#7-2【メタファー:リファンタジオ】理想を追い求めることを諦めない【プレイ日記|ネタバレあり】
20241117.
本プレイ日記ではではこれまで全26回に渡り、ATLAS35周年の記念 完全新作RPG『メタファー:リファンタジオ』の物語を綴ってきたが、──ここからは終盤に向けて突っ走って行く所存である。
『全エンディング回収』を目指しているため、隠しエンドなどのネタバレを見たくない人はこのままUターンすることをおすすめする。
♝ 世界を自分の足で見て回れたのなら
(※前回の選択肢を好意的でポジティブなものを選んだ世界線からのスタート)
少年の使命は王子を助けることだった──、その王子を失った今少年が生きている意味はなど……無い?
いいや、そんなことはない。王子が死んでしまったとしても、その意思は生きている。王子と少年が夢見た理想を叶える旅は終わらない。
王子の亡骸を前にしても折れない主人公に謎の声は真実を話し出す。
呪いに蝕まれ、やがて昏睡状態に陥った王子だったがその心までは死んでいなかった。
だからこそ、その心だけをだけを取り出し、旅をさせることにした。止まっていた時間を動かすために……。
読者諸君はこの物語を読んでいて違和感を感じなかっただろうか。
主人公の記憶が王子殿下と理想を語り合ったシーンしか存在せず、幼い頃から知り合いだったガリカとの思い出や両親の顔すら知らないことを変に思わなかっただろうか。
それは主人公が作られた存在だから。
謎の声により生み出された主人公には過去がない。あの日、組織から密命を受けたのは、ガリカ1人……その時主人公は、まだ存在すらしてなかった。
少年にあるのは……いや、与えられたのは、王子を救う使命のための記憶だけ。
幼い日の王子との語らいだけ鮮明に覚えているのも、それ以外全く覚えていないのも、少年が生み出された存在ゆえ。
だが自分には何も無いと悲観することは無い。
記憶にある王子の言葉は、紛れもなく王子の言葉。
そして、少年が旅で得てきた思い出……積み重ねてきた友情は、信頼……そのすべてもまた本物。
あらゆる経験は、今日のためにあった。旅で得た力を、『もう1人の自分』と分かち合うために。
認めれば、よりつらい試練に直面するかもしれない。使命を捨て自由を望むのなら、終わりにすることもできる。
それでは今一度問おう……。
あなたは……いったい何者?
主人公の正体は王子の体から生まれ出た、世界を変えたいと望む意思。
世界を旅してまわる少年はまさに王子が夢見た『幻想』……主人公は王子がなりたい理想の姿そのもの。
不思議な声による導きと、何より王子自身の理想を捨てきれない意志の力によって、本の姿の『神器』を依代に、あたかもドラゴンのような『マグラで形作られた身体』が生み出され、王子の精神は新たな体を得て、別人の少年として別の人生を歩むことになったのだ。
主人公は奇しくも、王子が健在だったならば望んだであろう『世界を変える旅路』を辿ってゆく。
そしてその果てに主人公は全てを知り、精神は再び肉体を取り戻し、晴れて王子として復活を遂げることになる。
長年の呪いの果てに、瞼も開けらなくなり、もはや生きているとも言い難い様であったが……王子は『旅に出ていた』のだ。
もしも己が、世界の真実を足で見て回れる旅人であったならという幻想がただの幻想を超え、己を救う存在として動き……それが身体の元へと戻り、互いを補って、新たな自分になれた。
これまでの旅路は他でもない自分自身を取り戻す旅だったということ。
地下でありながら光の差し込む祈りの間はアーキタイプの力が覚醒する際に見たあの場所に似ているように見える。
もしかしたら主人公だけでなく、仲間たちも不思議な声によって導かれていたのかもしれない。主人公たちの旅路を見守る誰かによって……。
♝ 旧世界の真実と分かたれた8つの種族
王子として本来の体を手に入れた主人公には真実を知る権利がある。
グルデアは秘史の祭壇にある壁画とともに、醜悪で争いに滅んだ旧世界に隠されたこの世界の真実を語る。
エルダとは、いにしえの言葉で『古き者』を意味する。
遠い昔、郷を初めて訪れた外の者に名乗った仮の名……元の名は、『ニンゲン』。
かつてこの世界には種族は1つしか存在しなかった。皆が等しく『人間』であった。
ビルガ島で見た遺物の数々……旧世界の文明の利器は何一つ今の時代に残ってはいない。滅んだ理由は戦争。世界を一度終わらせるほどの。
きっかけはマグラの創造……即ち『魔法』を手にれたことだと伝わっている。
種族によって命の価値が定められ生まれながらに人生が決められる今の世界からすれば、優劣を決める種族差別がないのにかかわらず何故、自滅するまで争ったのか理解できないが……。
人が争うのに大層な理由など必要ない。
戦争の火種となったのは『正しさ』という見えないもの。
見えないものを巡って皆が焼かんとして、結果全てを焼き尽くす羽目になった。
正しさの母は『恐れ』だ。やがて世界は恐怖で満たされ、滅亡戦争に発展し……繁栄の時代は『旧世界』と成り果てた。
現在知られている『神器』や『ドラゴン』といったものは、大部分がこの戦争のための兵器として生み出された存在である。
いま種族として呼ばれているものは、戦争に勝つため人為的に、あるいは焼け野原を生き抜くため自然に、分かれた姿。
本来なら悠久の時がかかるはずの、種の変化。
それがマグラの作用で僅か数年で起きたのだ。
エルダ族とは旧世界人の生き残り。戦果を逃れ、種族の文化を経なかった末裔。
エルダ族の女王とクレマール族の王との子供である主人公は、旧世界と今の世界の、両方の血を引く存在…。
戦争の末期は、戦いのための魔法が、互いの恐怖で次々と暴走し、もはや破壊に留まらない、まさにこの世の地獄だったという──、マグラの暴走が生き物を凶暴化させ姿を変えるのはこの旅路で何度も見かけた。
そうニンゲンとは、滅亡戦争で引き起こされた巨大な魔法暴走により、恐化で変わり果ててしまったら旧世界の人間たちの成れの果て。
その名残りとして、いずれの個体にも人間の様々な身体部位と同じ形状が確認できる。
尋常の生き物ではないため生態があまりに不規則で、繁殖で増える個体もあれば、単体で数百年を生きる個体もあり、全貌はもはや誰にも分からない。
だが今の8つの種族が地に根付いた時、人々からニンゲンの名で呼ばれていたのはもはやエルダの人々ではなく、はびこる怪物の方だった。
ゆえに仮の名……『エルダ』を名乗り、今に至る。
旧世界は魔法を扱い損ねて滅んだ。つまり惺教が歴史を偽ってまで、魔道器を広めている理由──魔道器とは元々、魔法を縛るために生まれた道具。暴走を防ぎ、滅びを繰り返さないための『自戒の首輪』なのだ。
今や惺教は権利の蜜に濁ってしまったが、あれは元来『過ぎた魔法を自ら縛るべき』という善意の思想から生まれた信仰。
前王は、王子を護るためにこそ落胤の事実を伏せていたのに、お陰で却ってフォーデンが郷を攻撃し易くなってしまった訳だ。
とはいえ……今や主人公は、本来の姿を取り戻した。
周りの仲間は、種族も思想も様々だというのに、心は1つ。
今ならば、正しき王の道を進めるだろう。
種族が分かたれた今の世界で、互いを認め合いながら進む道を。
♝ 恐れも不安もない まっすぐにつづいた道の先にあるのは
人をニンゲンに変えてしまう禁断の秘術……言い換えれば、相手のマグラを暴走させる魔法。
魔法の真髄は、マグラを御すること。だが制御することができるのなら、逆にわざと暴走させることだってできるということ。
ルイのが主人公にやったのは「そういう」こと。
主人公の魔力を無理やり暴走させ、『恐化』させた……古の戦争でニンゲンが生まれように。
いつの時代も同じこと。人は恐れ、『不安』にかられ、苦しむが故に、魔法という力も生まれる。
マグラとは、不安や恐れを感じた時にだけ心臓から湧き出る神秘の粒子のこと。それを燃やして力に変える技こそが魔法。
誰しも心に不安が生じればこそ、乗り越えようとして力が湧く。
そんな当たり前こそが魔法、不安は消せない、あっても良いものなのだ。
しかし言い換えれば、より強い不安や恐れを抱く者からはより多くのマグラが生まれる。
その時に向き合えるだけの意志が無ければ、持て余されたマグラは魔法に昇華されず、予期せぬ現象を生むこともある。
元をたどれば、全ての民が人間の末裔。
ルイがその気になれば、誰でもニンゲンすることができる。しかし逆を言えば、恐れと向き合える心さえあれば、立ち向かえないものでもない。
そして気になるのはルイはどうやってニンゲンに関する知識や秘術について知り得たのか……。
実は焼き討ちされた古仙郷の旧家のなかに、『カラドリウス』という一族がいた。
医者の一門であったらしい。人々の病と向き合うため、くだんの秘術と似た分野のことを調べていたようだ。もっとも、焼けてしまって詳しい事はもう分からないが……ルイが縁者ならば、いろいろ知り得たかもしれない。
人をたちまちニンゲンにするような強い術を、そうそう大勢には使えない。
しかし、それを可能とするだけの動悸があるのだとすれば……『憎悪』しかないだろう。
ルイが本当に郷の出身であれば、焼き討ちで理不尽に全てを失ったわけだ、代償を求めていてもおかしくはない。
望む姿を得るのではなく、望まぬものに変える魔法……アーキタイプの対極とも言うべき外法…。
ルイが古仙郷に縁ある事、マグラとニンゲンの正体。驚きの余韻も束の間、王子を襲った暗殺者が再び現れる。
#7-3へ続く……