【小説風プレイ日記】超探偵事件簿 レインコード【1章推理編#14】
©スパイク・チュンソフト | RAINCODE
『依頼』
「…え?」
一瞬世界が止まった。
男の子の言った言葉が理解できなくて。
「お父さんを取り返して欲しいって…どういう事?」
男の子の言った言葉をそのままオウム返しで訊ねる。
うつむきこぶしを握りしめて悔しいそうに、男の子は事のあらましを教えてくれた。
「父さんは…この時計塔で起きた事件の犯人として、保安部に捕まってしまったんです。」
「えっ!? キミのお父さんが!?」
「でも、父さんは時計塔の修理をしに来ただけで、事件とは何も関係ないんです!」
「じゃあ…キミのお父さんはまったくの無実なのに、"クギ男"にされたって事?」
「父さんが人を殺したりするはずありません! そんな事する理由がないんです!
だから、お願いします! あいつらから…父さんを取り返してください!」
男の子の必死の眼差しに答えてあげたい…そう思うけど今のボクにそれが出来るだろうか。
考え込むボクの横を通り越したハララさんが男の子に声をかける。
「父親の無実を証明して欲しい…という事だな?
それは依頼か?」
「は、はい…あいつらを一瞬でやっつけたお兄さん達なら、それができるんじゃないかと思って…」
頼るつてがないんだ、藁にもすがる思いって奴だろうな…ちらりとハララさんを見つめる。
保安部相手にあんな大立ち回りが出来るハララさんならきっと二つ返事で男の子の依頼を受けてくれるだろうと思ったら、彼から飛び出た言葉は予想外なものだった。
「いくら用意できる? 僕は安くないぞ。」
子供相手にお金を取るんですかっ!?
男の子もまさかの言葉に唖然としている。
「依頼は果たす、必ずな。
それを可能にするだけの頭脳もある。
だから、もし君が僕を必要とするなら、その決意を見せてみるんだ。」
いや、でもそうか…。
ハララさんは善意のボランティアで探偵をやっている訳じゃないんだ、仕事として命をかけてやっているんだ…中途半端にやってるボクとは違って…。
でも小学生くらいの男の子に探偵に依頼できるだけのお金なんて持っている訳もなくて、
「で、でも…お金は持ってなくて…代わりにこれなら…。
ぼくの、一番の宝物です。」
お金の代わりに差し出したのは、土まみれになった野球ボールだった。
ボールの汚れ具合から男の子がどれだけ大事にしていたのかがよくわかる。
そのボールを静かに受け取ると、
「わっ! ちょ、ちょっと!」
「話にならないな。」
ひょいと投げ捨てた。
キャッチ出来たから良かったものの、人の宝物ものを投げ捨てるなんてなんて人なんだっ!
背を向けその場から立ち去ろうとするハララさんを呼び止める。
「ハララさん、待ってください!
依頼…受けないんですか!?」
「何故、受ける必要がある?
積まれたチップ以外に、人の心を読み解く物証はない。
その決意を証明するのに、相応の金を用意できないというのなら…。
僕にとって、相手は存在しないのと同じだ。」
「あの…彼が差し出した物では足りませか?
ボール自体にはなんの価値もないかもしれませんけど、込められた想いは、何よりも貴いはずです。」
「…そう思うだったら、君がその依頼を受ければいい。」
「えっ? ボクが?」
「それとも、その少年の代わりに君が僕に依頼するか?
僕は安くはないぞ。」
「い、いくら…払えばいいんですか?」
ハララさんの口から出された金額は500万シエン。
シエンはカナイ区の通貨で、高級車一台余裕で買える値段らしい。
ハララさんはここでの自分のやることは終わったと、
「いずれ、僕の力が必要になるだろう。
その時はいつでも…ハララ=ナイトメア、その探偵の名を呼びたまえ。」
カッコイイ決めゼリフだけ残してカフェへと向かった。
そこでボクの返事を待ってくれるらしい…けどどうしよう。
ハララさんに依頼するには高級車が買えるくらいの大金がいるし、かといってこのまま何も聞かなかった事にもできない。
だったら…ボクがやるしかないよ。
「ねぇ、キミ…お父さんの事はボクに任せて。
きっと…大丈夫だからさ! た、たぶん…絶対!」
『はぁ…自信があるんだかないんだか。』
「ありがとうございます!
どうか…父さんを助けてください!」
☩ ☩ ☩
『時計塔殺人レポート』
『じゃあ、ご主人様がやる気になったところで、さっそく現場の密室を覗いてみようか。』
あ、ちょっと待って。その前に…。
倒された保安部の近くに落ちていたタブレットを拾う。防水加工がしてあるタイプでよかった…雨でびしょ濡れになってるよ…。
『え〜なになに〜中身は〜とっ…。
…わお! "時計塔殺人レポート"だって! お宝じゃない!?』
思った通り…タブレットには事件の詳細について書かれていた。
死体が発見されたのが午前7時頃って事は、今は午前8時過ぎだから…。
死体が見つかってから、まだ1時間ほどしか経ってないのか。
『どーりでバタバタしてると思った。
じゃあ、まだ現場に死体があるかもね。』
まだ死体が…。
ごくりと唾を飲み込みレポートの続きに目を通す。
不審人物が目撃された教会裏の森ってのは"クギ男"を呼び出す森の事だよな。
その森で目撃された"クギ男"らしき人物を追ってたら、ここで死体が発見されたって事か。
『キタキター! 密室だー!
わーい! 超なぞまるー!』
"クギ男"って…毎回、犯行現場を密室にしているのかな…?
『密室から煙のように消える怪人かぁ…。
いいねぇ、ヨダレ出ちゃう…。』
『保安部は、捕まえたオッサンを"クギ男"と決め付けているみたいだけど…。』
『やっぱ、自分で直接現場を調べてみないと、真実はわからないよねー!』
男の子には見つからないよう隠れてもらう事にして、ボク達は保安部が目が覚める前に現場検証をすることにした。
☩ ☩ ☩
『時計塔の密室』
『現場は、時計塔の3階の倉庫…てコトは、このドアの向こうかな。』
「中にはまだ…死体があるかもしれないんだよね?」
『死体なんかアマテラス急行で見飽きたでしょ?
ほら、モタモタしない!』
「できれば、2度と見たくないんだけど…」
正直な事を言えば…ボクは扉を開けるその時まで、どこか、まだ他人事のような気分だった。
この事件はボクの知らない所で起こって、もうすでに終わったのだと…。
でも、扉を開けた途端。そんな半端な気持ちは一瞬で吹き飛んだ。
「な、なんだよ…一体。」
目の前いっぱいに入ってきたのは、釘、釘、人形。
釘で滅多打ちにされ壁や床にハリツケにされている人形達と、部屋の真ん中に寝かされ釘で打ち付けられている…人。
「それって…死体…!? 作り物の人形…じゃないよね!?
この血も全部…本物なの? そんな…!どうして…!」
目の前にあるのは死体じゃなくて人形だ! 何かのドッキリだ! フィクションだ!
この光景を受け入れたくなんてないボクの気持ちなんてお構い無しに、錆びた鉄ような臭いは彼女は人形じゃなく人間の死体だという事を物語り、これは現実なんだと告げていた。
口の中が酸っぱい。今朝食べた肉まんが上がってきたのかもしれない。
「もー、ただの異常で凄惨な殺人事件ぐらいで驚かないのー!」
ケロッとした顔で死に神ちゃんは調査するように言ってくる。
死に神ちゃんは、死体を見たってなんとも思わないの?
『はぁー、死神に死体の感想なんて聞いてどうすんのさ?
こんな街で起きる殺人事件なんだから、異常なのがフツーなんだよ!』
『狂う以外には慣れるしないんだよ!
血は液体、死体は物体! はい、オッケー!』
「わ、わかったよ…。
早くしないと…保安部が来ちゃうもんね。」
『そうそう! 張り切って調査開始ー!』
ꄗ調査開始ꄗ
まずはこの部屋でたった1つのドアを調べてみる。
鍵の受け金が壊れている…。
確か、死体発見時、このドアは内側から施錠されてたんだったな…。って事は、保安部がここに入る時、無理やり壊したのかな。
内鍵はツマミをひねって回すタイプか。特に細工されたような痕跡はないな…。
ドアの外側に鍵穴はあるけど、穴が埋められててサビている…。最近こうなった訳じゃなさそうだ。事件前からずっとこの状態だったんだろうな。
穴が埋められているから、合鍵でどうこうする事は出来なさそうだ。
ドアを閉めると隙間もない…。何かの細工をするのも難しそうだ。
やっぱり、このドアを施錠するには、内側から直接ツマミをひねるしかなさそうだよ。
今度はもうひとつの出入口になりそうな窓を調べてみる。
窓は成人男性が軽々出入り出来るくらいに大きくて、ガラス窓がない代わりに、シャッターが設置されている。
建物の古さに比べてシャッターは比較的新しいから、後から設置された物なんだろうな。
この窓の大きさなら、人が出入りは出来そうだけど…保安部のレポートの内容を思い出す。
保安部レポートによると、発見時にこのシャッターは下ろされていたらしい。
今も、その時の状況のままってことか…。
開けてみようとしたけど、やっぱりロックされていた。
左ガラスにツマミがあって、それをスライドさせると簡単に開く事ができた。
「結構軽いね。力を使わなくても簡単に上がるよ。」
でも窓から見えた景色は思ってた以上に高く、普通の建物の3階以上はありそうだ。
さすがに、ここから飛び降りるのは不可能だ。
壁をつたって降りるにしても、取っ掛りになりそうな物もないし…。
上には大時計が見えるけど、これといって怪しい所はない。
うーん、ここから犯人が出入りするのは、難しそうだな…。
諦めて窓から出した体を引っ込めると、ジャララ…と音がして自然とシャッターが下りてまたロックが掛かった。
次は最後までシャッター上げてみると…下りて来なくなった。
そうか…このシャッターって、一番上まで上げると、そこで止まるんだけど…中途半端な位置だと、自重で勝手に下りてくるようになっているんだ。
で、そのまま下まで下りると、自動的にロックが掛かる…と。
『よくわからないけど…ご主人様はシャッターに熱い想いがあるんだね。』
ん? この窓の下…。
「窓の下が濡れている…。」
『さっきご主人様が窓を開けた時、雨が入ってきちゃったんじゃないの?』
「ううん、一部はもう乾き始めててシミになっているし、今濡れたものじゃないよ。」
『じゃあ…釘を刺された人形達の涙とか…。
きゃー! オカルトはやめてー!』
人形…と言われてはっと顔を上げると、窓の下にも2体の人形がハリツケにされていた。
キレイに2つ並べられて、ハリツケにされているけど…なんだこれ? 人形を刺している釘に黄色い繊維が付着してる。
よく見ると、釘に擦った跡もあるし…どういうこのだろう?
まだ時計塔の調査の途中ですが今回はここまでっ!
遂に出てきてしまいましたね。
ダンガンロンパのお家芸「ピンクの血」。
普通に考えて「CERO」対策でピンクにしてるのが妥当ですけど、今作17禁なんですよね…あと0章では普通に赤色だったし…どうなんですかねぇ〜。
ダンガンロンパ好きだからこそ変に深読みしてしまう。
それではまた次回──。
To Be Continued..
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