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『飛鳥之憶 ~ あすかのおぼえ』楽曲解説・7

本記事は、弊サークルが制作した東方Projectの二次創作音楽作品である『飛鳥之憶 ~ あすかのおぼえ』の解説文です。本記事では楽曲は掲載しておりませんので、CDと併せてお楽しみください。

◆ 七、『都の良香、仙女と会う』


 青娥は神子の師として神子たちの尸解をサポートしました。尸解の術を施した神子たちが眠った後も、青娥はずっと仙人のまま日本に残り、再び神子が目覚めるまで神子の眠る霊廟を守りながら不老不死の命を歩んでいます。

 神子が生きた飛鳥の時代から、都が飛鳥から藤原京、平城京、一時は長岡京を経て平安京に移ったこの時代、平安京で青娥は、名声を得ていた一人の文人、都良香と出会うことになります。実はこの都良香という人物が、後に名前の漢字を変えて宮古芳香となった……と密やかに噂されています。


 平安京の大内裏では宴の雅楽の音が響き渡りますが、一人の官人・良香が宴を後にして京を離れ、それにつれて雅楽の音も遠ざかっていきます。良香は山の中へと入り込み、一人で山道を歩き続けました。京では、良香がなぜ単独で山へ赴いたのかを知る者は誰もいませんでした。山へ修行に出たなどとも噂されています。宮中や市井の人々が良香の行方を知らぬ間に、彼女はどこかで、霍青娥という仙人に出会ったのでしょう。

 青娥と良香の出会いは謎に包まれていますが、この出会いから2人は、50年、100年という人の一生の年数に留まらず、千年後の神子が目覚めるまで、いやその後も、共に生き続けることとなったのです。その間、青娥は無論仙人として不老不死の身体を使って生きながらえましたが、良香に関しては少し特殊な方法で――。


 冒頭の龍笛風のフルートソロ[譜例㉙]から始まる雅楽風のオーケストレーションを模した箇所は、『リジッドパラダイス』が原曲です。

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 その後さらに『リジッドパラダイス』の旋律がピアノによって、冒頭よりももう少し分かりやすい形で演奏されます。そうするうちにやがて第2曲目の『隋からの渡来人』にあった、弦楽器による神秘的な和音が連続して下行していく短いフレーズが再現され、良香のもとに羽衣を纏った仙女のような青娥がふわりと現れるのです。

 冒頭の雅楽的な雰囲気が一変してテンポが少し前向きになりますが、引き続き雅楽の打ちもの(羯鼓など)や弾きもの(箏や琵琶など)を模した音符は残り、平安時代的な雰囲気を引き継ぎながら楽曲の全体の進行をリードします。主旋律は今までの『リジッドパラダイス』から、『デザイアドライブ』『古きユアンシェン』の2曲のメロディに取って代わられます。

 しばらくこの、深山幽谷の中の山道をぽつぽつと歩いていくような雰囲気が続きますが、少しずつ少しずつオーケストラは盛り上がっていき、良香は目の前にいる仙人様の魅力と神秘に取り憑かれていくのです。やがて楽曲が佳境に入ってくると、『古きユアンシェン』に『リジッドパラダイス』が混ざり込むような形で[譜例㉚]、良香は青娥の持つ独特のオーラに取り込まれていき、2人は山の奥深くの霧が立ち込める方へと吸い込まれていったのでした。

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 もちろんこの後、良香のことも、仙人様のことも、誰も見聞きした人はいませんでした。


 八、『追放――、そして目覚め、再会。』に続く――

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