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[漫画&ブログ] 闇子ちゃん 第32話 ~インナーペアレントちゃん~
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今回の漫画は、以前に描いたこれら↓↓を詳細に描いたものです。インナーペアレントという言葉は毒親に関する本でよく出てくるので、ご存じの方も多いと思います。
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今年48歳の私は最近、自分のインナーペアレントに気づく機会が多くなりました。そしてありがたい事に、私の親は漫画に描いたような強烈な親ではありませんでした。地道で、質素で、大人しかったです。今回のブログはそこを起点に、前半は私の色々なインナー生首について書いています。以前にブログや漫画で描いた内容と一緒の部分が多いので、↓↓の画像の段落まで飛ばして読んでも大丈夫です。
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私は若い頃は、進学やアルバイトなど何年かごとに新しいフィールドに行って新しいインナー生首が入って来る、つまりインナー生首が自分の中にいっぱいあって、最初のインナーペアレントがよく見えなくなっている状態でした。対して今は、定職に就いているので新しいフィールドに行くわけでもなく、地元からも離れてしまったため友達づきあいも激減しました。つまり、インナー生首がどんどん小さくなったり減ったりして、もともとあったインナーペアレントがドーンとむきだしになっている状態なんです。歳をとると親に似てくるとよく言いますが、こういう事なのかもしれませんね。
「地道で、質素で、大人しい」が私の原点です。なので私も地道で質素で大人しい子供でした。それって多くの子供とは逆ですよね。うるさくて欲深いほうが子供らしいです。私がよく漫画に描いている、「小さい頃は周りの子供が恐かった」というのは、そういう部分からも来ていたのだと思います。もともとのエネルギーが低かったというのもあって、あまりインナーペアレントに逆らってギャーギャーするタイプではなかったんですよね。
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その後、ヤンキー中学に進んだら、みんなたばこの吸い過ぎなのかだるそうな人が多かったです。小学校の隣にある中学校のためクラスメイトはほぼ一緒だったのですが、元気層と不良層が出来始めたんです。私のエネルギーの低さと不良層のだるさは相性が良くて、この中学校になじめた事で私のインナー生首が増え始めました。もともと大人しくてクラスでも孤立していた自分が嫌だったというのもあって、もっとアクティブに周りと関わっていこうという意識も芽生えたのです。
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高校は体育会系という、また新しいインナー生首が入ってきました。地元以外のクラスメイトという生首も入ってきました。同時に美大受験もしていたので、文化系の生首も入ってきました。他校の彼女という生首も入ってきました。あと、当時は裏原宿ファッションブームだったので、頑張って渋谷や原宿まで行って、そういう所のかっこいいけど何だかよくわからない人達という生首も入ってきました。
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大学は裕福な家庭の人が多い大学で、やや上級の人たちという生首が入ってきました。おたく系サークルに入っていた時期もあって、おたく系という生首も入ってきました。それ以外にも、バンドをやっている人、薬物をやっている人、キャバクラや風俗で働いている人、援助交際をしている人、虐待をされていた人、パチンコ屋の社長の息子で18歳からベンツを乗り回している人、いろいろな生首が入ってきました。バイトも、コンビニ、カラオケ、ファミレス、本屋、塾の先生、イベントスタッフ、似顔絵描きなど、モデル/タレント事務所に所属していた時期もありました。とにかく色々なフィールドに身を置いて、自分を鍛えたかったんですよね。孤立していた幼児体験から、地味で質素で大人しい性格にコンプレックスを持っていたのもあったと思います。当時は享楽的な世の中で、私もナンパをしたり性的に乱れていた時期もありました。モッシュやダイブが発生する系のライブにも行きはじめました。エネルギーの強いアクティブな人間になりたかったのです。
その後は25歳くらいから、漫画を描いて持ち込みを始め、編集者という生首、漫画家の友達という生首、同時に六本木の会社でアルバイトを始めたので、六本木で遊ぶリア充の集団という生首も入ってきました。そして何より妻ちゃんです。心を病んだ女の子と真剣に向き合うようになったわけです。これは大きな生首でした。それまでも病んでいる女の子は周りに多かったのですが、自分でも勉強をして精神的な病気について深く考えるようになったのは初めてでした。
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そして30歳以降、妻ちゃんと結婚し、妻ちゃんの地元に引っ越してからは、新しく入って来るインナー生首は減りました。我々日本人は仕事ばっかりしているわけですが、私もそういう社会に組み込まれていったんですよね。そういう生活をしていくうちに、今までの色々なインナー生首は小さくなっていきました。そして小さな頃からずっとあったけど隠れていて見えなかった原点の生首、地味で質素で大人しいインナーペアレントがむき出しになってきたのです。そして現在の私自身も、地味で質素で大人しいおじさんに、つまり小さい頃と同じ性格に戻りました。
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小さい頃、私はこの性格がコンプレックスだと書きました。…が、今ではそういう自分も、そういうインナーペアレントも、心底愛おしいです。なぜかというと、そのインナーペレントが真ん中にありつつ、今までの色々なインナー生首も小さいながらちゃんと存在しているからです。つまり、地味で質素で大人しいけどアクティブでもあるという自分が出来上がっているんですよね。もう誰かと騒いだりする事はないですが、ネットで知り合ったしかも外国人と頻繁に会って、地道に今までに無かったインナーを取り入れています。つまり、コンプレックスの元にあった性質を持ちつつ、いつのまにかコンプレックスの解消もできていたというわけです。
今回の漫画は毒親インナーペアレントについて描きました。そのケースも一緒だと思います。幼少期にドーンと真ん中に配置されたインナーペアレントを完全に消す事はなかなか難しいと思います。でもそこで新しく色々なインナー生首を取り入れる事で、その毒インナーは隠れていくのではないでしょうか。そしてなにかのきっかけで、隠れていた毒インナーがまたむき出しになる時期が来たとしても、もう他の生首もたくさんあるので、いいバランスを保ちながら毒の克服に近づけるのではないでしょうか。
また、色々なインナーとは単に数の話ではなく、色々な種類という意味です。私も若い頃は、ひきこもりから反社のおじさんまで、色々な人と知り合いました。けれども原点が毒インナーの人は、同じような毒の人を引きつけやすい気がします。他の分野でも一緒ですよね、おたくの人はおたくと仲良くなりやすく、テンションが高い人はテンションが高い人と気が合いやすいです。でもそれって、例えば毒インナーを持っている人が新しく毒インナーを取り入れると、単に毒が増えただけであまり克服につながらないと思うのです。そういう意味でも、色々な種類の人間、さらに必ずしも仲良くする必要はなくて、「そういう人もいるのか~」と、全否定はせず心に留めておくのが良いよという意味で、今回の漫画を描きました。私が半グレの人と知り合ったからといって、私が半グレになったわけではない、というような事です。
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最後に、私は自分の持つ色々なインナー生首でもって妻ちゃんに接し続けてきました。例えば妻ちゃんが何か失敗をして、漫画内の闇子ちゃんのように「もうだめだー!」となった時、地道インナー生首による「まあ、次で挽回すれば大丈夫」という接し方もできますし、不良生首の「ばれなきゃ大丈夫」という接し方もできますし、おたく生首の「ほら!鬼滅の刃柱稽古編のOP「夢幻」/MY FIRST STORY × HYDEを聴いて忘れよう!ええとユーチューブユーチューブ…(妻ちゃんはラルクアンシエルの大ファンで特にHYDE様の大ファンなのです)」という接し方もできるわけです。言い換えれば、私の中の色々なインナー生首を、間接的に妻ちゃんの中に設置するという事です。それが妻ちゃんへの救いになると信じています。
そしてそれは、私の原点の地味で質素で大人しいインナーペアレントだけでは不可能だった事です。私の両親は良い人ですが、それは万能という事ではありません。良いインナーだけじゃ他者を救う事はできないと思うのです。悪い人、間違った人、社会的におちこぼれてしまった人、そういうインナー生首が妻ちゃんや、私自身にとっても救いになっていた部分は大きいはずです。それが多様な視野って事ですもんね。
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そういう意味では、世の中のみんなそれぞれに意味があり、どんな人でも誰かに良い影響を与えているんだと思います。悪い影響ですら、後にそれが何かの役に立つこともあります。瞬間的な良い人/悪い人、好きな人/嫌いな人は当然あります。悪い人や嫌いな人とは仲良くならないほうがいい事も多いです。でもそれと同時に、仲良くは無いけどインナー生首として自分の中に置いておくという選択肢があると、人生の豊かさがちょっと増すんじゃないかと思うのです。
[おまけ]
実は今の私には、超巨大なインナー生首があります。妻ちゃんの毒家族です。これは強いです。なぜなら地道で質素で大人しいインナーペアレントは文字通り大人しいので、毒インナーの主張に負けちゃうんですよね。私はあまり人を嫌いにならないというか、人生で嫌いになった人間は彼らだけです。その嫌いな彼らの影響はすごく大きいです。正直なところ、私自身が彼らの性格に似てきちゃうんです。彼らっぽい考え方や行動が無意識に出てしまった時、私は自分が心底嫌いになります。なので、日々自分で自分を見つめ直し、彼らの影響を自覚して抵抗する作業が必要になります。毒生首に対して、インナーペアレントと今までの色々なインナー生首が私の中で戦っているような状態です。言い換えれば、私の人生VS毒家族みたいな状態です。現在は引っ越して物理的な距離が出来たのですが、10年間くらい密着度の高い時期が続いていたので、まだまだ影響は残り続けています。毎日頭の中に現れます。それもまた私の心が病んでいる大きな原因なのでしょう。今まで色々なインナー生首を設置してて本当に良かったです。でないとそのまま彼らの影響を受けて、彼らのように妻ちゃんをいじめる人間になっていたかもしれません。
でもその一方、そういう経験をしたから、自分の親に対する感謝が芽生えました。普通の事を普通にしていた私の両親は、とても尊い存在だったと気づきました。彼らへの感謝を漫画にしているのも、そういう気持ちからです。そういう意味でも、世の中の全ての事には意味があって、今の私はなるべくしてなっているのだと思います。