第135回 結構な額の助成金を貰っておいて、なんで経営に困ることがあるの? 「お金がないので、給料は払いません」という、やりがい搾取で運営しているバレエ団が日本には多すぎる!
バレエ界にも起きている「夢と金」問題。「やりがい搾取」が当たり前になっている業界慣習の蓋を西野亮廣が開いた!
今日は【バレエ団に起きている『夢と金』問題】です。
谷桃子バレエ団のYouTubeの見せ方が本当に最高
『毎週キングコング』でもお話しさせていただきましたが、最近、谷桃子バレエ団のYouTubeにハマっています。
見せ方が本当に最高で、「バレエに興味がない人にバレエに興味を持ってもらうにはどうすればいいか? 公演を観に来てもらうにはどうすればいいか?」を本当に丁寧に考えられていて、おそらく、これまでバレエ関係者が隠してきた裏側のドロ臭い部分も、全部、曝け出しているんです。
「バレエはこんなに美しいものなんですよ〜」という押し付け宣伝じゃなくて、「ここで、泥臭く頑張っている人達がいます!」という物語を見せていくスタイルです。
このYouTubeチャンネルを仕掛けたスタッフさんも最高だし、それを受け入れた谷桃子バレエ団さんも本当に最高です。
お時間あれば、是非、観てください。
バレエ団に起きている『夢と金』問題
さて。
その谷桃子バレエ団のYouTubeチャンネルですが、これまで週2で配信されてきたのですが、バレエ団の懐事情的に「週2配信が厳しい(週2配信分の予算を払うのは無理)」という状況に今、陥っていて、まさに『夢と金』問題が起きているんですね。
これに関しては、「やっぱりバレエを作るにはお金がかかるんだなぁ〜」という感想を持たれる方もいらっしゃるだろうし、実際お金はかかるんですけども、ただ、これは谷桃子バレエ団さんに限った話じゃなくて、日本の多くのバレエ団が「お金」と「ビジネス」に関して知識が無さすぎる(勉強してなさすぎる)という身も蓋もない問題は確実にあって、ここに関しては『大人バレエアカデミーのイノくん』というYouTubeチャンネルで最近アップされた「バレエの世界はなぜお金に困るのか?」という動画をご覧いただきたいのですが、そこで、「東京シティ・バレエ団」という公益財団法人のお金まわりを分かりやすく紹介してくださっています。
公益財団法人なので「収支報告書」を公開しているのですが、それが驚きの内容で、年間の事業収益が「3億3417万7600円」のうち、「助成金収入」というお国からいただいているお金があって、それが「1億7875万6000円」もあるんです。
半分が助成金なんです。
これ、ちょっとビックリしますよね。
これはあくまで「東京シティ・バレエ団」さんの収支報告書であって、他のバレエ団さんの収支報告書ではないのですが、だけれど、基本、バレエ団って、公演する度に、かなり多くの助成金を貰っているんです。
くれぐれも「助成金を貰うのが悪」と言いたいわけじゃないですよ。
そういう制度があって、キチンと申請を出して、判子を貰ってやられているわけですから、「助成金」を受け取ることは何も悪くない。
問題は、「それだけ助成金を貰っておいて、なんで経営に困ることがあるの?」というところ。
引き合いに出して申し訳ないですが、僕らが主催で武道館で公演をする時や、幕張メッセで公演をする時、あるいは演劇やミュージカルを作る時は、日本のバレエ団さんよりも大きな予算がかかっていると思いますが、「助成金」は1円もいただいていませんし、その上で役者さん達がアルバイトしなくても済むように「稽古代」をキチンとお支払いしています。
この記事をお読みのバレエ関係者さんからすると、かなり耳の痛い内容になっていると思いますが、僕らは「チケットとグッズ以外で、どう売り上げを作っていくか?」ということと、ひたすら向き合っています。
理由はシンプルで、作品と文化とキャストとスタッフとスタッフのご家族を守る為です。
西野が「夢を追い続ける為には、お金の問題と向き合わなきゃいけないし、その勉強は大切だ。今なら、こういう方法がある」と発信する度に、いろんなところから「詐欺師だ! 金の亡者だ!」という声が飛んできて、その勢いで芸術・エンタメ関係からもそんな声が飛んできたりするわけだけれど、そんなこと言ってくる連中のほとんどが、「お金ないので、給料は払いません」とか言って、やりがい搾取でカンパニーを運営しているのが現状で、「ガタガタ言ってないで、プロなら、お前を信じてついてきてくれたキャストとスタッフとスタッフの家族を守る為のお金の勉強ぐらいしとけよ」というのが僕の本音です。
これに関しては先日のオンラインサロンと3月2日のプレミア放送で、もっとエグい話をしているので、そちらをチェックしてみてください。
すべての芸術・エンタメ関係者が健康的に活動していけることを願う
最後に。
そういったカンパニーを応援しているファンの方に向けて言わせていただくと、お金の問題と向き合う人間に対して「銭ゲバだ〜」と揶揄してしまった先に、何が待っているか? をもう少し想像した方がいい。
その先に待っているのは「あなたが応援しているカンパニーが、お金の問題と正しく向き合えない未来」で、「あなたが応援しているカンパニーが、キャストとスタッフにまともな給料を払えない未来」で、つまるところ、「あなたが応援している人の生活を苦しめているのは、あなた」という現実。
このことは知っておいた方がいいと思います。
谷桃子バレエ団は一歩前に進んでいて、キチンと「お金」の問題もファンの方と共有しているから、YouTubeのコメント欄を見ると、YouTubeのメンバーシップをすることを前向きに捉えていて、カンパニーもファンも、バレエを、バレエダンサーを本当の意味で守る為に意識を向けられていて、最高だと思いました。
他のカンパニーも参考にされた方がいいと思います。
すべての芸術・エンタメ関係者が健康的に活動していけることを願っています。
西野亮廣
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