【小説風プレイ日記】超探偵事件簿 レインコード【1章推理編#17】
©スパイク・チュンソフト | RAINCODE
『都市伝説"クギ男"誕生の地』
『ゆ、幽霊とか…出ないよね…? 大丈夫だよね…?』
教会だというからてっきりもっと聖なる感じの厳かな雰囲気を想像していたけど…なんだここは邪教徒の教会?
雨雲のせいで辺り一体が薄暗く教会から射し込むステンドグラスの光が不気味さを増して、禍々しい雰囲気を生みだしている。
…幽霊が出そうと言われても仕方ないかも。
ん? ふと隣を見るとハララさんが固まっている。
死に神ちゃんみたいに教会の見た目に圧倒されている風でもないし…どうしたんだろう?
「…どうしたんですか? ハララさん。」
「僕は教会が嫌いでね。
まったく価値を見い出せない場所だよ。」
「…え? なんでですか?」
「"祈り"は"支払い"に劣る…。
この街で起きた惨劇をみれば明らかだろう。
救いの神など、どこにもいない…。
迷える子羊は探偵を頼るべきだと思わないか?」
「どう…でしょう。
それは個人によるんじゃないでしょうか?」
探偵だって便利屋さんじゃないし、出来る事には限りがある。
それに祈りを捧げる事によって心のつっかえていたものが取れて救われる人もいるだろうし…。
「…まぁいい。
ひとまず、この教会にいる連中から話を聞いてみよう。」
「素直にボク達に話してくれますかね?」
「アマテラス社保安部からの依頼を受けていると言えば断れないだろう。」
「そんな嘘をついて大丈夫ですか?」
「大丈夫かどうかは二の次だ。
事件を解決させる事を優先するんだ。
その為なら、時にはハッタリも必要だ。」
いいのかな…あとでバレて大変な事になったりしないかな…。
「さぁ、ここの連中に教えてやろう。
本当の救世主は、雨雲の向こうになどいないという子を。」
☩ ☩ ☩
『教会関係者への聞き込み』
「あの…話というのは一体なんでしょう?」
「もう何度も保安部に話したっつーの。
何回話せばいいんだよ。」
「そ、それに…もう犯人は逮捕されたんですよね…?」
「まぁ、俺は別に構わないぜ。
話くらいはいくらでも聞かせてやるよ。」
教会前に集められたのは4人。
神父とシスターと使用人と、熱心な信者だ。
保安部にも散々事情聴取されて、しかも犯人が捕まったというのにまたこうして集められているからそりゃみんな機嫌が悪い。…はっきり言って全員顔が怖い。
「…いつまで墓石みたいに突っ立っているんだ?」
宣言撤回。
教会関係者よりも怖い人がいた。
「時間はないはずだ。
なんの為に彼らを集めたと思っている?」
「あ…はいっ!
えっと…聞き込みですよね?」
「君の手番だ。
さぁ、カードを切りたまえ。」
やっぱり…ボクがやらなきゃいけないのか。
ハララさんはあくまで"助手"に徹するみたいだな。
『ご主人様より、悪魔ちゃんがやった方が、絶対に早いけどね。』
…でも、やらなきゃ。ごちゃごちゃ考えている時間はない。
☩ ☩ ☩
「あなたが…この教会の神父さんですか?」
「ええ、その通りです。
私の家系は、大体この教会に仕えてきました。」
まず最初に声を掛けたのは神父だ。
教会の一番偉い人だし、"クギ男"についても何か知っているかもしれない。
ただ予想外だったというか、聞いてもいないのに教会の歴史とか、長年教会に仕えた一族偉大さとそれを導いた神の凄さがなんたら…語り出したのには驚いた。
内容はまったく理解出来なかったけど、神父として仕える事に誇りを持っているみたいだ。
「あの…"クギ男"についてはご存知ですか?」
「もちろんです。
どうしてそんな噂が広まったのかは謎ですが…。
おそらく、救いを求める人々の願いが、"クギ男"という幻想を生み出したのでしょうね。」
救い、か…。
もし"クギ男"がこの街の人達にとって救いなら、かなり病んでるよな…。
『でも、病んでるのってカッコイイ。
オレ様ちゃん、そうゆうのに憧れるな。』
『ふふふ…ご主人様を束縛したり、2人だけの世界に引こもたりしたい…!』
…現在進行形で叶ってるよね?
「"クギ男"の正体に、心当たりはありませんか?」
「いえ…私にはまったくわかりません。
隣人がそんな事をしたとは考えたくもありません。
あるいは…本当に怪人の仕業なのかもしれませんね…。」
「…ありがとうございます。」
☩ ☩ ☩
「えっと、あなたは…。」
「見てわかんだろ? シスターだよ、シスター。」
とてもそうには見えない…。
2人目はシスターだ。派手なメイクでとてもじゃないけどシスターには見えない…。でも邪教の人と言われたら納得できる。
「つーか、急に呼び出してなんなんだよ!
聖歌の練習で忙しいんだけど!?
神に代わって、ぶっ殺すぞ!」
「す、すみません!」
「言っとくけど…ワタシのパパってアマテラス社のお偉いさんだから…いくら保安部の依頼だからって、ムカついたらパパにシメて貰うよ。」
「は、はい。えっと…すぐ済むので話を聞かせてください。」
うちのパパは凄いんだよタイプか…ここは早々に切り上げた方がいいな。
「"クギ男"について、何か知っている事はありませんか?」
「あぁ、釘で人形打つヤツだろ?
たまに、夜中に森を出入りしているヤツを見かけるな。
その後で森に行ってみると、大抵、人形が木にぶっ刺さってるんだ。
人形には血で書いたような名札もついてるし、はっきり言って不気味…。つまり、サイコーって事!」
「そ、そうですか…。」
やっぱりこの人と仲良くするのは無理だな…。
ふと右手に巻かれた包帯が気になった。
指先から肘のところまでぐるぐる巻にされて、文字通り指一本動かせない状態だけど…デスメタル聖歌ってのを開発中にベースでゴギッとやってしまったらしい。
ちなみに怪我している方は利き手だ。使用人からの証言もある。
「あの…"クギ男"の正体に心当たりがあったりしませんか?」
「知らねーよ。殺し屋の仕業なんじゃねーの?」
「殺し屋って…。」
「あ? 何か文句ある? パパに言いつけるよ?」
「す、すみません…。」
☩ ☩ ☩
「…あなたは?」
「ぼ、ぼくはけの教会で…雑用とか、掃除とか、そうゆう事をして働いてます。
森をきれいにするのも、ぼくの仕事です。」
3人目はふくよかな使用人だ。
人と話をするのが苦手なのが視線は常にに泳いでいて、話し方もどこかぎこちない。
「あなたは"クギ男"について、何か知っている事はありますか?」
「ぼ、ぼくは普段…森の見回りもしているんですけど、夜はぐっすり寝ているので…。
朝になると、木と釘と人形が刺さっていて、いつも片付けするのが大変です。
"クギ男"本人は…み、見た事はありません。
で、でも森に来る人達は…たまに見かけます。」
「その人達に声をかけた事は?」
「ありますけど…大抵は逃げられます。
驚いて釘とか人形を落としていく人も…います。」
追いかけて人形を返そうとしてるようだけど、あの体型だ、大抵間に合わずに逃がしてしまうそうだ。
「犯人は誰だったと思いますか?」
「い、いえ…まったく、わかりません…。
森に来る人の中に、いるのでしょうか…?」
「少なくとも、人形は見に来ていたと思いますが…。」
「そうですよね…。
よ、夜も見回りした方がいいのでしょうか…。」
☩ ☩ ☩
「あの…あなたは…?」
「…聞かなくても、俺の事知ってんだろ?」
「えっ? いえ、今日初めてお会いするかと…」
「はぁ? "クギ男"の事調べてるのに、男を知らないのか?」
「ど、どういう事でしょう…。」
「時計塔で被害者の死体を最初に発見したという"教会関係者"だろう?」
「あぁ、その通り! 俺が第一発見者だ!」
あぁ、あのレポートに書いてあった…。
ハララさん、よく気付いたな。
インテリアヤクザと言った方がしっくりくる信者は興奮気味に色々と語ってくれた。
「俺さ、神秘的な場所が好きなんだよ。この世のものじゃない何かを感じるだろ?
そういうのを調べるのも好きだから、"クギ男"についても昔から目を付けていたんだ。」
「じゃあ"クギ男"に詳しいんですか?」
「詳しいなんてもんじゃない。
"クギ男"研究の第一人者と言ってもいいだろうな。」
人は見かけによらないっていうけど本当だな。
だってそんな風には全然見えない。
だけど彼の"クギ男"を語る時の熱量は本物だ。
これは教会の信者というよりクギ男信者と呼んだ方がいいがもしれない。
「それなら、時計塔の事件についてどう思いますか?
容疑者が逮捕されたみたいですけど…。」
「結論から言わせてもらえば…あれは冤罪だね。」
「えっ! じゃあ真犯人は…。」
「もちろん、本物の"クギ男"だ!
儀式によって呼び出された真の"クギ男"が、イケニエの人形に従って人を殺してるって訳だ!」
クギ男信者の彼が本物の"クギ男"の存在を証明したいのは分かるけど、本当にありえるのか?
都市伝説の化け物が実際に存在して伝説通り人を殺して回っているだなんて…。
ありえない…と顔に出ていたのか、信者は得意げに自信が第一発見者となった経緯を話してくれた。
「いいか、まず森で人形を探すんだ。
儀式に使われた名札付きの串刺し人形だ。
名札に書かれている人物…そいつが"クギ男"の次の標的だ。
後は、街でその名前の人物を探すだけ。
上手くいけば"クギ男"と鉢合わせできるはずだ。
残念ながら、俺は今まで一度も上手くいってないがな。
もうすでに4回も、あと一歩の所で逃してる…。」
「そっか…人形の名札から、次の被害者が誰か予測できるんですね…。」
「時計塔の件も、あと一歩だったんだ。
名札にあったのと同じ名前の人物を突き止め、そいつが時計塔に向かったという情報を得たんだが…保安部を呼んで一緒に時計塔に入ってみた時は、もうあの状態だった。」
もの凄く悔しいそうな信者。
自分がもう少し早く到着してれば被害者を助けられたのかもしない、そんなもしもに囚われているんじゃないかって声をかけようとしたら…。
「クソっ! オレがもっと早く行動してれば…。
もう少しで"クギ男"に会えたのによぉ!」
『事件を未然に防ぎたい訳じゃなくて、"クギ男"に会いたいだけかー。
オカルトマニアってヤツ?
なんか、このヒトもヤバそうだね。』
To Be Continued..
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