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短編小説:あの砦を護れ!第2話

第2話:嵐の前の静けさ

俺はついにこの門をくぐってしまった。
この先どういう苦難が待ち受けているか見当もつかない。心臓のバクバク音がこだまする。


「おい君!こっちだ!」受付からの声がして、私は受付場に向かい、尾崎さんから受け取った少年兵合格票を震える手で受付の人に渡す。
「あの曲がり角の建物に行こう。」また違う受付の人がそう言って建物まで案内してくれた。


「さあ、ここがこれから君が住む寮だよ。」そう告げると案内の人はまたすぐに持ち場に戻って行く。この学校は全寮制なのだ。残念ながらここには女子はいない。


いざ部屋に入るとベッドが6つ並んでいた。つまり6人の団体生活が始まる事を意味していた。幸いこの部屋にはまだ私しか居ない。ちょっと他の人よりも早く来たみたいだ。落ち着かない心を癒そうと束の間の休息を取ろうとした時、「ガチャ」ドアが勢いよく開き、戦闘服に身を包んだ坊主頭の少年兵が入ってきた。するとその少年は「三谷君だね。俺は平田、兵学校の2年生だよ。君がここの生活に慣れるまでしばらく君のお世話をする事になったからよろしくね。」優しそうな表情でそう言われ少し心が安心した。後、苗字で呼ばれるのが新鮮だった。中学校までは友達からもずっと下の名前で呼ばれていたからだ。「よろしくお願いします。」私はそう一言だけ返事をした。


しかし、覚悟はしていたものの、この思春期に6人部屋で過ごすことや、平田先輩みたい坊主頭にしないといけないのかな、と考えているうちに少し気持ちがネガティブになっていた。


程なくして平田先輩から「さあ、三谷君!服の採寸に行こう!」とハキハキした声で僕を服の採寸場まで案内してくれた。


「うわ!すごい。」戦闘服や、制服が並んでいる。ついにこの服を着ることになるのかと考えるとワクワクしていた。「俺もついに軍人になる。」そう気持ちが高鳴っていた。

服の採寸を終え部屋に戻るとルームメイトが青色のジャージを着て身辺整理をしていた。どうやら俺より早く到着していて採寸を俺より早く行っていた。

なんだ、俺は一番乗りではなかったんだ。そんなことを思っていると、「俺の名前は森田、お前とバディになるらしい。お前の名前はなに?」突然そう言われ、「お、俺の名前は三谷、ってかバディってなに?」そう聞き返した。

「ハハハッ、そうだったね。」平田先輩がそう笑った後続けてこう言った。「軍隊では連帯行動が基本で何事においてもチームワークが要求される。バディっていうのは相棒という意味で、君と森田と2人でこれからの訓練や、日々の錬成を助け合って乗り越えてもらう。2人で団結出来ない者が20、30人規模でチームワークを発揮することはできないからね。」平田先輩はそう言って爽やかにウィンクした。

その後身支度を終え、ルームメイトと身の上話をしていた。みんなそれぞれの地方から来ていたから、地方の訛りや、なぜここに入ったかとか話をしていた。

そうしているうちに「そろそろ歯を磨けよ、消灯は11時だ。必要なことはまた後日教えるから。」平田先輩がそう言って、平田先輩の寮に帰っていく。

そして11時消灯を知らせるラッパが鳴った。部屋の電気を落とし、俺を含めたルームメイト6人が何も言わず静かにベッドに入る。

しかし、俺は一向に寝付けなかった。地元のこと、親のこと、そしてマイのことが頭をよぎる。そして明日からこの学校生活をどう乗り切るかを考えていた。そしてそんなことを考えているうちに気づかないうちに俺は眠りに入っていた。

第3話に続く


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