【なぜ海洋ごみ回収技術開発に取り組むのか】今までの失敗と現在地とこれからの挑戦について
いま私はクリーンオーシャンアンサンブルという非営利団体をやっていまして、これから海洋ごみ問題解決につながる団体としてもっと大きくしていきたいと思っています。
そこで海岸ではない海上・海中の海洋ごみ回収技術開発に力を入れているのですが、いろんなアプローチがある中で「なぜ海洋ごみ回収技術開発をしているんですか?」とか「回収技術からどうやって海洋ごみ問題解決につなげていくんですか?」と聞かれます。
まだ私たちは志半ばで、成功もしていません。過去を振り返るようなフェーズではないのですが、メンターから「今のままだと何もできずに失敗するよ」と厳しくも優しい言葉を頂いたので、今まで動いてきた失敗の歴史と現在地のストーリーをnoteにまとめてみようと思った次第です。
私は、何か飛び抜けた才能があるわけではない、凡人です。
そんな私がどのように非営利のスタートアップを立ち上げ、どんなことを成し遂げたいと思っているのか?せっかくなので、少しでも私の話が偶然読んでくれた方のヒントになったらいいなと思います。
立ち上げ0年目はアフリカから
立ち上げ前、私はJICA海外協力隊で西アフリカのブルキナファソで廃棄物関係の活動をしていました。
ブルキナファソはインフラや社会システムが整っていない途上国で、何もないからこそ、自分の挑戦を形に変えることができやすい環境でした。
社会のためになりそうなアイディアを思いついては実行してを繰り返していました。
アフリカ生活は病気になったりと大変ではあったのですが、優しい人も多くて何だかんだで楽しかったんですよね。近所の人や同僚とよく飲みに行ったりしていました。気が合う上司や友人もでき、アフリカ生活をエンジョイしていました。
「個人では社会を変えることはできない」と悟る
ただ、1年ほど活動をしていると悟るのです。
「個人では社会を変えることはできないな…」と。
私はインフラがないなら作ろうと意気込んで仲間と共に穴を掘って、街の処分場の必要性をプレゼンして訴えかけましたが、結局実現できませんでした。
社会を変えるには個人ではなく組織でやらなくてはいけない。
帰国前に何も成し遂げられなかったという悔しさを抱きつつ、ある日 The Ocean Clean Upの記事を読みました。
同世代の人でも組織として社会を変えようとする事例があることを知りました。
本当にやりたいことに気づいたコロナ禍
JICA海外協力隊の任期を終え、国際的なキャリアに進もうと考えていた最中、新型コロナウィルスによるパンデミックが起きました。
当時アフリカにいた私はコロナ禍で緊急帰国することになりました。
この時、「世界はいつ何が起こるかわからない。人生で本当にやりたいことって何だっけ?」と考え込んでいました。
バックパッカーやヒッチハイカーで世界中を旅した時に見た汚れた景色。
アフリカでの活動。The Ocean Clean Upの事例が心に浮かんできました。
「やっぱり世界の廃棄物問題解決に挑戦しないと後悔するな」と思い、
私はJICA海外協力隊で知り合った仲間を集めて、The Ocean Clean Upのような海洋ごみ問題に対して実践的な挑戦をするNPO法人を立ち上げました。
NPOってどうやって稼ぐの?
いきなり海洋ごみ問題に挑戦するといっても何か準備をしていたわけではありません。
NPO設立に必要だった10人の立ち上げメンバーは、名前だけのような人がほとんどで実質1人でスタートしました。
起業したはいいものの、どうやって収入を確保するかは決まっていませんでした。とにかく「The Ocean Clean Upのような前衛的な何かを始めたくて起業した」という感じだったのです。
私は「日本でThe Ocean Clean Upのような活動ができるところはどこだろう」とネットで調べるところから始めました。
その結果、回収海洋ごみの処理システムがある香川県が候補に上がってきました。
そこから海上活動のために香川県の漁協に電話をすることにしました。
何件か断られながらも、小豆島の漁協の組合長と出会い、一緒に海洋ごみ問題解決に向けて協力していただけることになりました。
その時の心境は「よし、やってやるぞ!!」と思っていました。
ただ実際は……稼ぐ見込みがないのでNPOを立ち上げたはいいものの、NPOの資金調達もよくわからず、2年くらいは自己資金を切り崩しながら、NPOの稼ぎ方や運営を学んでいました。
結局、起業して2年間でやったことはビーチクリーンや学校での出前授業でThe Ocean Clean Upのような活動とは程遠い状態でした。
0からThe Ocean Clean Up に近づいていく
小豆島のオフィスは空き家。
小豆島に引っ越してきて、最初の晩御飯は近所の人にもらったきゅうり1本とトマト1個を食べただけでした。
当初、ビーチクリーンと学校での出前授業で地元関係者との信頼関係を築くことしかできず、助成金も一件も採択されず、ボツになった申請書の山ができただけでした。
無計画にも程がある……。
3年目にして、The Ocean Clean Upの活動に全く近づけていない現状から「流石にこれは続けていけないな」と思い、1年で何も変えられなかったら辞めようと、もっとがむしゃらにやる覚悟を決めました。
応募できる助成金は全て応募し、ようやくLUSH JAPANの助成金に採択され、クラウドファンディングもやって、団体の船や車を購入しました。
2年間のビーチクリーン活動から海洋ごみが溜まる海岸と溜まらない海岸があることに気づき、溜まる海岸の前にThe Ocean Clean Upのような回収装置を置いたら海上の海洋ごみの大量回収ができると構想を練り始めました。
事実として海岸に打ち上がっているごみよりも海上・海中に放置されている海洋ごみの方が約3倍以上多いため、この回収技術を確立できたら今まで放置されていた海洋ごみの回収量を上げることができる希望の技術になると考え、漁師さんに弟子入りし漁具の修理方法を学び、The Ocean Clean Upにコンタクトしたり、大学に問い合わせたりしながら回収装置製作を開始しました。
漁師さんに頭を下げ続け、何とか回収装置を実証実験できるところまでいきましたが、3回失敗しました。
仮説や設計が未熟でも、実績もない私たちは挑戦の姿勢を見せることで、ちょっとずつ信頼を獲得していくしかなかったのです。
心が折れては立ち上がりを繰り返し、改善しながら、少しずつ仲間を増やしていきました。
4回目にしてようやく小さな成功をする
そして、4回目にしてようやく約1.5Kgの回収に成功しました。
喜びも束の間、すぐにメンターに報告すると「今のままだと何もできずに失敗するよ」と厳しくも優しい言葉を頂き、再び絶望期に入りました。
確かに、これを横展開したり実用化するにはまだまだ遠い道のりがあり、今のまま活動を進めていても、何も成し遂げられない。
3年やってきて、自分達だけでは海洋ごみ回収装置の実用化まで届かなかったという事実を受け止め、今までのやり方を変えなくてはいけません。
「ビーチクリーンでは回収できない海上・海底の海洋ごみ回収をボランティアではなく、仕事として持続可能な形でできるようにしたい」
世界的な海洋ごみ回収活動を行っているオランダNPO The Ocean Clean Upや宇宙ごみの除去サービスの企業アストロスケールを参考にしていましたが、私はBoyan Slat CEOのようなカリスマ性があるわけでもなく、岡田光信社長のような経営の天才でもありません。
今一度、戦略や人生を見つめ直す時がきました。
自分達の回収装置は先行事例と比べてどこのポジションを目指しているのか。
どうやってコストパフォーマンスを上げるのか。
装置を自前で作るのがいいのか、外注するべきなのか。
そもそも回収装置開発ではなく、回収量を上げられる仕組み作り構築なのか。
必要な資金はどうやって調達するのか。
法人形態はNPOなのか、株式会社にするべきなのか。
巻き込むべき人をどうやって巻き込むのか。
継続するための事業計画やビジネスモデルはどうするのか。
この活動を通して、自分や関わってくれてる人の人生をどうしていきたいのか。
考えなくてはいけない問いや、自分ではよくわからず放置していた問いもあります。
足りない能力は、想いの強さと行動量でカバーしてこようと思ってやってきましたが、それでは突破できない壁にぶち当たっています。
私は大金持ちになりたくて始めた訳ではありません。
しかし、社会の仕組みや問題の規模を考えると大型の資金調達を考えなくてはいけません。
今まで資金調達のためのストーリーとロジックを詰めらてこなかったのは、私の地頭の悪さと数字での落とし込みや調査が足りなかったからです。
自身のレベルアップと自分ではできないことができる人をもっと巻き込まなくてはいけない、辛い、苦しい、やめた方がいいとか、そもそも自分には挑戦する器が足りなかったとか思う時もあります。
しかし、普通だったら採算合わないからやらない分野でも、誰かが無理して始めなくてはいけないなら誰かがやるべきだし、そもそも無理にならない仕組み作りが必要だと思っています。
純粋にこのまま放置していい問題ではない、次世代に綺麗な海を残したいという想いは変わっていません。
もう一度、戦略と行動計画をじっくりと考え、実現するための要素をどんどん細分化していきたいと思います。
私たちは、まだまだ道半ばです。「The Ocean Clean Upのような前衛的な活動や持続可能なサービスを創る」ためには、同じ志を持つ仲間が必要です。
少しでも協力したいと興味をもっていただけたらお気軽にご連絡ください!
https://lit.link/npocleanoceanensemble