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神奈川高校野球の舞台裏

取材メモ

◾️神奈川県高校野球監督会に見る若手指導者たちの挑戦と課題

2024年7月1日、横浜市西区のホテルにて、第42回神奈川県高校野球監督会が開催されました。参加者は過去最大規模の135名にのぼり、夏の大会(7月5日開幕)に向けた意気込みと共に、親睦を深める場となりました。今回の会では、特に若手監督たちの存在感が際立ち、その熱意と課題が浮き彫りになりました。

◾️開会の挨拶
会は、向上・平田隆康監督の挨拶から始まりました。平田監督は、少子化と野球人口の減少という逆風の中で、神奈川高校野球の団結の重要性を強調しました。また、コロナ禍での中断や制約を経て、2023年には通常開催が再開されたこと、そして慶応義塾が甲子園で優勝したことに触れ、今年も同様の成功を目指す決意を新たにしました。彼は、監督会の一体感が神奈川高校野球の未来をつなぐ鍵であると述べ、参加者たちに一致団結の重要性を訴えました。

◾️特別表彰

続いて、育成功労賞を受賞した西野幸雄先生の表彰が行われました。西野先生は、桐蔭学園から日体大に進学し、その後、橘学園や県立高校で指導を行ってきました。特に県立神奈川工業では夏の選手権準優勝を果たし、川崎北でも指導しました。2024年からは日本ウェルネス女子野球部の監督として活動しており、その受賞の言葉では、教え子の森脇慶太・三菱重工イーストマネージャーからの思い出話が爆笑を誘い、中学時代からのライバルで日体大の同級生、県相模原・佐相真澄監督からのメッセージが感動を呼びました。この表彰は、神奈川高校野球の監督たちのリスペクトが感じられる瞬間であり、西野先生の功績が改めて称賛されました。

◾️新任副会長の挨拶

新たに神奈川県高校野球連盟の副会長に任命された朝木秀樹先生(横浜隼人校長)は、東京大学野球部での活躍を振り返りました。朝木先生は投手として24勝を挙げ、法政大学戦での3ランホームランのエピソードを披露しました。61歳の朝木先生は、筑波大附属高校や麻布高校の監督を歴任し、現在は横浜隼人の校長として活躍しています。その豊富な経験と情熱は、若手監督たちにとって大きな刺激となり、彼のリーダーシップが神奈川高校野球の未来を明るく照らすことが期待されています。

神奈川高野連副会長に就任した朝木秀樹横浜隼人校長



◾️豊田圭史監督の挨拶

武相高校の豊田圭史監督は、2020年の夏に就任してからの挑戦を語りました。春の大会で優勝しながらも、関東大会での早期敗退を経て、神奈川での優勝と甲子園出場を目指す強い決意を毎日選手たちに伝えていると述べました。また、日大藤沢戦でのインフィールドフライのエピソードで笑いを誘い、105キロから85キロに減量した話も披露しました。40歳の豊田監督は、自らを若手と称し、大学野球での経験を活かした指導で、チームの再建を任されています。彼の情熱と指導力が、武相高校の今後の成長に大きく寄与することが期待されています。

◾️森林貴彦監督の挨拶

昨年の優勝監督である森林貴彦監督は、西野先生と上田誠前監督のエピソードを交えながら、上田監督の現在の尽力について語りました。上田監督は香川オリーブガイナーズで代表を務め、チーム運営に苦しむ中で、良い選手を神奈川から送り出すことを期待されているとのことでした。森林監督は、今年の慶応について、選手もチームも変わっていることを強調し、昨年の成功が今年の成功を保証するものではないと述べました。また、優勝旗を神奈川に持ち帰るための継続的な努力を呼びかけ、二連覇に対する慎重な姿勢と、それに伴う自尊心を垣間見せました。彼の言葉は、謙虚さと決意が同居するものであり、参加者たちに深い印象を残しました。

◾️若手監督たちの挑戦と課題

会では、多くの若手監督たちが参加し、その多くが20代という若さで指導にあたっています。彼らは自身が選手だった頃の神奈川野球の熱狂を感じ、教員を目指したといいます。しかし、部員不足に悩むチームも多く、座間総合の棟近康平監督、松井裕樹世代の厚木西・高橋佳希監督、星瑳国際・高橋航平監督など、若さゆえの情熱とエネルギーを持ちつつも、部員不足という現実的な問題に直面しています。

◾️若手監督たちの具体例

座間総合の棟近康平監督は、現在15名の部員を抱えながら、部員確保に奮闘しています。彼のような若手監督たちは、自分たちが選手だった頃の熱狂を次世代に伝えようと努力しています。

厚木西高校の高橋佳希監督は、橋本高校のOBであり、現在28歳です。部員は16名で、相模原高校でのコーチ経験を活かしながら指導にあたっています。若さゆえのエネルギーと情熱でチームを引っ張る姿が印象的です。

星瑳国際の高橋航平監督も、28歳で横浜創学館でプレーし、北海道道都大学を卒業後、副部長に就任しました。彼は土屋恵三郎監督(今年71歳)のもとで学びながら、ギラギラとした情熱を持って指導に取り組んでいます。

座間高校の浜田監督は、18名の部員を抱えながら連合チームとの戦いで苦労しています。彼は、連合チームに負けた経験を踏まえ、連合チームの強さに警戒心を持っています。上溝高校の山口剛志監督は、厚木北高校時代の経験を活かし、部員集めから努力をしています。

◾️2校連合で挑む横緑園・増田監督の苦悩

元百合丘で横浜緑園の増田監督は、2校連合で夏の大会を戦います。連合チームが一時的な対策として機能しているものの、選手個々の成長やチーム全体の未来を考えると、必ずしも最善策ではないと指摘しました。連合チームは選手同士の絆や一体感を育む場としては限界があり、長期的なチームビルディングには課題が残るというのが現状です。増田監督の言葉からは、連合チームに頼らず、自校の部員をしっかりと育成する必要性が強く感じられました。

他にも、秀英・河上瞬時監督、大和・古川竜三監督、那須野恭昂顧問、川和・平野太一監督、鎌倉学園・竹内智一監督、日大藤沢・山本秀明監督など、多くの指導者の話を聞きました。毎年欠かさず参加している両名、横浜隼人・水谷哲也監督はこの日も多くの監督に声をかけて気を配り、若手の模範となって存在している桐光学園・野呂雅之監督はにこやかに会話を楽しんでいました。
現場で選手と向き合い、教職業と共に尽力する監督たちの姿はエネルギーで溢れていました。

◾️若手監督たちの未来への展望

この日多く参加していた若手監督たち。その情熱と挑戦は、神奈川高校野球の未来を明るく照らすものです。彼らは自らの若さとエネルギーを武器に、困難に立ち向かいながらも新しい指導法や育成法を模索しています。部員確保に向けた創意工夫や、選手たちへの情熱的な指導は、神奈川高校野球の底力を感じさせます。

監督たちは、部員数が減少する中で、地域との連携や学校全体での取り組みを強化し、新しい部員獲得に向けた努力を続けています。地域の子どもたちに野球の魅力を伝える活動や、学校行事でのPR活動など、多角的なアプローチで部員確保に努めています。
選手一人ひとりの個性を尊重した指導を心がけ。個々の技術向上に加え、チームとしての連携プレーや戦術理解を深めることで、強いチームを目指しています。若さゆえの柔軟な発想と行動力が、彼らの強みとなっています。
自らの指導哲学を確立しようとする姿勢は、ベテラン監督にとっても学ぶものが多いと感じます。

◾️部員不足の解決策

部員不足という課題は、神奈川高校野球全体にとって大きな問題です。若手監督たちは、この問題に対して様々なアプローチを試みています。地域社会との連携を強化し、野球教室や体験会を通じて、野球の楽しさを広める取り組みが進められています。また、SNSや学校の広報活動を活用して、野球部の魅力を発信し、新しい部員の獲得に努めています。他のスポーツとの連携や、学業と部活動の両立支援など、多角的なアプローチで部員確保を目指しています。

◾️神奈川高校野球の未来

神奈川高校野球の未来は、若手監督たちの手に委ねられています。彼らの情熱と努力が、次世代の選手たちに受け継がれ、神奈川高校野球の伝統と栄光を守り続けることでしょう。若手監督たちの挑戦は、困難な状況にあっても希望と可能性を示しています。

最後に、若手監督たちの姿勢から学ぶべきことは多くあるとこの日、私は感じました。
彼らの情熱、創意工夫、そして困難に立ち向かう姿勢は、他のスポーツや教育分野においても示唆に富むものです。若手監督たちが掲げる「次世代への橋渡し」という使命は、神奈川高校野球だけでなく、広く社会全体にとっても重要なテーマであり続けるでしょう。

◾️結論

今回の監督会では、若手監督たちの情熱と、それに伴う課題が明らかになりました。部員不足という現実に直面しながらも、彼らの情熱と努力が次の世代の選手たちに受け継がれていくことを期待しています。神奈川高校野球の未来は、彼らの手に委ねられていると言っても過言ではありません。若手監督たちの挑戦と成功が、神奈川高校野球の新たな歴史を刻むことになるでしょう。そして、その道のりには、困難と喜びが交錯し、彼らの成長とともにチームも進化していくのです。神奈川高校野球の未来に、さらなる期待と希望を抱きつつ、彼らの奮闘にエールを送りたいと思います。

監督会幹事の(左から)三浦学苑・樫平剛監督、向上・平田隆康監督会会長、平塚学園・八木崇文監督


恒例の青木康尚先生による「栄冠は君に輝く」の大合唱で会が締めくくられた



*参考記事(2022年の記事です

*音声配信

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