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「フランス(北部)-静謐と美食が織りなす街〜シャンパーニュからノルマンディーへ〜」


1.Day1:パリからランスへ 〜シャンパーニュ地方の玄関口〜

朝靄に包まれたパリ東駅に降り立った。時計は午前8時を指している。パリの喧騒を抜け出し、静謐な北フランスへの旅が始まろうとしていた。

私たち夫婦がシャンパーニュ地方への旅を決めたきっかけは、去年の結婚記念日に飲んだランスのシャンパンだった。グラスの中で踊る繊細な泡に、夫は「本場で飲んでみたいね」とつぶやいた。その一言が、この旅の始まりだった。

パリからランスまでは、TGVで45分。予約したのは9時発の列車だ。切符は日本からRail Europeで事前予約しておいた。パリ観光のついでに気軽に訪れられる距離感が魅力的だ。

快適な列車の車窓からは、パリ郊外の街並みが徐々に穏やかな田園風景へと変わっていく。妻は窓の外を食い入るように眺めながら「パリとは全然違う景色ね」と感動していた。

10時前、ランス駅に到着。駅を出ると、すぐに街の雰囲気の違いを感じた。パリの喧騒が嘘のように、歴史を感じさせる建築物と落ち着いた空気が漂っている。

【宿泊先】
ホテル・ドゥ・ラ・パー (Hôtel de la Paix)
https://www.bestwestern-lapaix-reims.com/
ランス中心部に位置する4つ星ホテル。駅から徒歩15分、大聖堂まで徒歩10分の好立地。

ひとことメモ:朝食のクロワッサンとバゲットが絶品。シャンパンも無料で楽しめる。

チェックインは15時からだったが、荷物を預かってもらえた。フロントスタッフのマリーは流暢な英語で、「シャンパーニュ地方へようこそ!」と温かく迎えてくれた。

午前中は街の散策に充てることにした。ランスの目抜き通り、プラス・ドロワ通りを歩く。古い建物が並ぶ通りには、パティスリーやブティックが立ち並び、地元の人々が行き交う。

【ランチ】
ル・コントワール・ドゥ・ラ・パティスリー (Le Comptoir de la Pâtisserie)
住所:8 Rue Colbert, 51100 Reims
地元で愛される老舗パティスリー&カフェ。
おすすめメニュー:
・キッシュロレーヌ
・サーモンのオープンサンド

ひとことメモ:デザートのミルフィーユは絶品。優しい味わいのハウスワインと相性抜群。

午後は、シャンパーニュ地方特有の白亜の建物が並ぶ旧市街を散策。路地裏には、小さなワインショップが点在する。一軒の店で、オーナーのジャン・ピエールと意気投合。「明日はどこのシャンパンハウスへ行く予定?」と尋ねられ、翌日の予定を話すと、いくつかの秘密のスポットを教えてくれた。

【ディナー】
ル・フォール・ド・ランス (Le Foch de Reims)
住所:37 Boulevard Foch, 51100 Reims
https://www.lefoch.com/
ミシュラン1つ星。シャンパーニュ地方の食材を使った創作フレンチ。
おすすめメニュー:
・フォアグラのテリーヌ シャンパン風味
・仔牛のロースト 地元キノコのソース

夕暮れ時、ホテルに戻る途中、ライトアップされ始めたランス大聖堂のシルエットに息を呑んだ。明日はあの大聖堂の中も見学できる。期待に胸を膨らませながら、初日の夜が更けていった。

2.Day2:シャンパーニュを巡る一日

ホテルの窓から見える朝の風景に、思わずカメラのシャッターを切った。朝食は8時から。シャンパーニュ地方特製のジャムを塗った焼きたてのバゲットと、香り高いコーヒーで一日が始まる。

【モーニングアクティビティ】
ランス朝市 (Marché du Boulingrin)
住所:50 Rue de Mars, 51100 Reims
営業時間:水・金・土 7:00-13:00
アール・デコ様式の建物内で開かれる歴史ある市場。

ひとことメモ:地元のチーズ職人から、その日のおすすめを教えてもらえる。

9時、ランス大聖堂へ向かう。朝一番での訪問をお勧めするのは、ステンドグラスが朝日に輝く瞬間を見られるから。シャガールの青を基調としたステンドグラスが、まるで光の交響曲のように空間を彩る。

ランス大聖堂 (Cathédrale Notre-Dame de Reims)
https://www.cathedrale-reims.fr/

ひとことメモ:フランス国王の戴冠式が行われた歴史的建造物。建築様式の解説付きオーディオガイドがおすすめ。

11時からは、この旅のハイライト、シャンパンハウス見学へ。事前予約したテタンジェ (Taittinger) のセラー見学ツアーに参加する。

【シャンパンハウス見学】
テタンジェ・シャンパンハウス
住所:9 Place Saint-Nicaise, 51100 Reims
予約必須:https://www.taittinger.com/

地下37メートルに広がるカーヴ(貯蔵庫)では、何百万本ものシャンパンが眠っている。ガイドのマリー・クレールが、シャンパン造りの工程を丁寧に説明してくれる。「このカーヴは4世紀のローマ時代の採石場なんです」という言葉に、歴史の重みを感じる。

【ランチ】
ラ・グラップ・ド・オール (La Grappe d'Or)
住所:6 Rue du Temple, 51100 Reims
La Grappe d'Or
シャンパンに合わせた郷土料理が評判のビストロ。
おすすめメニュー:
・シャンパーニュ風エスカルゴ(18ユーロ)
・鴨胸肉のロースト 地元野菜添え(28ユーロ)

ひとことメモ:昼でもシャンパンを楽しむ常連客で賑わう。

午後は、もう一軒のシャンパンハウス、ポメリー (Pommery) を訪問。アール・ヌーヴォー様式の建物と、地下の巨大なカーヴが印象的だ。

ポメリー・シャンパンハウス
住所:5 Place du Général Gouraud, 51100 Reims
https://www.champagnepommery.com/

ひとことメモ:地下カーヴでは現代アート展も開催。芸術とシャンパンの融合が楽しめる。

夕方、ジャン・ピエールお勧めの隠れ家的ワインバーへ。

ル・コアン・ブルゴーニュ (Le Coq Bourguignon)
住所:4 Boulevard de la Paix, 51100 Reims
小規模生産者のシャンパンを楽しめる隠れ家的バー。
おすすめ:
・小規模生産者シャンパン飲み比べセット
・シャルキュトリープレート

ひとことメモ:オーナーソムリエの解説付きで、珍しいシャンパンと出会える。

【ディナー】
ラシーヌ (Racine)
住所:6 Place Godinot, 51100 Reims
https://racine.re/
ミシュラン2つ星。シャンパーニュの食材を昇華した創作料理。
おすすめコース:
・シェフおまかせコース
・シャンパンペアリング

ひとことメモ:前菜からデザートまで、すべての料理にシャンパンが活きている。

ホテルに戻る道すが、ライトアップされた大聖堂を見上げながら、夫が「シャンパンって、造る人の想いと土地の歴史が詰まってるのね」とつぶやいた。その言葉に、深く頷かずにはいられなかった。

3.Day3:ノルマンディーへ 〜モン・サン・ミッシェルの絶景〜

朝もやの立ち込めるランスの街を後にしたのは、早朝6時だった。モン・サン・ミッシェルまでは長距離になるため、レンタカーを手配していた。

パリを迂回し、ノルマンディー方面へ。約5時間の道のりだが、途中、印象的な風景が広がる。緑なす牧草地に点在する石造りの農家、のどかに草を食むノルマンディー種の乳牛。

11時過ぎ、遠くにモン・サン・ミッシェルのシルエットが見えてきた。潮の満ち引きで姿を変える孤島は、まさに「西洋の驚異」の名にふさわしい。

【宿泊先】
ル・ルレ・サン・ミッシェル (Le Relais Saint-Michel)
Hôtel Le Relais Saint-Michel - Le Mont Saint-Michel
モン・サン・ミッシェルを一望できる特等席のホテル

ひとことメモ:夕暮れ時と早朝の景色は格別。朝食のクロワッサンとノルマンディー産バターが絶品。

チェックイン後、まずは腹ごしらえ。本島内のレストランは観光客向けが多いが、地元客で賑わう隠れ家的な一軒へ。

【ランチ】
ラ・フェルム・サン・ミッシェル (La Ferme Saint-Michel)
住所:Route du Mont Saint-Michel
Restaurant La Ferme Saint-Michel | Cuisine bistronomique
本土側にある農場レストラン
おすすめメニュー:
・ムール貝のマリニエール
・仔羊のハーブロースト

ひとことメモ:オーナーシェフ自らが地元の食材を説明してくれる。

午後2時、いよいよモン・サン・ミッシェル観光。この日は干潮時刻が15時30分。ガイド付きツアーで砂州散策ができる絶好のタイミングだった。

【アクティビティ】
モン・サン・ミッシェル干潟ガイドツアー
予約:https://decouvertebaie.com/
必要な装備:
・短靴または長靴(レンタル可能)
・タオル、着替え

ひとことメモ:地元ガイドのピエールから、潮の満ち引きや生態系について詳しい解説が聞ける。

修道院内部の見学は16時から。観光客が少なくなる夕方がおすすめ。

【ディナー】
ラ・メール・プラール (La Mère Poulard)
Home - La Mère Poulard
1888年創業の老舗レストラン
おすすめメニュー:
・名物ふわふわオムレツ
・シーフードプラッター

ひとことメモ:オムレツを作る銅鍋を叩く音が、館内に独特のリズムを刻む。

夜のライトアップされた修道院を眺めながら、ホテルのテラスでノルマンディー産シードルを楽しむ。潮風に吹かれながら、「まるで絵本の中にいるみたい」と思わず呟いた。この光景は現実とは思えないほどの美しさだった。

4.Day4:エトルタの断崖絶壁

モン・サン・ミッシェルの朝焼けを眺めながらの朝食後、エトルタへ向けて出発。ノルマンディー北部に位置するこの小さな漁村は、印象派の画家たちを魅了した白亜の断崖で知られる。約4時間の道のりだ。

途中ルーアン大聖堂へ立ち寄った。
モネの連作「ルーアン大聖堂」の モチーフとなった建物。光の変化で表情を変える白亜の外観は圧巻だった。

【ランチ】
ラ・クロンヌ (La Couronne)
住所:31 Place du Vieux Marché, Rouen
1345年創業のフランス最古のレストラン
おすすめメニュー:
・カナール・ア・ラ・ルーアネーズ(38ユーロ)
・本日の鮮魚のポワレ(32ユーロ)

ひとことメモ:ジュリア・チャイルドが人生を変えた一皿を食べた歴史的なレストラン。

午後2時、エトルタに到着。まずは絶景ポイントへ向かう。

【宿泊先】
ドルマーヌ・サン・クレール (Dormy House)
https://www.dormy-house.com/
断崖絶壁の上に建つホテル
テラスから見る夕陽と朝日は格別。部屋からは波の音が心地よく聞こえる。

【アクティビティ】
・エトルタ断崖ハイキング
ガイド:Vincent(地元ガイド)
コース:
・アヴァル断崖
・アモン断崖
・マナポルト岩門

ひとことメモ:ガイドは地質学に詳しく、断崖形成の歴史を丁寧に説明してくれる。

夕方は漁港エリアを散策。小さな土産物店や画廊が立ち並ぶ通りには、印象派の画家たちの足跡が残る。

【ディナー】
ルストロ・デ・フラー (Restaurant des Fleurs)
エトルタで最も評価の高いシーフードレストラン
おすすめメニュー:
・漁師直送の魚介プラトー(2人前 85ユーロ)
・ノルマンディー産ロブスターのグリル(時価)

ひとことメモ:シェフのエリックは毎朝市場で最高の食材を選び抜く。

夜は、ホテルのテラスで満天の星を眺めながら、ノルマンディー産カルヴァドスで一日を締めくくる。

5.Day5:パリへの帰路

朝焼けに染まる断崖を見るため、早朝5時に起床。ホテルのテラスから見える景色に、思わず息を呑む。オレンジ色に染まる空と、それを映し出す海面。白亜の断崖が朝日に輝き始める様は、まさに絵画のような美しさだった。

【朝食】
ホテルの朝食テラスにて
おすすめメニュー:
・エトルタ特製クロワッサン
・ノルマンディー産バター
・地元の蜂蜜

ひとことメモ:断崖を眺めながらのゆったりとした朝食は、この旅最後の贅沢な時間。

9時、パリへ向けて出発。約2時間30分の道のり。途中、印象派ゆかりの村、ジヴェルニーに立ち寄ることにした。

・モネの家と庭園
住所:84 Rue Claude Monet, 27620 Giverny
https://fondation-monet.com/
開園時間:9:30-18:00(季節により変動)

ひとことメモ:有名な睡蓮の庭を含め、モネが愛した庭園を散策できる。

【ランチ】
レ・ナンフェア (Les Nymphéas)
住所:22 Rue Claude Monet, 27620 Giverny
https://restaurant-lesnympheas.com/
モネの庭園を思わせる雰囲気の中庭が魅力的なレストラン
おすすめメニュー:
・季節の野菜のキッシュ
・鴨胸肉のロースト 地元ハーブソース

ひとことメモ:庭で採れたハーブを使った料理は、まさにモネの絵画のような彩り。

午後2時、いよいよパリへ。5日間の旅の締めくくりに相応しい場所へ向かう。

レストラン:ル・シンク (Le Cinq)
場所:フォーシーズンズホテル・ジョルジュサンク内
Le Cinq | Michelin-Star Restaurant Paris | Fine Dining in Paris
ミシュラン3つ星。北フランスの食材を使った至高のフレンチ。
おすすめコース:
・シェフおまかせディナー
・ワインペアリング

ひとことメモ:シャンパーニュからノルマンディーまで、訪れた地域の食材が織りなす美食の饗宴。

6.旅の総括 〜静謐と美食の北フランス〜

シャンパーニュで出会った職人たちの誇り、モン・サン・ミッシェルの荘厳な佇まい、エトルタの絶景、そしてジヴェルニーの詩的な風景。それぞれの土地で出会った人々の温かさ。

観光客で賑わうパリとは異なる、静謐な時間が流れる北フランス。その魅力は、おそらく「本物との出会い」にある。本物のシャンパン、本物の景色、本物の料理、そして本物のフランス人との交流。

まだまだ見たい景色も、味わいたい料理も、たくさん残っている。この地には、何度でも訪れたくなる不思議な魅力がある。

≪旅行基本情報≫
■入国とビザ情報
・日本国籍の場合、90日以内の観光目的の滞在はビザ不要
・パスポートの残存有効期間は滞在期間+3ヶ月以上必要
・航空機搭乗時に提示が必要なEU入国申請フォーム(dPLF)の記入が必要

■最適な旅行シーズン
・ベストシーズン:4月〜6月、9月〜10月
気温も穏やかで観光に最適
・シャンパーニュの収穫期:9月中旬〜10月上旬
ブドウ畑が最も活気づく時期
・モン・サン・ミッシェルのベストシーズン:5月〜9月
干潮時に砂州散策ができる日が多い
・エトルタの撮影に最適な時期:4月〜6月
朝焼け・夕焼けの時間帯が撮影に適している

■気候と服装
・春(3月〜5月):気温8〜18℃
薄手のコート、セーター、折りたたみ傘が必要
・夏(6月〜8月):気温15〜25℃
半袖に羽織るものがあれば快適
・秋(9月〜11月):気温7〜20℃
重ね着できる服装がおすすめ
・冬(12月〜2月):気温2〜8℃
厚手のコート、マフラー、手袋が必要

■現地での移動手段
・パリ〜ランス間:TGV利用
所要時間約45分、予約必須
・ランス市内:徒歩またはバス
中心部は徒歩圏内
・モン・サン・ミッシェル、エトルタへの移動:
レンタカーがおすすめ(事前予約必須)
運転に自信がない場合は個人ガイドツアーも選択可

■通貨・支払い
・通貨:ユーロ
・クレジットカード:VISA、Mastercard使用可能
・現金推奨場所:小規模レストラン、市場
・チップ:レストランで5〜10%が一般的

■通信環境
・主要都市:Wi-Fi環境良好
・地方部:通信が不安定な場所あり
・おすすめ:ポケットWi-Fiまたは現地SIMの準備

■安全対策
・治安:比較的良好
・注意点:
観光地での置き引き、スリに注意
貴重品の管理は慎重に
夜間の単独行動は避ける

■その他の注意事項
・博物館、美術館は月曜休館が多い
・レストランは14:00〜19:00頃まで休憩時間
・スーパーマーケットは日曜休業が一般的
・祝日は多くの店舗が休業
・予約したレストランへの遅刻は要連絡

※この記事は筆者の主観に基づいて作成されています。旅行前に最新の情報を確認することをおすすめします。

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