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『モル・パンク遊記』クマールについて考える

リバース1999のこのイベントの告知を初めに見た時、明るい話かなと思ったんですよ。
なぜなら開放的なマチルダの新衣装が印象的だったから。かわいい。
結末から言うと実際には、とてもヘビーでビターで、読了した時に頭を抱えました。

この記録もどう書き始めたものか悩んだのですが、やっぱり読了後に一番感情を持っていかれたクマールについて追っていくことにします。
ネタバレや個人の不確かな解釈を大いに含むため、その上でお付き合いいただけましたら幸いです。
というより後半ほぼ感想日記です。

クマールの生い立ちと作中において

モル・パンク村の神秘学家の家系に生まれます。

幼少期クマールとシャーマィン以外が塗りつぶされた写真

この家に生まれた者は「継承者」となるらしく、特別な家系であったことが示唆されています(何の継承者なのかは不明だが、シャーマィンの言葉によると「一族に伝わる神秘学研究」があるらしい。神話や瞑想や天文学関係の研究と思われる)

しかし、神秘学家としての能力がなく、ほとんど人間と変わらなかったことにより家を追い出されます。そのため実弟であるシャーマィンは長らく姉の存在を知りませんでした。

幼いクマールが家や家族の庇護を受けられなかったことは、財団の子供との対比になっていると思いました。
財団は、やってることは胡散臭いけど最前線学校の存在によって庇護された子供も少なくないだろうから……。

その後、天文学に関する研究を続け、天文学者となりカーラ・ボナーと出会います。
カーラはクマールを恩師であり友人として信頼するようになりました。

スーツケースに呼ぶとクマールについて言及してくれる

しかし、クマールとカーラは神秘学家であることを理由に研究の場を奪われてしまいます。カーラは人間になんとか馴染もうとし研究を続けることを選びましたが、クマールは違いました。
実家からの謝罪を受けシャーマィンとの短い邂逅を済ませた後、カーラと星空を見たのを最後に行方をくらましてしまいました。

カーラは再びクマールと会えることを望み研究を続けます。
しかし、カーラがようやく得たクマールの手がかりはマヌス・ヴェンデッタと行動を共にするクマールでした。

やがてクマールの目的は特殊な天体をモル・パンク村に落下させることだと判明します。
その動機は復讐かと思われていましたが、追い詰められたクマールは「ただあの天体に会いたいだけ」と零します。

クマール戦を長引かせると特殊台詞があるため、その心中を少しだけ垣間見ることが出来ます……。

その最期は、カーラの説得も虚しく、マヌス・ヴェンデッタから支給された拳銃を使って自らの命を絶つというものになりました。

クマールの死生観

見返せばクマールは、カーラの前から行方をくらます時(プロローグ)にて、己の死生観を口にしていたんですよね。

「死んだらこの膨大な宇宙の一部になるだけ」

幼少期から庇護を受けられず居場所を度々追われ、自らの居場所を宇宙に求めたこと、そしてクマールにとって死が宇宙と一体化することであるならば、シャーマィンがクマールを止めなかったのも少しだけわかるような……いやわからないような……やっぱり自分にとっては救いがないと思えてしまうような、心が二つあるどころじゃない気持ち。

このシナリオで心が重くなるのは、結末ももちろん、詳細に書かれた人間と神秘学家の間の溝の深さ(不理解や差別や迫害が嫌というほど背景に敷かれている)、登場人物の死生観等に自分が受け止めきれるものを超えてしまったからなのかもしれません。

これはフィクションだけど、このお話で書かれてる負の部分は現実にもあって、そんな風に考えてしまって心が削られる感じ。
それにクマールは大悪党ではなかったけど善人でもないと思っていて、パワハラのシーンを見てしまったら全てに同情するのも難しいと思ってしまって、未だに心を掻き乱されるシナリオだった。

これはヒンドゥー教や仏教でいう涅槃……?

それでも思ったことを出来る範囲で言語化して、なんとか感想をここに綴れて良かった。
取り留めのない文章になってしまいましたが、ここまで閲覧いただきありがとうございました。

この後UTTUやシャーマィンシナリオも来るだろうから、追加エピソードでまたメンタルを削られるのが怖い気もしますが、ドキドキしながら更新日を迎えたいと思います。