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【NFL】やっぱダメかこの緑色のチーム…

よう、元気か? 最近はフィールドの外に目を向けると、陰謀論者とカルトの信者が世界中の道にあふれているのが見えてめまいがするけど、まぁきょうのところはソルジャー・フィールド (Soldier Field) での試合を振り返ろう。

オール・イズ・サイオー・ホース・ワンス・サムワン・トールド・ユー

その前に、われらがグリーンベイ・パッカーズ (Green Bay Packers) はどのような状況でこの 11 週目に入ったかを説明しよう。

位置は 6 勝 3 敗で地区 3 位、先週はバイ (bye)、その間に同地区の上位 2 チームは理解できない内容で勝ちを拾ってまた差を広げている。
ファンベースでは 11 週以降の予定を見て「まぁ全部で 11 勝してプレイオフいけるんじゃないかな?」がちょっと楽観的な予想で、強気のものだと「いいや 12 勝するぞ」、個人的にはこのままだと 10 勝くらいじゃないかと思っている。

悲観的なものから願望的なものまで幅広くあるわけだが、じつはこれらの予想には大事な共通点がある。
それは「ベアーズからは絶対 2 勝」という前提である。

「ここの試合はツラい」とか「チャンスはある」とかあれこれいいながら、シカゴ (Chicago Bears) についてはわざわざ言及しない。誰も勝ちを疑っていないのだ。ハハハ。
スゴイ・シツレイを感じるかもしれない。でもまぁ、しょうがない。グリーンベイとシカゴとのライヴァルリーは NFL の歴史の中でもっとも長く、かつもっとも拮抗してきたそれであるものの、近年は非常に一方的だから。もちろん、たまたま現在はそういう時代であるってだけだ。

そういうわけで、実はこの遠征はグリーンベイにとってはエッヂに乗っている。バイ・ウィーク明けで用意も十分であるはずのこの試合を落とすようなことがあれば、見立ては前提から完全にくつがえる。もちろん、プレイオフなど望むべくもない。シーズンは屈辱で終わり、コーチはクビだろう……まっ、でもそんなわけないって。ニュー・イングランド (New England Patriots) にボコられたチームだぜ。観る前から飲んでいたって大丈夫だ。

スコアはこれだ。

先にボールを得たパッカーズは、自陣 30 ヤード地点からいつものようにラッシュを軸に攻撃を展開。3rd ダウンを迎えることなくシカゴ陣 15 ヤードまで到達すると、交替しようとした DT がサイドラインに逃げ遅れるのをラヴ (Jordan Alexander LOVE; #10 QB) が見逃さない。

素早いスナップを要求するとディフェンスが員数超過となり反則、目の前に流れてきたジェイデン・リード (Jayden Kevon REED; #11 WR) にノーリスクで投げてタッチダウン。なんたる状況判断! 冷静に周囲を見られるのは余裕のある証で、諸手もろでを挙げて歓迎できる変化だ。
素晴らしいドライヴヤッター! このバンザイの手が下がるのはいつだろうか? 答:「ふたつ後のドライヴ」。

もろにオープンになっているのを見逃したり、ドロップしたり、わざわざ難しそうなところへ投げ込んだりと、パッカーズオフェンスのいつもの要素を潤沢じゅんたくに取り入れたドライヴは、エンドゾーン手前で 6'5'' の巨人であるタッカー・クラフト (Tucker KRAFT; #85 TE) でも届かない高さに投げることによってインターセプションとして仕上がった。捕ったのはテレル・スミス (Terell SMITH; #32 CB)、これが NFL で初めてのピックとなった。クラフトもいちおう捕ろうとはしたものの、あまりの高さに「あれ? これ俺のじゃないかも?」とちょっと手を出すのを躊躇ちゅうちょしたように見えた。

これによって「シーズン開幕以降のすべての先発試合でひとつ以上のインターセプション」の連続記録は 8 に伸び、1944 年以来の大記録となったという。ちなみに 1944 年とは「レシーヴァーが走るルートを事前に決める」という、現代フットボールのいしずえとなる発明をした伝説の選手であるドン・ハトソン (Donald Montgomery HUTSON; #14) がまだ現役だったころだ。われわれの QB はまったく規格外であるな。

一方でディフェンスのほうはそこそこだったものの、目立ったのはベアーズ側のアサインメントの間違いでブロックされないまま突っ込んだブレントン・コックス (Brenton Alexander COX Jr.; #57 DE) くらいで、ウィリアムス (Caleb Sequan WILLIAMS; #18 QB) が繰り返すスクランブルにはほとんど対策がないように映った。まぁいずれは投げるからそこで仕留めれば十分、くらいの気持ちだったのだろうか。実際、凄いパスが飛ぶわけではないが、あまりにも無策すぎて好きなように出されたのはいただけなかった。

ちなみにこの試合の前にシカゴは OC を解任しており、その結果として早いタイミングで出すパスと QB キープを軸にする変更がなされた。そのためポケットにかかるプレッシャーは減って、ある程度の結果は出たともいえる。
しかし、それをやりたいなら前任者のフィールズ (Justin Skyler FIELDS; #1 #2 QB) でも十分に可能だった——というか、むしろより適していた気がする——わけで、大局的な戦略としてはまたいつものようにベアーズは失敗したのではなかろうか、との指摘はいちおうしておこう。ディスを忘れないファンのかがみだ。

その差 6 点を追って後半のドライヴを始めるパッカーズの頼みのつなはジェイコブス (Joshua Cordell JACOBS; #8 HB) だ。この男にボールを渡して走らせ、短いパスを投げてまた走らせる。このドライヴではタッチダウンも記録し、最終的にはもっとも多く持って走った(18)だけでなく、もっとも多くパスのターゲットになった(5)。負けたら終わりのプレイオフ・モードを思わせる記録だ。

プレイオフ・モードに入ったグリーンベイのポンコツ具合は、他のチームと一線をかくす。
パッカーズ陣 44 ヤード地点で 2nd & 15 と止まりかけたベアーズの攻撃をニュートラル・ゾーン・インフラクション (Neutral Zone Infraction) で助けて再逆転となるタッチダウンに導くと、直後の攻撃でベアーズ陣 8 ヤード地点からの 1st & Goal をなぜか 4 ダウンまで突っ張って失敗。「14―19 の 5 点差だから、蹴って 2 点差にしてもタッチダウンを取られたら結局 2 ポゼッション差になる」という理屈はわからなくもないが、それにしたってまだ試合時間は 11 分もあった。個人的にはちょっと支持しない選択だった。

そしてさらに不可解だったのは、ワトソン (Christian WATSON; #9 WR) がまた信じられないキャッチを見せて個人で 150 ヤードに到達した直後のプレイだ。いや、4 回しかターゲットになっていないのに 150 も不可解ではあるが、そこではない。

残り時間 3 分 12 秒。ドロップバックしたラヴは敵陣 24 ヤード地点からスクランブルすると、がら空きのダウンフィールドを突進していきダウンを更新。残り 3 ヤード地点でヒットを受けると、フィールドの外へはじき出されながらも右側のパイロンに向かってボールを持った腕を伸ばした。このパイロンの上をボールが空過すればタッチダウンだ。
判定は……ノー! 残り 1 フットあるかないかの地点でデッドとなった。残り 3 分 2 秒。このわずか 1 フットを進めばまたまた逆転だ。ただし、残り時間がかなりある。懸念はそこだ。それをどう守るか……。

笛が鳴る。なんだ?と思ったら、赤い雑巾を投げ入れているやつがいる。……あれはパッカーズの HC じゃないか。えっ、チャレンジ? 何に?
え!? 「あれはタッチダウンだ」ってチャレンジしてんの!?

これが本当にいかようにも理解できない選択であった。
いずれにしてもタッチダウンは取るものとして、その後のベアーズの攻撃をしのがなければいけないのだから、残り時間は 1 秒でも少ないほうが良い。あるいは、もし再逆転されて残り時間わずかでボールを得たときのことを想像すれば、タイムアウト 1 個はおそろしく重要だ。だから、このチャレンジが失敗したときの費用と便益を天秤に載せれば、100% の確信がなければやるべきではなかったし、確信があってもやらないのが普通だろう。「私は、自分が率いているチームは 1 フット進めることもおぼつかないと感じています」と宣言するようなものだ。

判定は覆らず(僕は正しい判定だったと思う)、とくに時間を消費することもなく次のスナップでタッチダウンになったため、このチャレンジは貴重な時間を相手に与え、こちらはタイムアウトを 1 個失うという二重の損失に終わった。バカげている。世が世ならセプクではなかろうか。

同地区のほかの 2 チームはいずれも勝っている。この試合で負けたほうはひとり負けの苦しみを引きずって一週間を過ごす。

グリーンベイが当たり前のように 2 ポイントを失敗して 1 点差にとどまると、後のないウィリアムスは連続サックにもめげず、フィールド・ゴールの届く地点を目指してこの日の最高のパスを連発。うーん、これはフィールズではできなかったかもしれない。
そしてあれよあれよという間にグリーンベイ 28 ヤード地点に到達。あ~、もう射程圏内だ。ここから蹴ると距離は 46 ヤード、NFL での成功率は平均するとおよそ 7 割強だ。残り 3 秒だから反撃の時間はない。カイロー (Cairo Fernandes SANTOS; #8 K) は去年も 50+ ヤードを 7/8 で成功させるなど、キックの名手だ。

ん~~……要するに……認めたくないが……負けになった。ベアーズ相手に負けだ! クソ!
それは先に述べたように、ただの負けにとどまらずシーズンも実質的に終わったことを意味する。できることはもはや、急に風が吹いてボールがれるよう祈るくらいしか残っていない。なんとか曲がってアップライトに当たんねーかな。なんなら、アップライトが曲がってボールを蹴ってくれてもいい。

←蹴る前 蹴った後→

そんな感じでぼーっと眺めていたので、その瞬間に何がどうなったのか瞬時に把握できず、喜ぶのに手間取った。……えっ、何? 外れたのか? マジ?
現地はあまりの出来事にリプレイをすぐにスクリーンに映さず、詰めかけたほぼ満員のファンにさらなる打撃を与えることを控えた。

しかしモニタの前のわれわれはリプレイを観ることができた……なんてこったOH YOUR GOODNESS! そこにはシカゴのサヨナラ勝ちとなるはずの軌道でボールが飛ぶところを、そして、ワォ! ラインを割って突入したカール・ブルックス (Karl Dermarad BROOKS; #94 DE) が伸ばした左手がボールをかすめて遮るところを映していた!
この信じがたいブロックによって、シカゴによる 2018 年以来のグリーンベイに対する勝利はまたもお預けとなった。それから……イエス! ベアーズはTHE BEARSやっぱりSTILLクソだSUCKな!!

ひとしきり騒いだ後から気がついたのは「最後のスナップのときにタイムアウトを持っていなくて良かったかもなぁ~」ということだ。
まぁ持っていても途中で使っていたかもしれないけれども、もし 1 個残っていたら、スナップの直前に嫌がらせのために使った可能性がある。仮にそこで実際の試合と同じように進んだときには、ブロックされたのを見て驚いたサントスが「もう少し高く蹴ろう」と修正を試みたに違いないからだ。

おかしなことも、どこかで良いことに繋がる場合はある。そう信じて、もう少し見てみようか。


雑記

  • ほぼ走らないくせに 17 回しかパスを投げていないと思ったら、そもそもスナップが 43 回しかない。細かいアチーヴメントのアンロックに余念がないチームである

  • ワトソンが個人技を見せて爆発。脚が爆発しないことを祈る

  • シカゴの HB が明らかにスナップ前に動いたのをシカトした判定についてはリーグに問い合わせるらしい


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