短編小説:あの砦を護れ!第1話
第1話 少年兵学校入隊
おい!ユウジ!急げ!!!!「ダダダダダッ」機関銃が唸る!
敵兵200!一気に突っ込んでくるぞ!
「ウワッ!」やばい撃たれた、俺は右足の大腿部を撃たれてしまった。
ひどく出血し、俺の体がどっしっと音をたてながら倒れていく。
安部が俺の体を抱きかかえ、こう言った。「死ぬんじゃねえユウジ!もう少しだ!」しかし俺の意識が遠のいているのか、安部の声がすごく遠くから聞こえるように感じていた。
俺もこれまでか・・・
その時走馬灯のように自分の過去から今までがフラッシュバックした。
時は2031年、日本は周辺国との緊張状態が続き、ついに自国で軍隊を持つことを決め、兵力増強にに国を挙げて力を入れていた。その中でも中学を卒業した若者を未来の幹部に育てるために少年兵学校を設立、入隊倍率は30倍で毎年そこにはその難関をくぐり抜けるエリート達が入隊していた。
俺の名前はユウジ、明日中学校を卒業し、1週間後少年兵学校に向かう。
皆が中学校を卒業し、高校生への階段を上がり、青春を謳歌することへの期待感などが立ち込める中、俺はこの地元を去り、少年兵学校に入って素晴らしい軍人になるのだといきこんでいた。
「ねえ、ユウジ。本当に兵学校に行っちゃうの?」と幼馴染のマイが俺にそうさみしそうに聞いてきた。俺は「おう。」とだけ返事をした。マイは幼稚園からの幼馴染で、小さい頃はいつも一緒に遊んでいた。中学校で俺がいじめられている時も、ずっとそばにいてくれて、励ましてくれた唯一の人だった。しかし、俺の頭の中は兵学校のことでいっぱいだった。
なぜなら少年兵学校は倍率が30倍とすごく難関で、必死に勉強して何とか合格したのだ。しかも周りの友達に比べてすごく特別な人間になったような気がして一人で優越感に浸っていたのだ。少年兵学校の試験をサポートしてくれた尾崎さんもすごく喜んでくれていた。尾崎さんは高校を卒業後、軍隊に入り、今は軍人を募集して回る広報の任務に就いていた。しかし、マイは俺が少年兵学校に合格した時にすごく寂しそうな顔をしていた。しかし、俺はマイが寂しそうな顔をしていても、あまり気にしていなかった。
そして少年兵学校入隊を明日に控え、家族と入隊前の最後の食事をとっていた。少し寂しいなと思いながらも、入隊したらどういう軍人になろうかという期待と夢が膨らんでいた。
次の日俺はとうとう少年兵学校の門の前にいる。この門をくぐれば晴れて一軍人としての人生がスタートする。
少年兵学校は地元からは700kmぐらい離れた場所で尾崎さんが学校まで送迎してくれた。地元から離れるとき、マイのあの寂しそうな顔が頭をよぎった。しかし、ここまで来たら行くしかないと思い地元を離れた。
物々しい雰囲気が門の前まで伝わってくる。この門をくぐればきっと厳しいことの連続だろう。そう思い俺は緊張していた。
尾崎さんは俺に「ユウジ君、無理に入隊する必要はないよ。君はまだ高校に行って、皆と楽しく青春を謳歌することが出来る。なにも今からここに入らなくても…」そう言ってくれた。しかし、ずっと今まで何の取柄もなく目立たなかった俺がそのまま普通の高校に行っても高校生ライフを謳歌できるだろうか?きっと目立たないままの3年間をまた過ごすに決まっている。俺はそういう人生を変えたいんだ!そう思い直し、尾崎さんに一言、強い口調で言った。「大丈夫です!入隊します。」自分自身、決意が固まったのを感じた。それを察してか尾崎さんは「ユウジ君、君はきっといい軍人になれる。しかし、家族や今まで君を大事に思ってくれている人のことは決して忘れてはいけないよ。」こう俺に告げ、尾崎さんのいつも温厚で優しそうな顔から、きりっとした軍人らしい顔つきに変わり、ビシッと腕を挙げて敬礼をしてくれた。
俺もちょっと照れながら、おぼつかない、慣れない手つきで敬礼をした。
気づけば俺は少年兵学校の門をくぐっていた。
第2話に続く
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