できないこと
僕が生まれた青森県の八戸市に、ピエロ洋菓子店というケーキ屋さんがあります。小さい頃はそこでソフトクリームを売っていて、焼き菓子の美味しさ、よりもソフトクリームが美味しいのでそこに行きたい、という感じでした。おばあちゃんがよく連れて行ってくれていました。
気づいた時にはソフトクリームや喫茶は無くなっていて、焼き菓子と洋菓子に力を入れた専門店となっていました。
地名を冠した「ゆりの木通り」というチーズブッセと、ダックワーズが美味しくて、今でもそればかり買っていますし、実際にそれを超えるものになかなか出会えません。
こういうのはノスタルジーによる加工、思い出補正がかかるので、新参の商品が後追いするのはかなり難しく、仕方のないことではありますが、なるべくフェアに味だけを見てもなかなかチャンピオンの座を奪えないのです。
でダックワーズ好きだなぁと思っているところにちょうど焼き菓子での出店のお話が舞い込んできたので、これを機にダックワーズを作ってみようかな、となりました。(既存の商品を作るのに飽きた)
ダックワーズは専用の型が必要でして、もちろん無造作に絞って焼いてもいいし、型を自作することもできるのですが、せっかくなので新しいものを購入することにしました。形から入るタイプです。
基本的にダックワーズは卵白とアーモンド、砂糖の比率がある程度決まっているのですが、もちろん変更してもいいし、あとは厚みによっても焼き方の加減が変わってくるのでとても難しい(面白い)です。間に挟むアーモンドのバタークリームも、それほど違いが出るものではないのですが、卵を使うか使わないか、などで解釈がだいぶ変わるので、そこも面白いです。
今回は出展のために焼くという、そもそもの目的がありましたので、卵を使わず、長く楽しめるほうがいいかなと思っています。
さて。
僕は例えば、「フランスのパティスリーで修行をしてきました」みたいなタイプではないですし、現場での下積や学校での講座が全てで、焼き菓子屋をやっていた時も10坪くらいでたくさん商品があったわけでもありません。
ですから「習わなかった菓子は作れない」のです。全てに精通しているわけでないのです。
ですから焼き菓子屋のときに商品化したくて独自に修練した焼き菓子は多いです。
(チュイールとか。艶出しのナパージュも自作していました)
そういえば、僕が最初にお菓子を作ろうと思ったのは20歳くらいのときに友達が、オカラで作ったクッキーをプレゼントしてくれたのがきっかけです。
クッキーってオカラで作れるんだ、ヘルシーだし、安上がりっぽいし、面白いなぁ、という具合。
ところが作ってみようとしても、そのころはレシピ本やネットのレシピをみてもサッパリ意味が分からずにクッキーひとつ作るのも一苦労。
最初は煎餅のようなガリッとしたものができまして、それもいい思い出です。
ですが今は(どんなものでもいいのですが)レシピを一通り読むだけで、形になるところまではいけます。味の調整は必要だとしても。
球技の得意な人がある程度ほとんどの球技をこなせるのと同じで、要点を掴んでいれば、基本のレシピで忠実に作ることはそれほど難しくはありません。
今は今で再現性の高さが面白いと思いますが、昔は昔で、未知のものに挑戦することの楽しさがあったなと思います。
「できない」は「楽しい」のです。無邪気さが、いいですね。