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【小説風プレイ日記】超探偵事件簿 レインコード【1章推理編#21】

©スパイク・チュンソフト | RAINCODE

※第三の密室現場を調査しています。
相変わらず釘打ちされた人が出てくるのでグ口耐性のない方はお気をつけて。
※血はピンク色ですが17禁ゲームです。






『第三の密室』




「『都合により閉館中』って書いてありますね。」


ギンマ地区にある美術館に来たはいいものの…入り口は封鎖されていた。
まぁ…事件があったのは、まだ1ヶ月ほど前だから仕方ないよね。
美術館関係者に事情を話して開けてもらうか…て、ハララさんっ!?


「さ、さすがに美術館のドアを蹴破って入るのはマズイですよ!」

「…ん? 何か言ったか?」


…間に合わなかった。後で弁償とか要求されないだろうか…心配だ。


「現場は、美術館の奥のいくつかある倉庫の1つらしい。
…行くぞ、ロスは許されない。」

「ま、待ってくださいって…!」


中には美しい絵画や、歴史的価値のある物なんかが飾られていたけどそんなものに一切わき目も振らず真っ直ぐ現場となった倉庫を目指す。
観覧はまた時間のある時にでもすればいいかな、今度はちゃんとお客さんとしてね。

華やかな美術品エリアと違って、質素な鉄筋コンクリート丸出しで豆電球の光がどことなく頼りない倉庫。
そこの一番奥にあるドアの前でハララさんは立ち止まった。

「事件現場の倉庫って…ここですよね?
やっぱり鍵が掛かって…。」

「入るぞ。」


息するように蹴破るじゃないですか…これじゃあ…まるで暴漢だよ。


「今回も、第一発見者は教会の人なんですよね?」

「ご多分に漏れず、例の信者だ。
森にあった人形に名前を書かれていた人物を探し当て、後をつけていたところ…深夜に、ここの敷地に入っていくのを見かけたらしい。
そこで美術館関係者を伴って敷地内を探索し…倉庫の1つを開けると、すでに死体となっていた被害者が発見された。
発見時、ドアは施錠されていて、鍵は室内で見つかっている。」

『おおーっ、これまた密室だー! 密室が4つもーっ!
…って、若干飽きてきたかも。ありがたみなくなってきたね。』


なんだよ、ありがたみって。人が死んでいるんだぞ?


「ひとまず…調査を始めましょうか。」

「…あぁ、そうだな。」





ꄗ調査開始ꄗ



まずは唯一の出入口であるドアの確認。

今回のドアは鍵が2つあった。発見時、1つは室内にあってもう1つは、美術館関係者が持っていた。
そっちは美術館関係者が肌身離さず持っている物で、死体発見時はその鍵を使って入ったそうだ。
室内で発見された鍵は事務所で管理していたそうだけど、常にそこにあったかどうかは怪しいらしい。
紛失した物を、たまたま犯人が拾ったのか…。
それとも、犯人がこっそり忍び込んで盗んだのか…。
ともかく、いずれかの手段で犯人が入手していた可能性が高い。

ドアの近くには、こぼれたペンキが床を汚している。
いつこぼれたのかわかれば、事件に関係あるかどうかわかるかもしれないな…。…見比べてみよう。


"過去視"で見える現場は少し色あせていて…絵画の彩りが並ぶ美術館倉庫の密室も、どこか薄ぼんやりとして見えた。
部屋中に溢れる油絵具の臭いは、過去のものではなく現在のものだろう。
もし、臭いまで過去を再現できていたとしたら、もっと死体の血生臭さを感じていたはずだから…。


「さっきから気になってたんですけど、このペンキ缶って、犯人が倒した物なんですかね?
だとしたら…なんらかの細工に使われた可能性もありますよね。」

「決めつけるのは良くないな。
事件前からこうだった可能性もあるし、逆に、発見時にこうなった可能性もある。」

「あ、あぁ…そうですよね…。」


何かありそうな気がしたんだけど…気のせいだったかな。
でも、ここはなんだか他違った意味で不気味なんだよな。
今までの現場もかなり異常なものだったけど、今回の現場は人形を刺す代わりに人物画をハリツケしていて、他とは違いどこか歪んでいて気味が悪い。


「出入口になりそうな場所は、ドア以外だと…この窓しかありませんね。」

「換気用の"突き出し窓"だな。
見たところ、人が出入りできそうな大きさではないが…。」

こっから鍵を投げ入れたのは間違いないとして、
…さて、どーやって?


一応、外に向かってわすがに開くけど、特に怪しい痕跡も見当たらないし、ここからの出入りは不可能だろう。
窓の下には一際大きな風景画が。
他の絵画は壁にハリツケにされてたのにどうしてこれだけ床に倒されているんだろう?

理由がなければこうはならんよ。


布地のキャンパス上に人形が釘付けにされている。
頭部を貫くように釘が一本…。
そして、胸を貫くようにもう一本。
しかも、胸には鍵が一緒に釘付けされている。
鍵の取ってにある小さな輪を釘が貫いている。
犯人はこの絵に人形と釘を打ちつけた後、倉庫から立ち去ったのか…?
だとしたら…どうやって施錠したんだ?
施錠しようにも鍵はこの絵に打ち付けられているのに…?

密室だからね。
なんだかんだうまくやったんだよ。





☩ ☩ ☩




「ところで、ハララさん。」

「…依頼料の減額には応じないぞ。」

「いや、そうじゃなくて、ハララさんの"過去視"なんですけど…。
探偵特殊能力として殺人現場に特化する前は、何がどういう風に視うていたんですか?
たとえば…ハララさんの能力を使って、ボクの過去を視る事ってできないかなと思って…。」

『それで、なくした記憶を視るつもり!?
えー、ルール違反だよ! ずるいー!』

「結論から言うと…たとえ視る事ができたとしても、役に立つ情報は得られないだろうな。」

「え? なんでですか?」

「サイコメトリーでは視たい過去は選べない。
断片化された情報が光のように瞬くだけ…。
こちらが必要としている情報に、意図的にアクセスはできないのさ。
だからこそ、世界探偵機構で訓練し、調査に特化した探偵特殊能力に発展させたんだ。」

「…断片的な情報でもボクにとっては貴重な記憶です。
少しでも記憶を取り戻せたら…。」

「そこまで言うなら、事件の調査が終わった後に考えよう。1回につき10万シエンでどうだ?」

「後で相談させてください…。」


こころなしか安いと思ってしまった…。
だんだん感覚が麻痺してきたな…。


『いいぞ、悪魔ちゃん! きゃっきゃっきゃっ!』




☩ ☩ ☩




倉庫の中央に女性は寝かされていた。
…若い女性の死体だ。やっぱり、体のあちこちに釘で刺されている。


「被害者はイーソー=トモエという名の女性で、その美貌を売りに多くの男性を関係を持っていたようだ。
人形に自分の名を書いたのが誰なのか…心当たりがあり過ぎて見当もつかなかっただろう。」

時計塔も女の人だったけど、こっちの人の方が好み。


「今回の被害者も、今までと同様に、首に絞殺された跡がありますね…。
あれ? でも抵抗した際の引っ掻き傷がない。
それに…後頭部に殴られたような傷があります。
結構深そうな傷ですね。」

もしかしたらこっちが本当の死因とか?




ꄗ調査終了ꄗ







☩ ☩ ☩







『あまてらしゅしゃ』



「さて、室内は大体調べ終わったな。後はあの窓だ…。」


えっと…突き出し窓って呼ばれる小さな窓のことだよね。
確かにドアが施錠されていた以上、後出入り可能な場所ってあそこしかないんだよな…小さ過ぎて小人くらいしか通れないと思うけど…。
とりあえず、外に出てみて反対側から調べてみることにした。


『それにしてもご主人様はなんでもかんでもやるね。下僕探偵だね。』

「でも…ハララさんが言っていた通り、これはボクが依頼を受けた事件だからさ。
あの少年にあんな大見得切ったのに、何もかも他人任せじゃ、カッコ悪過ぎるよ。
だから、ボクがやらなきゃダメなんだ。」

『悪魔ちゃんの口車に乗せられてるだけじゃない?
あのヒトは金で動くか動かないか決めてるだけでしょ?』

「そうだとしても…プロの探偵としてはそれが正しいのかもしれない。」

『ご主人様、お人好しも度を越すとただのバカだよ?
そんなんだから借金まみれになるんだよ。』

「そんな事言っても…。」

「何をぶつぶつ喋っているんだ? 窓は調べたのかい?」

「あっ、はい! 今、調べます!」


窓って、これだよな…。
外から見ても小さな窓。下に足場となりそうな物が置かれていた。
人が乗ってもビクともしない頑丈な箱だ。


「どうだ? 何か見つけたか?」


窓越しにハララさんの声が聞こえる。
箱に登れば窓はちょうどボクの顔のところにくる。
…けど、見たところ何もおかしなところはない。


「いや、特に何もおかしなところはないみたいですけど…。」

「…そうか。
では、その窓から中に入ろうとしてみてくれ。」

「えっ? この隙間から? む、無理ですよ!」

「いいから試してみるんだ。」

「…はい。」


言われるがまま頭をほんの少しだけの隙間にねじ込んでみたけど…。


「や、やっぱり無理です!
この隙間じゃ…腕も通りません…! せいぜい…指が入る程度です!」

「まぁ、そうだろう。
ご苦労さま、戻っていいぞ。」

「え? いいんですか…?
これで何かわかったんですか?」

「わからなかったのか?」


え…何その反応…全然わからない…。
一体、なんだったんだ?


「ちょっと!
あなた、ここで何をしているんですか?」


や、やばいっ美術館の職員さんが来ちゃった。


「えっ!? あ、あの…えっと…ボクはけっして怪しい者では…。」

「保安部を呼びますよ!?」

「ま、待ってください! ボクは…。」


な、なんて言って誤魔化したらいいんだっ。
正直に探偵いだって言う?
でも、カナイ区じゃあ探偵は忌み嫌われている存在だしそれだと逆効果か…?
だったら…ええいっ! …ままよっ!

「ボクが…その保安部です。」


ハララさん直伝、時にはハッタリをかます事も大事。


「えっ? アマテラス社の?」


よしっ! 少したじろいでる。
カナイ区で絶対的支配権を持っている保安部の名は効果覿面だったみたいだ、このまま押し切れば…!


「そ、そうです。あまてらしゅしゃの…」

『あ、噛んだ。 慣れない嘘つくからだよ。』

「今…なんて?」

「だ、たから…あの…。」

「我々はアマテラス社の特別捜査官だ。」


ハララさん!?
いつも間に駆けつけていたハララさんが上手いこと誤魔化してくれた。
助かった…。ありがたいけどでも、特別捜査官ってなに?
どんどん変な役職が増えていってるような気がする…。


「現在、事件の捜査中だ。一般人は口出しするな。」

「え? あ…はい! 失礼しました!」


嘘を信じてくれた美術館の職員さんはビシッと背筋を伸ばしてハララさんを見つめている。
さきほどまでの不審者を見る目はどこへやら…。


「ところで、君はここの職員だな?
君に頼みたい事がある…。ひと月前、ここで事件があった時、死体を発見した職員を呼び出して貰えるか?」

「あぁ…それなら私です。」

「そうか、ちょうどいい。
では、その時の詳しい状況を教えてくれ。」

「…思い出すのも恐ろしいですが、捜査なら仕方ありません…お話しします。」


ハララさんがボクの方を見る。
後は任せた、って事か…わかりました。


「では、事件当時の詳しい話を聞かせてください。」

「あの日、閉館後の作業をしていると、教会の方がいらっしゃいました。
なんでも、人を探しているから協力して欲しいと…美術館に入っていったのは間違いないとの事でした。
それで、一緒に敷地内を探しましたが、まったく姿が見当たらなかったんです。
聞くところによると、その探している相手は、"クギ男"に狙われている可能性があるそうで…。
私、それを聞いてすっかり怖くなってしまって…。」

「倉庫内の異変に気付いたのは、どうしてですか?」

「普段は消えているはずの明かりが付いていたんです。
それで一応、調べてみようという事になりました。
扉には鍵が掛かっていましたので、私が持っていた鍵で倉庫の鍵を開けました。
でも…それ以上は怖くて…。
だから、教会の方に先をお譲りして、彼が扉を開けるのをすぐ後ろから見守っていました。
そ、そうしたら…し、死体があって…。」

「死体には触れたか?」

「ま、まさか! とんでもありません!
私は入り口で足がすくんでしまって動けませでした!」

「教会の者は?」

「あの方も入り口を入ったところで状況を察したらしく、それ以上は中に入りませんでした。」

「解錠後、室内の物には触れていないのだな?」

「もちろんです。
あ、でも…扉を開けて中に入る際に、入り口にあったペンキ缶を教会の方が蹴って倒してしまいました。
それで、床にペンキがこぼれてしまったんです。」


あの床のペンキは、その時のものか…。
発見時に倒された物なら、密室トリックとは関係ないだろうし…事件とも関係ないたまたま起きた事故…?


「なるほど…よくわかった。
ご苦労だったな、もう行っていいぞ。」

「あ、はい…。」


立ち去る職員さんの背中を見送る。
彼の見たものは事件解決に役立つものだったかな?
現場を調査してわかった事の答え合わせをしただけのような…まだ整理しきれていない手がかりで頭がパンクしそうだ。


「さて、これですべての情報が出揃ったな。いよいよ解決編だ。」

「えっ!? ちょっと待ってください!
まだ全然、何もわかってないんですけど…。」

「時間は待ってはくれないぞ。
予告されたタイムリミットまでもうすぐだ。
とにかく、君は探偵事務所へ急げ。」

「え? ハララさんは?」

「心配しなくていい。
困った時は僕の名を呼びたまえ。
ハララ=ナイトメアは必ず駆けつける。」


かっこいい捨て台詞だけ置いてハララさんは、どこかへ立ち去ってしまった。
確かに調べられる所はもう全部調べたし、後は真犯人を指差すだけっぽいけど…。


「それができたら苦労しないよ…!
あぁ、もう…! どうしよう…!」

『も、取り乱して情けないなぁ。
とりあえず、探偵事務所に戻ったら?
そろそろモジャモジャ頭の処刑が見られる頃だし。』

「そ、そうだ…! ひとまず止めに行かないと…!」


早く戻らないと、所長が処刑されちゃう!




To Be Continued..

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