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第11回 「贈り物」になる作品と、ならない作品の境界線

「ずっと売れ続けるエンタテイメント」を、作る確かな方法がある!?


僕は田舎町のサラリーマン家庭の4人兄弟の3番目として育ちました。
家計に余裕などあるはずもなく、毎朝、「ダイエー」と「イズミヤ」(どちらも近所のスーパーです)のチラシを見比べては、自転車を走らせ、10円でも安い牛乳を買い求めて、スーパーをハシゴしている母ちゃんの背中をよく見ていました。

4人の子供を育てる母ちゃんは毎日、とても忙しく、まさか、エンタメに割く時間などありません。
父ちゃんは父ちゃんで、6人家族を守らなければいけないので、これまた大変。いろんなものを犠牲にしてくれたと思います。

オンラインサロンを始める時に考えたのは、父ちゃんと母ちゃんのことで、「忙しい彼らが楽しめるコンテンツを作る」ということを最初に決めました。

「家事の合間にサクッと読めて、忙しい主婦でも、世界戦の裏側に一喜一憂できたらイイな」と。

他のサロンと比べて、僕のサロンの値段が安いのも、そういう理由です。
で、僕は机上論には興味がありません。

経済ウンヌンカンヌンの空中戦は賢い人達にお任せするとして、僕の仕事はエンタテイメントを目に見える形で作り、大衆に届け、キチンと結果を出す。

映画を作るのならば、相手がハリウッドであろうが、ディズニーであろうが、「鬼滅の刃」であろうが、「ポケモン」であろうが、真正面から挑んで、国民全員が見ている前で戦う。

そうしないと、あの日の父ちゃんや母ちゃんに届きませんし、「届かなかった戦いの裏側」なんぞ誰が読むものですか。

結果が全てだとは思いませんが、結果を出さないと届かない人がいます。

『映画 えんとつ町のプペル』は「国内戦は一段落」といったところですが、舌の根の乾かぬうちに次の勝負をスタートさせています。

新作絵本『みにくいマルコ ~えんとつ町に咲いた花~』です。


7作目の絵本になるので、さすがに絵本業界の厳しさを知っています。
『映画 えんとつ町のプペル』で170万人動員した後なので、物足りなく感じるかもしれませんが、絵本は「3万部売れれば御の字で、5万部売れれば万々歳」という世界です。
それでも、僕が絵本に張る理由があります。

漫画、小説、絵本、ビジネス書、エッセイ、辞書…世の中には様々な形の書物がありますが、このうち「資産」となるのは、「ヒットした絵本」と「ヒットした辞書」です。
♯例外もありますが

検索上位にくる絵本と、検索上位にくる辞書は、地球に子供が生まれ続ける限り、売れ続けます。

僕が死んだ後も続くエンタメを作る為には、ここを押さえておかなくてはいけません。

とりわけ、絵本『みにくいマルコ ~えんとつ町に咲いた花~』は、僕らが年末に仕掛けているお祭り『天才万博』を舞台にしたストーリーとなっていて、つまり、『天才万博』の集客装置になっています。

絵本『みにくいマルコ ~えんとつ町に咲いた花~』をヒットさせ、ロングセラーにのせれば、僕がいなくなっても、子供が生まれ続ける限り、『天才万博』の宣伝がされ続けます。

ちなみに、『天才万博』は(親に連れられてきた)小学生以下は入場無料。
その小学生はいずれ大人になり、親になり、子供を連れて来てくれる。

絵本から、ここまでを設計します。
絵本『みにくいマルコ ~えんとつ町に咲いた花~』をキチンと作って、キチンと届けるのが僕の役目だと思っています。

そんなこんなで昨日、届け方の一つとして「ギフト化」の話をさせていただいて、オンラインサロンのコメント欄の方にも、「ギフト」を受けとってくださる子供施設の方からの声がたくさん届きましたが、ごめんなさい。少し考えが浅かったです。

ギフトを受け入れてくださる施設はたくさんあったのですが(※ありがとうございます。現在、スタッフがリストにさせていただいています)、昨日のコメント欄を読ませていただく限り、おそらく、このあと「贈りたい人」を募っても、あまり集まらないと思います。

理由はシンプルで「内容が分からないものを贈れない」です。
そりゃそうですよね。
自分が心からオススメできるものじゃないと、贈れません。

損失を回避しようとするのは人間の性で、「ギフト化」の際に大切なのは、贈る側に「損失を感じさせないこと」だと思います。

じゃあ、どうすればイイの?――人は「内容がわからないもの」を贈り物にしない


ここ数年のテストで、『絵本』がギフトになることが分かりました。
絵本をギフトにした瞬間に「絵本を読みたい人」の他に、「絵本を贈りたい人」という市場が生まれます。

これまで絵本のターゲット層になかった「大人の男性」もターゲットに入って来ます。

分かりやすい言い方をすると、「買ってくれるかもしれないお客さんが増えます」
しかし、それは「贈る側に損失を感じさせない」が条件にあります。

繰り返しになりますが、「喜ばれないかもしれない贈りもの」を贈ろうとする人はいません。
それを体現してくれたのが、絵本『えんとつ町のプペル』です。

『えんとつ町のプペル』は、当時大きなニュースにもなりましたが、全ページ無料公開しました。
全ページを無料公開したおかげで、誰でも簡単に「味見」をしていただけるので、その上で、「この絵本をギフトにしよう」という選択肢が生まれる。

結果的に、この絵本は、世界中の子供達へのギフトとしての需要が生まれました(「こどもギフト」)。

ちなみにこのとき、幻冬舎の担当編集の袖山さんに「発売前に全ページ無料公開しませんか?」と投げたところ、「いいですね。やりましょう」ということで周りの許可はとらずに進めました。
♯見城社長の確認をとらずに話を進めた
♯ヤバイことは事後報告

こういうことって、世間では「結論」の部分しか汲み取ってもらえずに、「どうしてその結論に至ったのか?」までは考えてもらえないので、「また西野が変なことを始めた」だの「逆張り」だの「炎上商法」だの言われてしまいがちなのですが、このように、努めて数学的に話を進めているのです。

西野亮廣

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