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【NFL】兄弟対決が実現するとなぜかみんな興奮する

「家族同士で争う」と書けば、いわゆる "骨肉の争い" が想起されるところではあるが、スポーツではそれとは違う感じで受け止められる。争うといっても縄張りや継承戦争みたいに死体が転がるものとは違うからだ。

だから、まあ、球場の外で起きていることに目をつぶりさえすれば「平和だねぇ」ということになる。今回は兄弟同士のマッチアップが実現した。たまには平和な話をするか。

スコアはこれだ。

ユー・ハフ・トゥ・チューズ・ウィッチ・サイド・トゥ・スタンド・オン

ランボー・フィールド (Lambeau Field) に雨が降っている。この球場への降水はフットボールの季節ではだいたい雨を通り越して雪になるので、ちょっと珍しい気がする。満員の観客たちの服装も冬仕様かそれともまだ秋の感じでいくかの迷いを感じさせる模様になっており、時節のうつろいを感じさせる試合となった。
といっても気温はすでに 49°F (9.4°C)。僕ならコートも帽子もマフラーも着けている温度帯なのでシャツ一枚のやつとか見るとギョッとするけど、まぁ個人差はあるよな。どこまで下がっても裸のオッサンは必ずどこかにいるし。

日本でいうと北海道――一年中いちねんじゅう冬が続く島――の北のほうの緯度になるこの球場は、こういう立地環境だから芝生もパーフェクトとはいかず、何も考えずに普段の装備で遠征に訪れるととんでもないことになる。

それを知らないはずはないが、カーディナルス (Arizona Cardinals) の選手は足元を滑らせまくった。
HB が滑ってパスを受けそこねたと思えば、パントしたボールを捕った選手が勢い余ってエンドゾーンに入ってしまうし、パスラッシュもなかなかラヴ (Jordan Alexander LOVE; #10 QB) までたどり着かない。問題があるのは明らかだった。そして、このゲームは誤ったクリーツを履いたままできるようなものではない。

先発 WR をふたり欠いた前週でもパスターゲットに不自由しなかったパッカーズ (Green Bay Packers) にそのふたりが帰ってきて、なおかつパスラッシュがろくにこないとなれば、大量得点にいたっても不思議はないだろう。
グリーンベイはアリゾナが足元の悪さと反則に溺れているところを無慈悲に叩いて、前半残り 4 分半までに 24–0 と木っ端微塵にしてしまった。アナヤ!

しかし、事実上 4 ポゼッション差だからこりゃもう観ていなくても大丈夫かと思ってニコニコしていたら、そのすぐ後、ターゲットになった瞬間にボー・メルトン (Miles Bokeem MELTON; #80 WR) の足が滑ってマーフィー=バンティング (Sean MURPHY-BUNTING; #23 CB) へのインターセプションが発生。前半が終わったら 24–10 まで差が縮まっていた。しかも後半はカーディナルスの攻撃から始まる。
まことにスポンサーと客に配慮ができる、プロスポーツチームの鑑であるな。いや本当にこういうのいらないから……。

ところでそのメルトンだが、さっき書いた兄弟対決の主役である。グリーンベイにいるボーが兄で、アリゾナのルーキーであるマックス (Malachi "Max" MELTON; #16 CB) が弟になる。
ふたりは異なるチームに所属して同じ試合に臨んだだけでなく、WR と CB として同時にフィールドに立ち、しかも直接マッチアップしたのだ。ディグス兄弟 (Stefon/Trevon DIGGS) の例もあれどなかなか珍しい現象で、話題としても面白い。

彼らの家族も来ていたらしく、レプリカのジャージをキメラ状態にして着ているのが微笑ましい。どっちかに肩入れするのもなんだし、どういう心境で観たらいいのかは悩まされたことだろう……いや、そうでもないかな。僕が同じ立場ならたぶん「ふたりともケガしませんように」と何かに祈りながら観る。

WR と CB は激しすぎるプレイや煽り合いが起こりがちな組み合わせではあるが、幸いというべきか残念ながらというべきか、この争いは試合の大きな部分を占めなかったのもあって平穏に終わった。家族は一安心だったはずだ。

ケガといえば、この遊びはケガを避けるのは容易ではない。理解はしている。
しかし、4Q の始まったあたりでジョシュ・マイヤーズ (Joshua David MYERS; #71 C) が人混みの中で痛んでサイドラインに退いたのはかなり怖かった。幸運なことにスナップをいくつか見送っただけで戦列に復帰できたが、足首をクロスさせた胡座のような状態の膝の上に大男がふたり勢いよく倒れ込むのを見たときには正直いかんと思った。

それでも少し時間をおいたらスッと戻ってきたわけで、こういう理解しがたい場面を見るたび「やはりこいつらは人間ではない」という確信が、畏怖いふとともに新たになる。もっとも、人間ではないにしても誹謗中傷をするとやはり犯罪になる。クソ DM を送りつけるのはやめような。平和にやろうぜ、平和に(目をつぶりながら)。


追記

その他の雑記

  • 守備中、セットしているときに A-gap からふたり下がって空けておき、スナップと同時に「どっちが突っ込むか?」の二択に見せかけながら実際には両方入るというブリッツしびれたなぁ。もしかして守備良い?

  • ロミオ (Romeo Izziyh DOUBS; #87 WR) がタッチダウン・パスを捕った! それはいいのだがサイドラインに引き揚げたあともあからさまに表情がこわばっており「これ大丈夫? 見張っておいたほうがいいんじゃ?」と思わされる

  • ブレイデン・ナーヴィサン (Brayden NARVESON; #44 K)、通常運転44 ヤードをミス。外してもみんな驚かないので、そろそろ本格的にヤベェ気がする

  • エルトン (Elgton Torrance JENKINS Jr.; #74 OL) がセンターに入るところが久々に見られた。ちょっと嬉しい。タックルとガードとセンターを全部こなせる器用な選手で、僕のお気に入りだ

  • 酒の名前と同じエヴァン・ウィリアムス (Evan WILLIAMS; #33 S) が凄いプレイを見せた。相手の上段からボールを狙って敢然とパンチしたのも凄かったが、やはりマーレイ (Kyler Cole MURRAY; #1 QB) をひとりで止めてしまったこのプレイだろう



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