオーディション(セミファイナルの1日目)だったんです。
本当にもう地獄みたいな空気が流れまして、「セミファイナルの2日目にかけるしかない」となったわけですが、セミファイナルの2日目も『全員不合格』となる可能性が全然あるわけで、先日配信された動画の中で『全員不合格』という判断をした側のスタッフが「あちゃー」となっていたのはそれが理由です。
そんな中、「アントニオ役」オーディションを受けてくださった四宮吏桜(しのみやりお)さんが、まさかまさかの「レベッカ役」にコンバート(役柄変更)され、再度、レベッカ役としてオーディションを受けることになり、これがメチャクチャハマりました。
ミュージカルは団体芸ですから、やっぱり「相性」というのが何より大事で、四宮さんのレベッカがドンズバでハマッた瞬間に、審査員の中に「レベッカ役の四宮さんと合うアントニオは誰だ?」みたいな目線が追加されるんですね。
そうして最終オーディションを迎えて、その結果は配信された内容のとおり。
いろんなことがありましたが、結果的に一番良い場所に着地した感じがあります。
サムネイルの最後に「?」はクセもの
さて。
現場は現場でそんな感じでしたが、僕ら(運営や動画編集チーム)は「このオーディションの様子をミュージカルに興味がない層にも届けて、最終的には劇場に足を運んでいただく」というミッションを抱えておりまして、この「記録用に撮った映像」に興味をもってもらう編集や仕掛けが求められます。
そんな中、スタッフさんから最初に上がってきた動画のサムネイルの文言が「出演権は誰の手に!?」だったんです。
たしかに、その通りなんですけども、この文言って何かを言っているようで実は何も言っていない気がして……というのも「オーディション」と謳っている時点で、視聴者さんの頭の中には「出演権は誰の手に?」という文言はあると思うんです。
つまり、枕を販売する時の宣伝文句に「寝るときに頭の下に敷くとイイ」と言っているようなもので、お客さんからすると「それは分かってます!」です。
次にスタッフさんから上がってきたのは「該当者なし?」だったんです。
たしかに動画の中では「該当者無し」という言葉を使っていて、その言葉を引っ張ってきて、サムネイルには最後に「?」を入れることで「どうなるの?」とお客さんの興味を惹き付けようとしたんだと思います。
ただ、この「?」がクセもので、僕らのこれまでの経験から、「該当者無し?」としてしまうと、「最終的には該当者が見つかったんだろうな」と邪推してしまう…というのがあって、実はあまりドキドキしない(「どうなるのー?」とはならない)。
東スポで「ネッシー発見?」と出ていたら、それは100%「ネッシー」じゃないじゃないですか?
そんな感じです。
最新回は「地獄の確認」で観に来てもらった方がイイ
もちろん「?」を入れることで、「どうなるのー?」と思ってくれる純粋な人も半分ぐらいはいると思うのですが、「該当者無し?」と最後にクエスチョンマークを入れて「どうなるのー?」と動画を観てくれる人の数よりも、「該当者無し」と言いきってしまって、その地獄(確定の不幸)を確認しに来てくれる人の数の方が多いと思ったんです。
フジテレビの「ザ・ノンフィクション」やYouTubeの「街録ch」に発生している引力は「どうなるの?」ではなく、「地獄の確認」だと思っていて、今回の『BackStory』の最新回は「地獄の確認」で観に来てもらった方がイイような気がしてサムネイルに「該当者無し」という文言を入れ、タイトルに「全員不合格」と入れさせていただきました。
偉そうに語っておりますが、まだまだ仮説の領域を超えていなくて、これらの結果が出るのは、まだもう少し先だと思います。
そんなこんなで来夏めがけてファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の密着ドキュメンタリー『BackStory』をズイズイと進めていきたいと思います。
今週は、仕事の不手際からアシスタントプロデューサーがブチギレられる瞬間にスポットが当たっています。
個人的には、これまでで一番好きな回です。
お楽しみに。
密着ドキュメンタリー『BackStory』はメンバー登録していただけると、通常放送よりも1週間ぐらい早くご覧いただけます。コチラから。
西野亮廣