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八十八夜の別れ霜
今年の軽井沢の冬は寒かった。
日陰になる畑は1月から3月までずっと雪に埋もれていたし、バラは何本もの枝が凍みてダメになってしまった。
そして4月中旬ころに、冬を土間で越して、そろそろと思い外に出したアロマティカスとレモンバーベナは、4月下旬の遅霜にやられてしまった。
寒いところで植物を育てること、軽井沢にきて3年目だがまだまだ慣れないことが多い。
最近、こんな言葉を知った。
「八十八夜の別れ霜」
立春から88日目、5月2日ごろになると霜が降りる日が減り、農作業に適した時期であることを指す言葉。
八十八夜といえば小学校で習った「茶摘み」の唱歌のイメージだが、これを聞くと、なるほど、ゴールデンウィーク明けまでは霜には気をつけないといけないと、膝を打つような実感がある。
ほっちのロッヂに来た大きな理由の一つに、草木を育てながら働きたいということがあった。
自分の家でやればいいのかもしれないけど、賃貸暮らしだとそもそも庭は難しいし、家にいるより職場にいる方が長いのだ。
そもそも綺麗な草木は自分だけで楽しむより、人にも楽しんでもらうほうがよい。好きなことから、人の暮らしや楽しみに繋がれたら、それは嬉しいことだと思う。
何もわからなかった1年目に数個買ったバラやハーブは、半分くらいは弱ったりダメになったりしながら初めての冬を越えた。1年やったしもう大丈夫、と早合点した2年目には、前年を上回る寒さが訪れ、また振り回されている。
そもそも暮らすとはこういうものかもしれない、とふと思う。
病院で働く、診療所で働く。医者の仕事をしていると、システムの変化や対人職である中で、感情を使い、時にはこころを守るためにできるだけ大きな変化を避けようとしてしまう。
世の中ずっと変わらないものなんてないし、手をかければその分ちゃんと答えてくれる植物は、むしろ素直な方だろう。
変わることが当たり前で、それを恐れずに、日々に慣れることなく、その日その日を読みながら暮らす。
自然と暮らしがもっと近かった時代には、きっとあたり前だったことだろうし、幸せの感じ方も違ったのかもしれない。
3年目、ほっちのロッヂにバラ園を作った。
町の人に草刈りや土起こしを手伝ってもらい、雑草が生い茂る原っぱを整地した。
植えたバラは全て品種が違う、30株ほど。小さなころに憧れていたバラを、ひとつずつ増やしていった。もうこれ以上増やさないと思っていたのに、春が来ると欲しくなり、鉢植えが10株ほど控えている。
4月から、少しずつ新芽が動いていて、日々成長している様子がわかる。
今日は裏のハーブ畑を、きれいに整えた。
アーティチョークというハーブ、アメリカのホームステイ先で食べた味が忘れられず去年わくわく植えた。(余談だが、当時初めて食べた味の感想を聞かれ"tastes like bamboo shoots"と言ったら、"artichoke is artichoke."と笑いながら言われたことを思い出す)収穫は2年目なのに、冬の寒さでダメになってしまった。地元の農園で話を聞くと並の耐寒性の植物だと軽井沢では土が凍るので枯れてしまうと。あれこれ冬を越すアドバイスを貰って、今年は4株チャレンジしてみる。
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合わないとわかっていても、チャレンジしてみたいこともある。
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ほとんどがぶじ冬を越えて、むくむくと芽吹いている。
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みずみずしいライトグリーン、この時期、バラを育てる人だけの楽しみ。
これは"メイデンス・ブラッシュ(Maiden's Blush)"というバラ。
あれこれ考えながら、無心に、そして時に頭を悩ませながら、植物と向き合うのは愉しいことです。疲れも心地いい。
そして今年は町の人に「ほっちのロッヂに、バラを見にきてください」と言えるように、マイペースにやっていこうと思う。