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第49回 多くのサービス提供者も意識していいかも!? 『えんとつ町のプペル』を「サプライズ禁止」にしている理由

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「いつまでプペルやっとんねんになるか?」を考えている

最近、少し「ん?」と思うことがあって、それは何かというと「いつまでプペルをやっとんねん」という批判です。

これに対しては、もしかすると僕の説明が足りてなかったのかもしれないなぁと思ってて、同じように疑問を持たれている方もいらっしゃるかもしれないので、あらためてご説明させていただくと…
「いつまでやっとんねん」も何も、大前提として、僕らは10年後も20年後も50年後もやるつもりでいてて、「その為にどうすればイイのか?」という議論を毎日繰り返して、毎日手直しをしています。

ちなみに昨日も今日も明日も『えんとつ町のプペル』関連の制作がスケジュールに入っています。かれこれ10年ぐらいやっていますが、全然終わらないんです(笑)

6月にはニューヨーク・ブロードウェイでリーディング公演(※関係者向けのストーリーのお披露目会)が入っていて、そこに向けての準備もありました。
ブロードウェイでいうと、一つ確かなことは、何年もかけて予算を回収することが前提(ロングラン前提)なので、そもそも「いつまでやっとんねん作品」じゃないと、スタートラインに立てないんです。

めちゃくちゃ生々しい話をすると…1ヶ月で終わってしまうような作品は、要するに「お金の回収期間が1ヶ月しかない」ということなので、「出資する対象」にならない。
それだと、世界戦は始まらないんです。

これは「どっちが正しい」とかの話じゃなくて、「目的によって、当然打ち手が変わってくるよね」という話で、僕らは泣いても笑っても「エンタメで世界を取る」というゴールに向かって走っているので、それならそれで、世界戦のお作法で走らなきゃいけないんです。
なので、「どうすれば『いつまでやっとんねん作品になるか?』」を毎日考えています。
なので、「いつまでやっとんねん」という批判には違和感を覚えるわけですね。

雨が降ってきたから傘をさしたら、「なんで傘をさしとんねん!」とツッコミを入れられてる感じです。

「いや、雨が降ってきたから…」という(笑)

『えんとつ町のプペル』は「サプライズ禁止」

そんなこんなで、僕らは「ずっと愛され続ける為にはどうすればいいか?」「リピートしてもらう為にはどうすればいいか?」を考えるわけですが、その中で僕が『えんとつ町のプペル』でスタッフにかなり強めに出した号令が「サプライズ禁止」です。

『えんとつ町のプペル』って「サプライズ禁止」なんです。厳密に言うと「サプライズを前面に押し出すのは禁止」です。

ストーリー上、「仲間の裏切り」とかもあるので、それは「サプライズ」といえば、「サプライズ」なのですが、それを「売り」には絶対にしない。

「衝撃の展開!」みたいなキャッチコピーは絶対に打ち出さないんです。

「星を知らない町が、星を見るまでの物語」なんです。

皆、最初からオチが分かってるんです。

昔、『えんとつ町のプペル』を出した時に、よく、「オチが読めたわ」とか言われたのですが、「オチが読めた」も何も、オチを隠してないんです。

それ、『桃太郎』を見て、「途中でオチが読めたわ。桃太郎が鬼を退治すると思ってたんだよ」と言っているようなものなんです。
とにかく『えんとつ町のプペル』は「サプライズ禁止」なんです。
理由は、「サプライズは一回目が一番面白いから」です。
「ビックリ箱の二回目はビックリしない(二回目は味がしない)」理論です。

ずっと愛され続ける為には、何度も観に来ていただく為には、「ビックリ箱」にしちゃダメなんですね。

要素としてはすごく魅力的なのですが、それをやるなら、ロングランは諦めなきゃいけない。
サプライズはリピーターの獲得と相性が悪い
僕らは世界戦を考えた時に、たまたま今の結論に至っていますが、しかしながら、今日のこの話って、僕らのチームだけの問題じゃなくて、「人口が減っている国では、多くのサービス提供者が意識しなきゃいけないこと」だと思っています。

つまり、「サプライズをセールスポイントにして、お客さんを楽しませる」は、「まだサプライズをしていないお客さんを減らす」とイコールなので、構造上、お客さんは減る一方、集客は苦戦する一方です。

これが、人口(見込み客)が増えている国だと問題ないのですが、人口(見込み客)が減っている国でやっちゃうのは、ちょっと疑問です。

僕らの国は、リピーター獲得に対する意識を特にあげなきゃいけない状況になっていると思うのですが、「サプライズの匙加減」というか、「サプライズってリピーターの獲得と相性が悪いから、控える」という極めて簡単なことすら議論されていない。
「サプライズNG」の他にも、リピーター獲得の為にやらなきゃいけないことを、もっともっと体系化して、人口が減っている国でサービスをするハメにあっていることをもっと意識して、話を進めていった方がいいと思います。

西野亮廣

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