思わず涙してしまう「食べすぎちゃうわけ」とは?
今日保健指導にやってきた、もうすぐ70歳を迎える一人の女性。
ここ2年で体重がぐっと増えてしまったそのわけとは・・・?
1.その女性の「食べすぎちゃうわけ」
初めてお会いした時、彼女は体重増加の理由について
「お仏壇のお供えものをきれいに食べちゃうからね・・・。」とおっしゃていました。
もう一つ血圧上昇の理由について、微かな声で「神経的なものもあるかもね」と。
その時は5分ほどの会話をし、今日は改めて保健指導にやってきてくださったのです。
私は彼女の語る言葉に耳を傾け、感じるままに質問をしていきました。
するとそれまで分からなかったたくさんの大切な思いをお話してくださいました。
彼女は2年前に夫を亡くし、これまで悲しみに暮れる毎日をすごしていたこと。
「お父さんにあれを食べさせてあげたい、これも食べさせてあげたい」と朝夕毎日たくさんのお供えものをしていること。
そして、お供えしたものを自分で頂くことが「同じものを食べている」という、まるで生きていた時に同じ食卓を囲んでいたような気持ちにさせてくれる、大切なコミュニケーションになっていたこと。
が明らかになってきたのです。
ご本人の目からポロリと涙がこぼれ落ちました。
2.食べすぎることは「必要でやっていること」
彼女がとっている行動は、亡くなった夫との大事なコミュニケーション手段であると同時に、
おいしいものを食べたり満腹になることが様々な脳内物質の分泌により抗不安作用や幸福感をもたらしてくれ、つまりは彼女を癒すことにつながっていました。
からだによくない、やめなきゃと思っている行動も、彼女にとっては潜在意識下で「必要でやっていること」だったのです。
このようなことは実際に多くの人に共通しています。
タレントの伊集院光さんが子供のころからよく食べて太っていた背景には、病弱で食が細い兄を心配するご両親を見て、たくさん食べて両親を笑顔にさせたいという思いがあったようです。
また、仕事から帰宅して夜中に過食をするビジネスマンは、食べることで仕事のストレスを発散し翌日の仕事に備えようとしています。
仕事帰りに同僚と外食をしてきたのに、帰宅後にも二重で妻の料理を食べる夫は、妻との関係性を壊したくないという思いがあるからです。
3.保健指導で大切ことは『ジャッジせずに聴くこと』
既存の保健指導は「なんとか原因を突き止めて改善ポイントをお伝えしなければ」という使命感にあふれ、ジャッジをすることが前提になっています。だからこそダメ出しばかり。それでは信頼関係も築けません。
まずはジャッジをせずに傾聴する。
そして、お相手の背景や想いに心を寄せていくことが信頼関係の構築につながるのです。
4.最後に彼女に伝えたこと
私は最後に彼女にこう言いました。
お供え物をたくさんあげること、お父さんと一緒にそれをおいしくいただくことは、思う存分に気のすむまでやってください。やめなくていい。
お父さんへのいろんな思いが柔らかくなって落ち着いたとき、自然にあげすぎることや食べすぎることがなくなりますからと。
そうして、それ以外でできる心とからだにいいことを一緒に考えていきました。
5.まとめ
「食べすぎちゃうわけ」にもジャッジせずに傾聴すると、
「なんのためにそれをやっているのか」物事の本質がみえてくるものです。
本質が見えて初めて、今必要なこと、心もからだも健康になるための方法が見つかるのだと感じています。
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