『飛鳥之憶 ~ あすかのおぼえ』楽曲解説・9(最終)
本記事は、弊サークルが制作した東方Projectの二次創作音楽作品である『飛鳥之憶 ~ あすかのおぼえ』の解説文です。本記事では楽曲は掲載しておりませんので、CDと併せてお楽しみください。
◆ 九、『生ける伝説』
この第9曲目が、『飛鳥之憶』のラストを飾るエンディング曲となります。この『飛鳥之憶』は、第1曲目にオープニングがあり、第2曲目からストーリーが始まって、神子と青娥の出会い、物部氏と蘇我氏の宗教戦争、尸解の計画と実行、屠自古の尸解の失敗、青娥と後に宮古芳香となる都良香との出会い、尸解の術を経て目覚めた布都と屠自古の再会、これらの出来事を音楽で綴った後に、この第9曲目を迎えます。
先の第8曲目の布都と屠自古が千年越しに再会するシーンは、厳密には布都と屠自古の生前の出来事でなく、原作『東方神霊廟』本編の直前の出来事に触れています。これより先の出来事が原作『東方神霊廟』本編の出来事、神子たちが復活する時のストーリーとなるため、ここで『飛鳥之憶』は一旦締められ、この先の物語については続編の『飛鳥ノ遷都 ~ アスカノセント』に続く形となります。よってこの第9曲目は『飛鳥之憶』のエンディング且つ、先の第8曲目から次作の『飛鳥ノ遷都 ~ アスカノセント』までをつなげるためのつなぎの曲でもあります。また『飛鳥之憶』における物語の描写は第8曲目で終了しており、本楽曲には標題的なイメージは抱えておりません。
本作『飛鳥之憶』のキャッチコピーは、「その時、歴史は動かされた。」であり、これはNHKで放送されていた歴史ドキュメンタリー番組のタイトル『その時歴史が動いた』のオマージュです。またこの第9曲目も、同番組のテーマ曲をリスペクトして作られております。
具体的に楽曲のどのあたりをリスペクトしたかは明記を避けますが、『東方神霊廟』のバックストーリー的に、この『飛鳥之憶』は第8曲目で物語が少々中途半端な状態で途切れているため、第9曲目であるこの楽曲は、尸解して眠りに入った神子たちが復活後にどのような未来を歩んでいくのか、神子たちの行く末に期待を寄せるようなイメージで作られました。引用している原曲も、これまでこのアルバムの中で引用してきた全ての原曲と、それに加えて続編の『飛鳥ノ遷都 ~ アスカノセント』で用いることになる『デザイアドリーム』[譜例㉞](メロディそのものは『デザイアドライブ』とほぼ同一)と『小さな欲望の星空』[譜例㉟]の2曲を一度に使用しています。まさに続編へのつながりを匂わせながら『飛鳥之憶』の世界観を締めるのに相応しい一曲となっているでしょう。
神子は生身の人間としての一生を終えて眠った後、聖徳太子の名で数々の伝説が日本各地に広まり、偉大なる為政者としての地位を着実に獲得していきました。そして布都と屠自古は、物部氏と蘇我氏という、日本史上強い対立関係にあったこの氏族の垣根を越えて共に過ごし、青娥も仙人として生きながら神子たちの目覚めを待ち、また良香と出会って親密な関係を築いておりました。彼女たちに訪れる未来は何か、神子の夢はどのような形で未来に現れるのか、そんな期待を寄せながら次作『飛鳥ノ遷都 ~ アスカノセント』へつながる匂いを残しつつ、この『飛鳥之憶』は幕を閉じます。
『飛鳥之憶 ~ あすかのおぼえ』完
次作『飛鳥ノ遷都 ~ アスカノセント』に続く
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