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【NFL】サンクスギヴィングとは何か?
サンクスギヴィング (Thanksgiving) は地域によって日付が異なる。早い地域では 10 月の第 1 週にはやってくるのに対し、11 月の終わりになる場所もある。
国によってはそもそもやってこないので、緯度や経度が関係しているように思われる。ハズレのビンゴ・カードのようなもので、いくら待ってもないものはない。
ギヴ (give) とは英語で「何かを与える」ことであり、ギヴィング (giving) はその行為を示す言葉である。また、サンクス (thanks) は謝意を伝える言葉だ。
人間は、誰かに借りを作ると「お返しをしたほうがいいだろう」という心理状態になり、それに沿って行動する傾向があるとされている。身近な例としては、余った具材を多めに乗せてくれるラーメン屋に足が向きがち、管理者が退職する際に自作のマクロを削除しがち、などが挙げられる。これを返報性の原理という。
そこで一種のライフハックとして、人から何かをもらった (give) ときにお礼 (thanks) をいっておくと、感謝の念という実態のないものを示唆しただけに過ぎないにもかかわらず、この心理を解消できる。それどころか、贈ってくれた相手が気を良くしてまたなにかもらえる場合まである。ノーリスクでリターンが得られうるこのありがたい経験則は、いつしか祭の体裁をなし "恵みに感謝の日" となった。これが「サンクスギヴィング」である。
もっとも、人間は水や空気といったエッセンシャルな存在たちにすら感謝するどころか汚染を押し付けている様子からわかるとおり、このくだりは明らかに嘘とわかろうからあえて注意を喚起しない。
ゼア・イズ・アト・リースト・ワン・マン(ネイキッド・イン・ザ・スノウ)
NFL には基本的に強欲で非道な者しかおらず、感謝とは縁遠い世界に思える。その証拠に、ひとたびファーストダウンを更新すれば二度三度と繰り返そうとするし、ボールを奪ったら二度三度と奪う機会をうかがって襲いくる暴漢であふれているのだ。
なかには「高額の年俸を得たうえ勝利まで欲しがるのは卑しい」と考えているのか、相手チームに積極的に勝ちを譲る QB などもいるにはいるが、そのような例外ですら、あくまでフィールド上では慎み深いというだけで、およそ真っ当な人物ではない。
そういうわけだから彼らが何に感謝するつもりかは推し量れないものの、サンクスギヴィングにも試合は行われる。
北アメリカではサンクスギヴィングは第 4 木曜と設定されているため、必然的に木曜の試合になり、たいてい日曜には試合があるため準備にかけられる時間が短い。体力的にもいつもより大変なはずだ。
それを労うつもりかどうか、この試合では勝つと焼いた七面鳥がもらえる。勝ってもなぜかもらえない場合もあるが、ふだんから食べている者がいない事実からわかるとおり、たいした味ではないので食べそびれても不満の声は出ない。
パッカーズ (Green Bay Packers) は雪のチラつく本拠地にドルフィンズ (Miami Dolphins) を迎えた。気温は 26°F(体感は 15°F[=-9.4°C])、ふだん温暖な地域で試合をするマイアミにとっては中 3 日、アウェイとあわせて三重苦だ。もし試合にまで敗れるようなことになると、プレイオフがかなり遠のくうえ、この町には飲むための店がないこともあわせて五重の苦しみに苛まれる。
コイントスに勝って後半を選択したマイアミは最初のパッカーズの攻撃を素早く 3 & out に仕留め、さぁ行くぞ、というところだったが、ウィーラン (Daniel WHELAN; #19 P) が蹴り上げたボールを風か寒さかリターナーがお手玉。
芝生に転がり落ちたところをパッカーのロバート・ロシェル (Robert ROCHELL; #22 CB) が 9 ヤード地点で押さえてしまい、ラヴ (Jordan Alexander LOVE; #10 QB) による完璧なパスによるタッチダウンをお膳立て。いきなり疲れの出る開幕となった。
出端をくじかれたマイアミが最初の攻撃を反則の繰り返しで停滞させたのに対し、グリーンベイは次のドライヴをジェイコブス (Joshua Cordell JACOBS; #8 HB) とエマニュエル・ウィルソン (Emanuel Dashae WILSON; #31 HB) によるワンツーパンチで仕上げて 14 点差。
ラヴのパスもいつもと比べると好調で、次々とケガ人を出して進退窮まるマイアミを尻目に Q2 にもタッチダウンを挙げるなど前半だけで 24–3 と容赦がない。ジョージア州 (Georgia) でもなければ 30 分ではまず埋まらない点差になった。
こういうことだ。一発のマフから試合は傾き、ドルフィンズは辛く険しい展開に陥った。左右の頬を差し出したら顎を蹴られて財布を奪われる。サツバツ! これが NFL だ。カンシャってなんだ? 薬の名前か?
試合を通じてグリーンベイはソフトな守備隊形が多く、"トゥア"・タゴヴァイローア (Tuanigamanuolepola Donny TAGOVAILOA; #1 QB) は距離的にはかなり投げることができた。
しかし 3rd ダウンでは 4/14、4th ダウンでも 3/5 の成功にとどまるなど、ここぞの場面ではパッカーズのディフェンスが冴えた。ただ、よその試合ではさっぱり目立たないヴァン=ネス (Lukas VAN NESS; #90 DE) が活躍したくらいだから、ちょっとその……なんだ、あー……アレだな。
しかし、「オフェンス、ディフェンス、スペシャルの 3 つのチームがいずれも勝利を得た」——こう書いてみると、なんだか本当にこのチームは強いような気がしてくる。先週の試合と並行して今週の研究も頑張って進めたらしく、全体としても充実感ある勝利になったのではないだろうか。コップに汲んだ一杯の水でも 4 種類の見え方があるのだ。
こちらとしても展開が楽勝だったこともあってリラックスして面白く観られたし、リロイ (LeRoy BUTLER III; #36) がかいがいしく七面鳥を用意している姿なんかもちょっと楽しいものがあった。
まぁこの町で本当に面白いのは、観客 8 万人が入るクソデカ球場から通りをひとつ挟んだら一般の民家が立ち並んでいる、という驚きの繁華具合かもしれないけど。
とどのつまり、謝意の宛先はやはりこのフランチャイズと一体化したコミュニティということになろう。であれば、そろそろトロフィーのひとつも持って帰ってくるのが義理というものではないかな。
雑記
ラヴは 1 試合 1 発のノルマをまたしても回避。なぜ寒く悪い環境になったら成績が上がるのか謎だ
コーリー・バレンタイン (Corey BALLENTINE; #26 CB) がオープニングでいきなり負傷退場。もとから薄いコーナーがさらに薄みを増した(?)が、ハフリー (Jeff HAFLEY; DC) は乗り切ってみせた。すげーなあいつ
パスをディフレクトしたらボールが浮き、別のレシーヴァーのところへ飛んでしまってタッチダウンに。僅差では避けてほしい
素晴らしい働きを見せたロシェルについての記事が公式から出ていた
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