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A Look Back On Fellsius

どうも、こんにちは。ライターのYuki Kawasakiです。GH STREAMINGと、かつて私が所属していたMixmag Japanが共同で配信プロジェクトを行っていた縁で、これまでに放送されてきた番組をダイジェストでお送りする企画が今月11月からスタートしております。第2回目の今回は、日本のダンスミュージックにおける若き才能・Fellsiusさんをご紹介。

配信サイト:
https://gh-streaming.com/

彼は日本のダンスミュージックレーベル〈TREKKIE TRAX〉に所属しながら、過去にはLAの〈Dome of Doom〉などからも音源をリリースしています。Dome of DoomはWylie Cableが主宰していて、Daedelusなんかもリリースしているレーベルですね。Fellsiusのお父さんも実は音楽プロデューサーでして、『リッジレーサー』などのゲーム音楽を制作されています。しかしそういった面で英才教育をガッツリ受けていたかというとそうでもないらしく、ゲームに触れさせてもらえなかった時期もあるようです。幼少期から家庭内ではDaft Punkの曲がかかっていたそうですが、それがDaft Punkのものだと認識したのは、それからしばらく経ってからでした。

彼をダンスミュージックの世界に引き込み、今なおフェイバリットとして挙げるのはSkrillex。確かにFellsiusの楽曲からは御大の音楽的な影響を強く感じますが、インスパイアされたのは作曲面だけでなく、音楽との向き合い方にも大きなヒントがあるように思われます(まぁそれに関しては、Skrillexの影響というより“hyperpop”以降の感性なのかもしれませんが)。

Skrillexがブロステップの専門家ではないように、Fellsiusもまた様々なジャンルを横断するようなアプローチをとります。アブストラクトなベースミュージックに重きを置いたり、4つ打ちを基調にしてみたり、曲によって様々にスタイルを変えてくる。

先述したように、FellsiusはEP『Mesa』のリリースによりDaedelusともレーベルメイトとなったわけですが、作家性としては彼とも共通するものがあるように思います。楽器以外の音をサンプリングし、様々なジャンルから様々なサウンドをカット&ペーストしてゆく様は、LAビートシーン的でもあるのではないでしょうか。Fellsiusはアートワークも自分で手掛けていますから、ビジュアル・パフォーマンスに妥協しないあたりにも、トータル・アート的なアプローチを意図的に選んでいる気がしますね。サウンドでもアートワークでも、我々を驚かせてくれます。

初のフルアルバム『MONOEYE』がついにリリース!

11月16日、ついにFellsius史上初のフルアルバムがTREKKIE TRAXからリリースされました。ここまで述べてきたジャンル横断型の作曲センスとトータル・アート的なアプローチが、見事に結実した作品に仕上がっています。音の位相を巧みに操り、独特で空間的な音響を実現。ジャケットのデザインも自身で手掛け、その世界観に深みをもたらします。具体と抽象の間を射抜くような、Fellsiusがこれまで作り上げてきた意匠をさらにアップデートしたアートワーク。今作がひとつの指標になりそうではありますが、それでいてまだ底知れぬ才能を感じます。

SkrillexやDaedelusの名前を挙げてきましたが、ここでもうひとり引き合いに出したほうがよさそうなアーティストを。個人的には、今回のFellsiusに対してPorter Robinsonばりのストーリーテラーっぷりを感じました。「フルアルバム」としては今作が初めてなわけですけれども、彼はこれまでにもEP形式で“かたまり”として楽曲を発表しております。が、“点”でなく“線”としてトラックを表現したのは今作が初めてではないでしょうか。Porter Robinsonがワンクールのアニメのごとく各楽曲(あるいはライブパフォーマンス)に伏線を忍ばせるように、『MONOEYE』に収録されている曲もまた、シームレスに繋がりをみせる。昨今のサブスク社会では楽曲単位でサジェストされることも多いですが、その中にあって本作は“線”で聴く楽しさを再認識させてくれます。そしてそれはさながら、一貫して祝祭的でありつつ起承転結めいた展開があった『Discovery』(Daft Punk)にも繋がって来るように感じるのです。

基本的にはダンスミュージック。しかしその本質はリスニングミュージックとしても解釈でき、実にタイムレスな印象を受けます。極めて刹那的なダンスミュージックと相反するようですが、その矛盾を成立させているのが本作『MONOEYE』です。思えば、ここまで名の挙がったすべてのアーティストが、そんな“矛盾”の中で活動しているのかもしれません。両極を同時に追求することで、その世界観はさらに先鋭化されてゆく――。

ちなみに今回ダイジェストでお送りする映像は『Mesa』リリース時のものなので、あらかじめご了承ください。2022年11月16日(水)にリリースされた『MONOEYE』は各種サブスクリプション・サービスにて絶賛配信中なので、ぜひ聴いてみて下さい。明後日11月26日(土)にはCircus Tokyoで本作のリリース・パーティが開催されますので、そちらもぜひお楽しみに!ということで、「A Look Back On Fellsius」でした。それでは、また。

配信サイトURL: https://gh-streaming.com/

■ Fellsius 『MONOEYE』
Label: TREKKIE TRAX


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