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[漫画&ブログ] THIS IS JAPAN! 第13話 ~THIS IS 浮世絵Ukiyo-e!~
THIS IS JAPAN! のシリーズは、元々は英語で海外向けに描いています。ここに載せているのは日本語に訳したバージョンです。英語で横書きなので、文字とコマ割りの読む方向も逆になります。左から右に読んでください🌞
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THIS IS JAPAN! Episode 13 "This is 浮世絵Ukiyo-e!"
— 杉村 (@sugiyan1192) May 15, 2024
Actually, I noticed another important common point. I'll post it as a bonus page later!😁
Page1 ~ Page 4 (5 pages) pic.twitter.com/j71Vof4tZi
浮世絵と漫画の大きな共通点に、「いつのまにか海外でもウケてた」という部分があります。浮世絵も漫画も、そもそもは別に「海外進出するぞ!」という意識は無かったですよね。日本人向けに描いていたら、それがたまたま独特な発展をしていて、海外の人から見ればそれが斬新で面白かったというわけです。これは漫画に限らず色々な分野で見られます。例えば、80年代の竹内まりやとか大貫妙子のような音楽はここ10年くらい「City Pop」と呼ばれて、海外ファンが増えていました。その理由は、これらの音楽は海外のジャズやソウルミュージックなどをベースにしつつ、日本という閉じた環境で独特な発展をしたからです。また、日本人はよく優しいと言われます。それは礼儀だったり空気を読んだりといった、「海外にも存在するけれども日本で特にすごく発展した」概念によるものが大きいです。これも、日本が閉じた環境だから、海外の人から見れば「そんなに気を使わなくてもいいのに」というレベルまで気を使うように発展したからだと思います。
ここで大切なのは、「いつのまにか」という部分だと思います。浮世絵も漫画もCity popも「いつのまにか」、つまり自分たちのためにやってたからおもしろ発展したという事です。これが逆に「海外ウケを狙ってやるぜ!」という意識で作られたら、あまりウケなかったと思います。実際の所、歌詞を頑張って英語で歌うより日本語で歌ってるほうがウケます。登場キャラを色んな国籍の人にするより、日本人が日本人の感性で日本の生活を描いた漫画のほうが目を引きます。我々にしても一緒ですよね。こちらに媚びた作品よりも、作者の感性が出ている作品のほうが魅力的です。
私の場合、今のような漫画は2016年から描きはじめました。それまでは漫画は長い間描くのをやめていました。最初は自分のために、自分の考えをまとめて毎日の不調から抜ける出口を模索する自己カウンセリング目的で描いていました。けれども数年前にnote/cakesで賞をもらったり今年始めに持ち込みを再開したあたりから、読み手を意識するようになりました。つまり、「こう描いたらもっとウケるかな?」という事です。
すると、自分で描きながらひっかかりが生まれるようになりました。「あれ?こんな感じだっけ?なんか変だぞ」という事です。今まで無意識に「いつのまにか」描いていた事が、無意識にできなくなってきたのです。それは昔、20代~30代の頃、持ち込みを繰り返して編集者と漫画を作っていた頃にも感じていた事です。極端に言えば、読み手ウケを意識し始めると面白くない漫画が出来上がるのです。これは、以前に描いた↓↓の話にも通じる事でした。昔から私は、「ウケる」を意識しだすとダメになる傾向があったんですね。
その理由は、私が小さい頃エネルギーが低く周りになじめなかった経験にあると思います。なじめないから周りへの迎合グセがつきました。つまり「みんなウケする」人間になろうとするくせがついたのです。それはいつもニコニコしていたり、周りに優しく努めたりという事です。中学から不良グループに入ったのも同じ事だと思います。不良の多い地域だったので、不良化する事が周りになじむ事だったんですね。で、それ自体は社会生活を送るうえで大事な事だと思うんです。でも、物作りにおいてはそれではダメなのです。「ウケ」を狙う、つまり迎合グセで何かを作ってはいけないんですよね。なぜなら受け手は作る側の素の感性を見たいわけで、迎合すると素の部分が減ってしまうのです。さらに私は周りになじめない孤立経験から、また見捨てられるのが恐いという深層心理から、例えば編集者に指摘された部分はそのまま直してしまっていたのです。そうすると元々あった自分の素の部分はますます無くなってしまいますよね。受け手が本来見たかった部分が無くなってしまうのです。一番良いのは、編集者に指摘された部分と自分の感性をすり合わせて、より良い作品にしていく事です。でも自分はそういうのが苦手でした。そこで自分の感性を出せないというか、自分が無くなってしまうのです。迎合グセがあるからです。自分を出して見捨てられるのが恐かったのでしょう。そしてそれは最近感じていた、読み手に迎合しだすと自分らしさが無くなってしまうというひっかかりとも同じでした。しかもそれによって漫画が面白くなくなってしまうのです。これらをまとめると、見捨てられるのが恐くて迎合グセで作品を作ると、面白くないものが出来上がって、結局見捨てられてしまうという事にもなりうるのです。本末転倒ですよね。最初から迎合しないで描けば良いだけの話なのです。
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浮世絵に話を戻すと、日本には昔から遊郭があって、そこで生活する芸者などの遊女がよく浮世絵の題材に使われました。これらは簡単に言えば、今でいう繁華街のガールズバーとか風俗の女の子です。江戸だけでなく地方に行けば宿屋にそういう女の子が配置されていました。日本はスーパーエロ国家だったのです。しかもこれらは完全に男性優位です。こんなにオープンなエンタメとして人権無視エロが発展した国は日本だけだったはずです。今でもそうですよね。AVも風俗もエロ漫画もダントツで日本が発展しています。そしてその良し悪しは別にして、エロ要素が漫画の発展に与えた影響はすごく大きいです。漫画の多くはちょいエロのジャンルやお色気シーンがありますし、それが買う側のモチベーションを後押しする比率は高いはずです。表紙~最初の数ページのグラビア写真も同様です。それは海外の多くの国から見れば「うわー…」となってしまう部分です。けれども、そこで迎合していたら今のような発展は無かったと思います。私の場合と同じく、迎合すると作品の魅力が落ちてしまうのです。でも同時に全く受け手の事を考えないと、それはそれで読みづらかったり意味が分からない作品になってしまいます。なので、自分の描きたい事と迎合のバランス、作品を作る事はその模索の繰り返しなんだと思います。
私がよくメール交換をする友人に、ブラジルのコミック作家がいます。ブラジルにはコミックの出版社があまりなく、しかも漫画の出版社となると皆無だそうです。なので彼は独学で漫画作りを学んだといいます。
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なかなか良い絵を描きますよね。彼は日本の「古き良き」時代が好きで、絵柄にもちょっとその80~90年代の雰囲気が出ていると思います。それはブラジルのコミックの主流とは違うはずです。でも、そっちに迎合するのではなく、自分の本質にある感性で模索を続けているのです。純粋な創作活動って本来そういうものですよね。作品=自分になる事です。日本は浮世絵も漫画も商業的な意味合いが強かったので、創作とお金が結びつきやすく、お金のための創作、つまりウケる事を狙う創作が奨励されやすいです。それはそれで悪い事では無いですが、私のようにそういう世の中の雰囲気にひっぱられるとそもそもの純粋さを忘れてしまうタイプは、うっかり損な方向に行ってしまいやすいんです。
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自分の本質、そのブラジル人の作家であれば自分が子供の頃に夢中になった日本の漫画やアニメの雰囲気を好きな気持ち、私であれば保育園で周りの輪に入れず孤立していた寂しさと、そこから来る迎合グセ、そういうものは誰でも大人になっても心のどこかに残っているんだと思います。三つ子の魂百までなんて言葉もありますしね。それは逃れられないものだと思います。それは漫画を描く自己カウンセリングや、妻と毒母の関係を元に漫画を描く事で気づきました。妻も毒母も生育過程におけるネガティブな環境の影響が、今の思考パターンやふるまいに残っているとすごく感じます。私自身も、自分のそういうクセを意識し、うまく自分でコントロールするのが良いと思っています。そんなふうに自分を知る手段として、毎日漫画を描いています。
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最後に、6ページめのおまけページに描いたゴッホが、日本に憧れを持っていたのをご存じでしょうか?。浮世絵もコレクションしており、模写もしていました。
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ゴッホがメンタルを病んでいた事は有名ですよね。何度も精神病院のお世話になり、自分の耳を切り落としてお気に入りの風俗嬢にプレゼントしたり、弟と共依存ぽくなっていたり、最後は自殺で亡くなっていたりと、強めのメンヘラおじさんです。そして、実際に日本に行った事は無いのに、日本がそういう自分でも受け入れてくれるような優しい癒しの土地であるイメージを持っていたようです。それは浮世絵に描かれた楽しそうな雰囲気のせいだったのかもしれません。私はこの10年強い不眠症とうつ病なのですが、一番辛かった頃、夜眠れない時は「猫のニャッホ」というパズルゲームで遊んでいました。ゴッホを猫キャラクター化したゲームです。すさんだ気持ちを少しでもかわいいキャラクターで癒してもらおうとしたのです。
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日本に癒しを求めていたメンヘラおじさんをモチーフにしたゲームに、現代のメンヘラおじさんが癒しを求めるという、まあ正直ちょっと笑っちゃう構図ですよね。何でもキャラクター化する文化がある日本ならではだと思います。発想が自由です。そしてその文化は、漫画、その前の浮世絵の時代からも見て取れます。本来、日本人はそういう自由な発想を持った人達だったのかもしれません。現代は色々社会のルールが厳しくなって、そういう自由さが失われている印象があります。「こうでなくてはいけない」という意識が強い気がします。それもまた、閉じた環境だから変な発展をしてしまった意識なのかもしれません。自分も含め、今自分がとらわれている事は本当に自分にとって良い事なのか?本当はもっと自由に踊りたいんじゃないか?と自問する時期に来ているのだと思います。
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[おまけ]
この記事を書いている最中、以前描いた私の迎合グセの例についての漫画が、noteに載せ忘れていたような気がしました。自分でも気に入っている回ですし、ここで載せますね。コロナの時期に描いたものです。
オッサンの気づき 第9話 ~マスクに気づいた!~
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