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【小説風プレイ日記】超探偵事件簿 レインコード【1章推理編#16】

©スパイク・チュンソフト | RAINCODE

※事件現場の調査パートは一旦終わって、非日常パートです。
(いい言葉が見つからなかった、会話パートです。)






『悪魔ちゃん』



「ハララさん…どうか力を貸してください!」


保安部に目をつけられ時計塔から追い出されたボク達があの男の子のお父さんを助ける為に出来る事、それはハララさんに力を貸してもらえるように頼む事だった。

『むむっ、ご主人様が頭を下げるなら、オレ様ちゃんも一緒に頭を下げないと!』

『オレ様ちゃんからもお願ーい!』

DO GE ZA ☆


 「…想定より30分ほど遅かったな。」


そう言うと席に座るよう促された。
まだ朝方という事もあってか喫茶店の客はまだらで、ボク達の奇行については誰も触れて来なかった。
みんなそれぞれの時間を楽しんでいるみたいだ。


「それで、支払いの用意は?」


席についてまず話す話題は依頼料の話。
当然ボクに高級車を買えるだけのお金なんてないから、ハララさんには待ってもらうことになる。

「今、手持ちはないですけど、そのうち必ず…」

「…いいだろう、すぐにとは言わないさ。
ただし、必ず550万と800シエン払って貰うぞ。」

「あれ? さっきは確か500万シエンって…。」

「僕を待たせた時間分の追加と、ここのコーヒー代だ。
言ったろ? 僕は安くないって。」


そんなぁ…。新手の詐欺にあった気分だよ。
強制はしないって、ケーキでも食べて待ってるよ…といいつつそのケーキ代も依頼料に含まれているんだよな…悪魔だ。
死神も認める悪魔的手法に押し負けたボクは550万と800シエン(いつか必ず)支払う事を約束して、ハララさんと契約を結んだ。


「僕は君の目となり、手足となり、事件解決の為に全力で君を助けよう。
だだし…よく覚えておけ。
少年の依頼を果たすのは君自身でなければならない。」

「…え? ボクが?」

「事件を解決を依頼されたのは君だろう?
僕がやるのは、手助けまでだ。」


まだ見習いとは言っても、一応探偵なんだから一度引き受けた仕事は、最後まで自分でやり遂げろって事らしい。
その為のサポートは全力でやってくれる。
つまり今回ハララさんはボクの"助手"として、動いてくれるそうだ。
ポンコツ探偵と優秀な助手…シャーロック・ホームズかな。
いや…ボクはホームズみたいに頭の回転が早くないから無理か。

「それで…これからどうします?」


とりあえずこれからの調査の方針を相談してみる。
時計塔でボクが見た事の情報を共有しておきたいし。


「まず確認しておくが、標的は"クギ男"殺人事件の真犯人で間違いないな?」

「保安部は、少年の父親を"クギ男"と断定して、拘束してしまいました…。
でも、その結論をそのまま受け入れる訳にはいきません。」

「調査の結果、やはり少年の父親が"クギ男"だと判明する可能性もあるぞ?」

「もし、ハララさんがそう結論づけたなら…ボクはそれを信じます。」

「…信じる?」


ハララさんの表情が一気に暗くなる。
どうやら地雷を踏んでしまったようだ。


「極めて愚かな思考だな。」


大きなため息を吐いた後、有り得ないといった感じで頭を大き振り、


「他人が他人を"信じる"と言う時ほど、軽薄さがにじみ出る瞬間さない…。
嘘をつかない人間などいないし、心変わりをしない人間などいない。
君も探偵からすべてを疑うべきだ。たとえ、僕の言葉でもな。」

『そうそう。探偵なはすべてを疑ってかからないと。』

「それでも…ハララさんの言葉なら信じます。
信じられるような気がするんです…。」

「話にならないな。」


完全に飽きられてしまった。
ハララさんからもう一度教わったのは、

『探偵はすべての謎を見逃してはならない。
どんな真実であろうと必ず暴く』

『探偵はいついかなる時でも、事件の解決を第一に優先させなければならない。』

『完璧な解決、完璧な推理の為には、すべての感情を捨て去るべき』


…世界探偵機構の教えだ。
ボクがハララさんの事をどう評価しようとそれはボクの勝手だけど、真実だけは誰の目でもない、ボク自身の目で見極めその手で掴み取れと。
そうじゃなければ、探偵を続ける意味がないまで言われた、だけど…。
そもそも、探偵である事自体に意味を見いだせてないのに、ハララさんはボクに何を背負わせようっていうんだ? ボクなんかに…。


『そんなコトよりさー、ご主人様。
オレ様ちゃん、ずっと気になってたんだけど…。』


そんな事って…! こっちは真剣に悩んでいるのに…なにっ?


『このハララってヒト…男なの? 女なの?』


…確かに! どっちなんだろう!?


「準備がいいなら、早速調査を始めるぞ。
ロスは許されない。」

「あ、はい…。」

『聞くタイミングを逃しちゃったね。
ま、どっちでもいいけど。』



☩ ☩ ☩



「時計塔の調査は終わらせてきたんだろう?
それなら、過去の"クギ男"事件の調査をするぞ。」

「過去の"クギ男"事件…?」

"クギ男"事件は、連続殺人事件なんだろう?」

「あぁ! 過去に起きた"クギ男"の事件を調べるんですね!」

「それらの事件を調べれば、少年の父親が犯人かどうかも判別できるはずだ。」


さすが超探偵というしかない段取りの良さ。
ずっと喫茶店でお茶して待っていたのだと思っていたけど、実はその間に過去の"クギ男"事件について調べていたそうだ。
現場は少なくとも3箇所。
カマサキ地区にある秘密クラブ、高級住宅街にある洋館、それとギンマ地区の美術館だ。
すぐにでも現場に行って調査したいとろこではあるけど、ボク達は都市伝説の方の"クギ男"についてあまり知らない。


「都市伝説の舞台となった教会に行きたいのだが、教会についてはまだ場所を調べられていない。
できれば、誰かに道案内を頼みたい所だが…。」

「それなら、所長にお願いすれば…。」


あれ…所長?
なんだろう…頭の隅っこに何か…あぁっ!?


「…そう言えば所長の事忘れてた!
みんなを集めて来いって言われたきりだった!
ハララさん、いったん事務所に寄ってください!」


集合時間はとっくに過ぎちゃったけど今ならまだ間に合うはず…何かに!


「…まぁ、いいだろう。
ついでに、所長に道案内を頼むとしよう。」






☩ ☩ ☩





『タイムリミットは花が枯れるまで』





「保安部だ、身を隠せ。」

「え? あっ、はい!」


潜水艦を停めている港入口で保安部の集団を発見。
顔を覗かせると、保安部に取り囲まれた中央には所長と時計塔でも見かけた拡声器なしには話せない陰湿そうな見た目のあの人がいた。


「セス=バロウズ…保安部の幹部た。
陰険でしつこい人物だと街でも評判らしい。」


なるほど、見た目通りの人ということか。
でもなんで所長を?
下手な媚びた笑顔で所長はごまをすっているようだけど全く効果はない。


「い、いやー、今日もすがすがしい土砂降りですね。
湿気でいつもより頭もモジャモジャですよー…。」

「そんな事は…どうてもいいのです。
それより…探偵を"クギ男"事件に介入させましたね?
目撃情報が上がっています。」

「…へ? "クギ男"事件?
そう言や、前にそんな事件もありましたけど…。
いやいや! オレはなんも知りませんって!」

「この花…美しいでしょう?」

人の生き血とか啜ってそう…


「アマテラス社の研究によって、カナイ区の環境かな適応させた貴重な芸術品です…。
しかし、残念ながら…手折ってからその美しさが持つのさせいぜい3時間…。
美しい物が枯れ果てていく時…なんとも言えず、悲しい気持ちになります。
あまりにも悲しい過ぎて…。
クックック…船の1つくらい沈めたくなるかもしれませんねぇ。」

「い、言っている意味が…わからないんですけど…。」

"クギ男"事件は保安部で処理します。
あなたたちは即刻…手を引きなさい。
そして、事件に介入した探偵を呼び戻し…保安部に引き渡すのです。」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!
その探偵が誰なのかオレにはわからないし、呼び戻すったって…どこにいるのやら!」

「この花が枯れるまでは…待ちましょう。
3時間です、それ以上は待てません。
それまでに、要求に応えられない場合は…あなたもこの花と同じ運命を辿る事になるでしょうね。」

「わ、わかったよ! わかったけど…。
もうちょっと時間…延ばせない?」


所長の願いも虚しく、保安部達は立ち去った。
完全に誰も居なくなった事を確認し、うなだれている所長の元へ駆け寄る。


「ヤコウ所長! 大丈夫ですか!?」

「あ、あぁ…ユーマ。それにハララも。」


一気に歳をとったように感じる。
疲れきってやつれているところ悪いけど、教会の場所を聞かないと…。


「す、すみません。話せば長くなるんですけど、さっき保安部が言っていたのボク達の事だと思います…。」

「保安部が言っていた通りだ。僕達は今"クギ男"事件を追っている。
そこで、教会に行きたいんだ。
できれば道案内を頼みたいが…立て込んでそうだな。」

「ああ、立て込みまくってるよ! お前達のせいでね!
ていうか、まさかこのまま調査を続ける気!?
所長に対するフォローはなし!?
あのね、3時間経ったらオレは連行されちゃうの!
そうなれば、この街で最後の探偵事務所も終わりたよ!?」

「だったら、僕達を保安部に突き出すか?」

「…見損なうな、オレは所長だぞ。
お前達を売るくらいなら、オレが捕まるさ。」


ここで閉めてくれたらかっこいい所長、で終われるのに…。


「いや…でも本音を言えばそれも困る訳で…。
ちょっと待って! やっぱ、今の言葉はナシって事で!」

『もー! 往生際が悪いなー!』


でもボクはそんな自分に正直な所長が好きですよ。
だからなんとしても所長も助けないと。


「どうします…ハララさん?」

「捕まるのは、所長でも僕達でもない。"クギ男"の方さ。
予定通り、君が真犯人を見つけ出して、保安部に突き出せばいいだけだ。
彼らも反論できないくらいの証拠を揃えてね。」

「でも、3時間しかないんですよ?」

「3時間もあれば十分だろう? 僕も助手として最善を尽くす。
…僕のロジックに不可能はない。」


ハララさんは真っ直ぐな目でボクを見つめる。
この人になら身を任せられるという安心感、そして失敗はないという絶対的な自信。
どちらも今のボクにはないものだ。


「はぁ…なんだかよくわからないけど、もうお前達に任せるしかないみたいだな…。
教会に行きたいんだって?
ほら、教会への行き方は地図に書いといてやる!」


さらさらと書かれた教会への地図は、簡素だけどひと目で目的地までが解るものだった。
地元民って事もあるだろうけど、やっぱり探偵としてあちこち歩きまわっているから地理がしっかり頭に入っているんだな。
地図を受け取り所長にはここで待機してもらう、一緒に行動してるところを保安部に見られたらさらにややこしい事になりそうだから。


「ここで良い知らせを待ってるからな! 頼んだぞ!」

「わ、わかりました! 行ってきます!」

「3時間だぞ! 3時間で事件を解決してこいよっ!
頼むよ…マジで。
オレにだって、まだやらなきゃいけない事があるんだからさ…。

ほほぉ…



To Be Continued..

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