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専業主婦がシングルマザーになった-その後⑧ Authense初の育休と復職

引越しして1年後、無事に3人目が産まれました。なんとまた男の子です…
私は、産前休暇は取らず、出産前日まで働いていました。
陣痛があり入院した日は、ちょうど会社の経営会議の日だったのですが、経営会議が始まる前に陣痛が来た連絡をし、経営会議が終わる頃に出産の連絡をするような安産でした。
とうとう、産まれて来た赤ちゃんとの生活がスタートしました。

初の育児休業と仕事


産前休暇はとらなかったのですが、産後休暇はとらなければならなかったので、産後は産休に入りました。
ただ、人員が不足していたため、引継ぎ切れなかった業務は持ったまま休みに入り、事務所の子達に仕事に必要な書類などは、都度郵送してもらって対応し、経営会議にはリモートで参加しながら3人目の育休を取る事になりました。

とは言え、産後は母性が強くなり、さすがの私も出産直後は仕事脳は一時お休みモードになり、目の前にいる赤ちゃんが可愛くて仕方ない状態でした。
3人目は、孫のように可愛いというけれど、本当にそんな気持ちでした。2人育てて気持ちの余裕があるせいか、何をしてても可愛くてしかたありませんでした。

そんな最中、Authenseで、勤怠システムの導入が決まります。
それまで使っていた勤怠システムは、打刻はICカード式でしたが、クラウド型ではなかったので、勤務表は紙で従業員に配るというアナログな状態で、かなりの手作業が発生していて非効率だったためです。
ただ、私が産休中にシステム導入とは、誰が詳細を詰めるのだろうと不安に思っていると、思ったとおり困ったシステム担当から連絡が入りました…

「システムの要件定義を詰める必要があるのだけど、誰もできないからお願いしたい」と。
そして、その要件定義のためにシステム会社の人が、わざわざ家まで週に1度やってくるという異例の事態になりました。さすがにこれはちょっと参ったなと思った出来事でした。

システム会社の方との1回2時間の打ち合わせの間に、赤ちゃんが泣いて中断になったり…色々な事がありました。
正直、私も仕事より赤ちゃんと一緒にいたい、そんな時期でしたから「なんで、こんな時にシステム導入しましたか…」と内心思っていました笑

システム導入の際の全社員向けレクチャーも、私がリモートで実施したのですが、私の説明の最中に抱っこしている赤ちゃんの声が入るという状態でした。
このレクチャー音声はこの後数年に渡り、新入社員向けのレクチャーに利用される事になります。
「途中に赤ちゃんの声がしてほのぼのしますねー」なんて新入社員の方から声をかけられる事がありましたが、実際の現場はそんなにほのぼのしていられない状態でした笑

リモート

さて、3人目の赤ちゃんですが、作戦が成功し、産まれた時から「1人で寝る子」に育ちました。
1人で寝れるので、寝かしつけもないし、夜中に目が覚めてしまっても、寝れなくて夜泣きして何時間も…というような事もありませんでした。

お兄ちゃん達が周りでどんなに騒がしくしていても、1人で寝るし、いつもニコニコしていて、かなり育て易い赤ちゃんでした。
3人育てましたが、3人それぞれ個性があって、同じ兄弟でも全然違うなと感じます。兄弟3人になったことで、家庭の中に「こどもの社会」が出来ました。

よく3人いて大変ですね、と言われますが、1人目の子育てより2人目3人目の方が楽ですし、大変さは3倍じゃないよと話します。
キャリアを築きながら、子供を産み育てると考えると、どうしても2人目3人目は躊躇してしまう人も多いと思いますが、それだけの理由で2人目3人目を諦めるのはもったいないなと感じます。

育休中の大事件

3人目の赤ちゃんを育てながら育児休業を取り、合間で仕事をすると言う状況が半年くらい続いた頃、事件が起こります。

私が在宅勤務に入るタイミングで採用した経理部門の社員が11月頃急に辞めてしまったのです。Authenseは12月決算だったので、大騒ぎです…
しかも、会計データの入力が追い付いていない事がわかり、数カ月分をさかのぼって入力しなければならない状態というとんでもない事態です。

育児休業中だというのに、事務所からヘルプの連絡がありました。心底困った私は、経理の業務を代行して行ってくれる税理士さんを、税理士ドットコムで急いで探し、あのメモを取らない後輩に連絡しました。助けて欲しいと。

彼女は、私が在宅勤務している間に違う部署に異動になっていたのですが、私のピンチを知り、助っ人に来てくれる事になりました。

税理士さんと彼女の3名体制で過去の会計データの登録と決算作業に突入しました。とにかく膨大な作業量でした。
私も遠隔ではありましたが在宅で作業に加わりました。育児休業はあと数カ月残っていましたが、この期間は、子供が昼寝している昼間の間と、夜、子供が寝た後、深夜にかけて仕事をすると言うとんでもない状況に陥りました。

ただ、在宅であることもあり、意思疎通がうまく行かず、喧々諤々でかなり辛い事もありました。
「家にいないで、出て来れないのか!」(いや…そもそも育休中なんですけど…)という無茶な要望も途中あり、心底挫けそうなタイミングもありましたが、それでも何とか、決算を無事に締め確定申告が終了しました。

この時、助けていただいた税理士の先生とは今でもAuthenseの顧問をしていただいており、長いお付き合いとなっています。
そして、新しい経理の社員を2名採用し、何とか崩れた経理部門を立ち直らせるところまでは辿り着きました。

復職とAuthense初の時短勤務


3男が1歳になった3月。保育園の入園が決まり、私は復職する事になりました。
育児休業も含めて約2年間、在宅勤務をしてきましたが、やはりオフィスに出勤して、一緒に仕事をする必要性を感じ、このまま在宅勤務し続ける事はできないと肌で感じていたので、4月からはオフィスに出勤する形で勤務開始しました。

ただ、実家から離れてしまっていたので、事務所にいるのは16時半までの時短勤務にしてもらいました。育児休業取得も初なら、復職して時短勤務になる人も初めてでした。

復職前と仕事量は変わらなかった(むしろ増えた)ので、終わらない分は夜、子供を寝かしてから、再開するという生活になりました。
夕方会社を出て、全力で走って電車に飛び乗り、保育園にお迎えに行き、3男が寝る20時までは家事と子育て中心、その後、20時過ぎから23時までは仕事。そんな毎日でした。実際のところ、「時短勤務」と言われつつも、フルタイムで働いている状態でした。

「そもそも時短って何?」
「そんなに早く帰って何やってるの?」
「私達が残業しているのに、毎日早く帰るのってどうなの?」
「管理職が1番早く帰って、部下のマネジメントが出来るの?」

そんな声もチラホラ聞こえてきます。

みんなにとっても初めての事です。
経験者もいません。
男性からはもちろんのこと、同じ女性からも理解を得る事は難しい状況でした。

「子供がいるので、家庭とのバランスが取れるように、仕事を調整してください。役職も外してください。無理なく働けるようにしてください」とお願いすれば、受け入れてくれる事はわかっていました。

ただ、「無理ない範囲で」は、裏を返せば、任せてもらえる仕事の範囲や責任も小さく狭くなる事とイコールでした。

だから、ここで諦めてしまったら、仕事は続けられるかもしれないけれど、自分がこの先やりたい仕事や目指すキャリアは遠のいてしまうかもしれないと感じました。好きな仕事も子育ても、どちらも諦めたくなかったのです。

女性は家事と育児のために、仕事を調整するのが当たり前なのでしょうか?
なぜ、子供を犠牲にして働いているという罪悪感をこんなに抱えなければならないのでしょうか?

この頃は、その問いかけをしっかりと打ち返すほどの解は、私の中にはなかったように思います。

ただ、とにかく諦めたくない、その一心でした。
それに、Authenseにとって最初の育休復職者がどんな働きをするかで、その後に子供を持つ社員や復職者への周囲の見方が決まるだろうと感じていたので、勝手な使命感で突き進む事になったのです。

子供の病気との闘いだった1年

復職後最初の1年は、とにかく子供の病気とそれをもらう私との闘いでした。
子供は毎日風邪気味で鼻や咳が出ているのを、誤魔化して保育園に送り、仕事の後、小児科に寄って薬をもらう毎日でした。

子供の風邪をもらって、副鼻腔炎に感染し激しい顔面痛に苦しんだり、子供の手足口病に感染し、激痛で歩けなくなったり、最初の数カ月は、私も子供も病気との闘いに必死でした。
3人兄弟だと、病気によっては時差式に次々と感染する事も多く、上のお兄ちゃん達には、早いうちから1人で病院に行き、家で1人で休んでもらう事もありたくさん苦労をかけました。

そして、夏が終わり、秋に入った頃、3男を入院させてしまう事態に陥ります。
いつものごとく、息子はずっと風邪気味で、毎日咳と鼻を出していました。熱はないから、病院に通いながら、保育園に行かせてました。
でもなかなか良くなりません。咳も空咳のようになってきました。

そんなある日の夜23時ごろ、息子が咳き込み始めて止まらなくなってしまいます。
これは普通じゃないと思い、急いで救急に駆け込んだところ、「酸素濃度が足りてません。すぐ大学病院へ」と診断され、そのまま大学病院の救急へ運ばれます。
夜中にレントゲンやら採血やらとんでもない量の検査をされ、息子は泣き叫び、私と夫は、突然の事態に何も出来ず、ただただ、動揺するしかありませんでした。

検査が終わったのは朝方で、結果は、1週間の入院という診断でした。
泣き疲れて眠った息子を病院のベットに残し、私と夫は仕事に向かいました。

夜の付き添いが許されない病院だったため、仕事帰りの夕方に病院に寄り、少しの間、息子と過ごし、面会時間が終わる18時ごろに病院を後にすると言う毎日です。
別れ際には、点滴に繋がれた状態で、大泣きして追ってくる息子と別れるのが心底辛く、帰りの車の中で涙が止まりませんでした。

仕事をしているお母さんは「子供の病気を悪化させやすい」という周囲の言葉に心底傷つき、もう仕事を続けることは無理かもしれないと本気で挫けそうになった出来事でした。

そして、無事に退院した後は、1週間の自宅療養になり、家で過ごす事になりました。
その1週間は、有給を取り、家で仕事をしつつ息子と過ごしたのですが、なぜ、1週間も会社に来れないのか?今なら理解してもらえるような事も、当時は、理解を得る事はとても難しい現実がありました。

育児休業復職後、1年以内の離職率が50%近いと言われている理由がわかった1年でもありました。

それからは、自分の次に復職する女性達は、「継続」が最初のクリアすべきステップになるのだと感じ育休復職後1年の離職を0にする事に奔走する事になります。

そして、同じころ、弁護士ドットコムが東証マザーズに上場を果たしました。2014年12月のことでした。
分割時の目標の1つだったIPOを達成し、上場企業として次のステップに進み始めました。
Authenseも、社員数が100人に達し、取り扱い分野が拡大していました。
100人の壁を乗り越えるべく、組織化やシステム導入を推し進め次のステップに進んでいくことになります。

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