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第5回 サービスの質だけが原因じゃない


ものすご〜く当たり前の話ですが、全てのサービスは「お客さん」がいないと回りません。

となると、自分のサービスを「お客さん」に見つけてもらわなくちゃいけませんし、一度掴まえた「お客さん」を離しちゃダメです。

ここまでをチョチョっと整理すると、「お客さんを離してしまう状態(お客さんが離れてしまう状態)で、集客したところで意味ないよね」です。

底の空いた花瓶に水を注ぐようなものです。

なので、サービス提供者は「お客さんが、お客さんを辞める理由」を知っておかなくちゃいけません。

僕は、映画を作ったり、イベントを仕掛けたりして、ご飯を食べている人間なのですが、もう本当にココ(離脱ポイントの把握)に尽きます。

逆にココさえバッチリ押さえておけば、少々、集客がヘタクソでも、少しずつ少しずつお客さんが増えるので、「集客の問題」は時間が解決してくれます。たぶん。

さて。本題は、ここからです。

自分のお客さんは、一体、どのタイミングで、自分のお客さんを辞めるのでしょうか?

たぶん、理由は2つあります。

一つ目は、「期待に応えられなかった時」
これは分かりやすいですね。お笑い芸人なら「面白くなかった時」であり、飲食店なら「美味しくなかった時」です。

サービスのパフォーマンス(商品のクオリティー)が、お客さんの期待値を下回った瞬間に、お客さんは、お客さんであることを辞めて、他所に行ってしまいます。

ここはシンプルに「期待に応え続けるしかない(品質で応え続けるしかない)」というゲームなので、ものすごーく分かりやすいですね。

この点に関して、僕から、この記事を読んでくださっているあなたにアドバイスできるとしたら、一つだけ。

「メチャクチャ頑張って!」
ここは、各々で頑張るしかありません。

さあ、問題は、二つ目です。
『期待に応えられなかった』以外に、お客さんが、お客さんを辞めてしまう理由が、実は、もう一つだけあります。

何だと思いますか?

このあと、すぐに答えを言っちゃうので、読み進める前に考えてみてください。
面倒くさい方は読み進めてください。

お客さんの中には「【他のお客さん】と比べて満足度を計るお客さん」がいる

『期待に応えられなかった』以外に、お客さんが、お客さんを辞めてしまう理由は、一体何なのか?

この答えを知るには、お客さんの中には「【他のお客さん】と比べて満足度を計るお客さんがいる」ということを把握しておかなくちゃいけません。

たとえば僕はNetflixやAmazonプライムやディズニープラスに加入しているのですが、せいぜい月に2〜3本しか観ていないんです。

海外出張に行っていて「1本も観ない月」もありますが、再入会の手間などを考えると、観ない月でも月額費を払っています。

「映画を月に2〜3本観れて、ときどきハマったドラマがあれば立て続けに観ることもあるし……まぁまぁ妥当な値段だな」と納得して、今日もNetflixer、Amazonプライマー、ディズニープラサーとして生きています。

つまり、僕は、『サービスの質(商品の内容)』だけと向き合っていて、「サービスの質が、金額に見合っているか?どうか?」という判断しています。

しかし、世のNetflixer、Amazonプライマー、ディズニープラサーの中には、
「他の人が月に10本も映画を観ているのに、私は月に2〜3本しか観れていない!損をしているっ!」
と考える人がいます。

サービスの満足度を算出する際に「他の人がどれぐらいのサービスを受け取っているか?」を考える人がいるんです。

そして、こういう人は案外少なくない。

お客さんの中には、
“自分の中で満足度を算出する”『絶対的なお客さん』と、
“他人と比べて満足度を算出する”『相対的なお客さん』がいることを僕たちサービス提供者は知っておかなくちゃいけません。

ここから、ちょっとエグい話になりますが…『絶対的なお客さん』と『相対的なお客さん』とでは、それぞれ“提供するもの”を変えなきゃいけないんです。

結論を言っちゃうと…

『絶対的なお客さん』に届けなきゃいけないのは…「品質」です。そして、『相対的なお客さん』に届けなきゃいけないのは何かというと…「あなたは、他のお客さんに比べて損をしていませんよ」です。

『相対的なお客さん』に、どれだけ高品質なサービスを届けて一旦は満足してもらったところで、「もっと多くのサービスを受け取っているお客さん」が見つかった瞬間に、『相対的なお客さん』は離れてしまいます。

もし、「なんで、こんな最高のサービスを提供しているのに、お客さんが離れちゃうんだ」と思っているサービス提供者さんがいたら、一度、この部分をチェックしてみてください。

あなたが提供しているサービスをもっと堪能している「他のお客さん」がトリガーとなって、客離れを生んでいる可能性があるんです。

それでいうと、売り上げのことだけを考えるのならば「オンラインサロンの記事を毎日更新する」なんて、絶対にやっちゃダメなんです。

「忙しくて読めない日がある。毎日読んでいる人がいるのに。私は損をしている」と言った感じで、『相対的なお客さん』を逃がすだけなので。

ただ、僕の場合は売り上げを作ることを目的にオンラインサロンをやっているわけじゃないので(自分の考えの整理と、災害時のセーフティーネットが目的)、引き続き、毎日更新します。

飲食店で言うと『おかわり自由』というサービスは、『絶対的なお客さん』を獲得するキッカケになるかもしれませんが、『相対的なお客さん』を離してしまうキッカケになります。

こういう風に整理にすると、『相対的なお客さん』を逃がさない打ち手が見えてきますね。

『相対的なお客さん』を逃がさない方法


最近、Voicy(音声メディア)の生配信をしてるんです。そこで、ものすごーく面白いデータがとれたので、最後に共有しておきますね。

2〜3日前に、21時半から1時間の生配信をしたんですけど、たしか1900名ぐらいの方が聴いてくださっていたと思います。

面白いのは、「途中離脱した人がほとんどいなかった」という点です。YouTubeやInstagramのライブ配信だと、視聴者数はコロコロ変わりますが、どっこい、音声は“ほぼ”離脱しないんです。

一般的には「ながら聴きできるから」と言われていますが(そのとおりだと思います!)、実は、もう1つ理由があると見ています。
#まだ仮説の域を越えていませんが

それは、「『相対的なお客さん』を逃がさなかったから」です。

動画だと、画面を観ていないといけないので、どうしても「観れなかった」が発生してしまいます。

全員が一斉に観れなかったのであれば何の問題もありませんが、「ある人は観れて、ある人は観れない」となると(差が生まれると)、その瞬間に『相対的なお客さん』は離れてしまいます。
「私は損をしている」と判断してしまうのです。

今日の話をザックリとまとめると、「発信する情報(提供しているもの)が多いと格差が生まれ、『相対的なお客さん』を逃がすキッカケになる」です。

音声ライブは、発信している情報がそもそも少ないので、格差が生まれづらいんです。

「他所に比べて、ウチの画面は小さくて見づらい!」といった不満が無いんです。

このあたりの“『絶対的なお客さん』と『相対的なお客さん』の事情”を考えながら、サービスを再設計すると、たぶんイイ感じになると思うので、参考にしてみてください。

西野亮廣

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