暗がりにはまり込む『ダブル・ファンタジー』村山由佳さん
見ちゃいけないものを見ている気にさせられる。
言えないことを言っている人がいる。その言葉にのせられそうになって、踏みとどまる。
いやいや、秘めておけよ。
だが、その暗がりを見せつけずにはいられず、抑えていた欲望を、開けっ広げにせざるを得ない。
胸の間に指を突っ込み、肋骨を扉のように開ききって中を見せつける。
潔いのかもしれない。
主人公は脚本家の奈津。出だしの描写からして、力が入っている。
男を買った奈津。こうしたら喜ぶだろうという作為が見える男性の振る舞いに興醒めしている