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「トルクメニスタン-中央アジアの神秘の国へ」


1.Day1:神秘の国、トルクメニスタンへ

「トルクメニスタン航空1234便、アシガバート行きの搭乗がまもなく開始いたします」

イスタンブール空港のアナウンスが響く。搭乗口に向かう私たちの足取りは軽い。中央アジアの秘境、トルクメニスタンへの旅の始まりだ。

実は、この旅の準備には相当な時間を要した。観光ビザの取得には、現地旅行会社からの招待状が必要で、手続きだけで1ヶ月以上かかった。しかし、シルクロードの古代遺跡や、世界一の白大理石建築群、そして伝説の「地獄の門」への好奇心が、すべての障壁を乗り越えさせてくれた。

機内で、夫と共にガイドブックを開く。「世界で最も訪問者の少ない国の一つ」という記述が目に入る。年間観光客数はわずか数万人。その希少性も、私たちの心をくすぐる要素の一つだった。

5時間のフライトを経て、深夜0時過ぎ、アシガバート国際空港に降り立つ。2016年に完成した新ターミナルは、まるで宮殿のような白大理石の建造物だ。

入国審査は予想以上にスムーズだった。事前に手配していたガイド、アリさんが、にこやかな表情で私たちを出迎えてくれる。アリさんは流暢な日本語を話す。トルクメニスタン国立大学で日本語を専攻したという。

【宿泊先】
イルディズホテル (Ýyldyz Hotel)
Homepage | Yyldyz hotel
住所:Archabil Avenue, Ashgabat, Turkmenistan

ホテルまでの道中、車窓から見える夜景に息を呑む。街全体が白大理石で建てられ、LED照明でライトアップされている様子は、まるでSF映画のセットのようだ。

2.Day2:アシガバート-世界一の白い大理石の街

朝方の日差しに照らされたアシガバートの街並みは、まさに息をのむような光景だ。ギネス記録に認定された「世界一の白大理石建築群」は、太陽の下で眩いばかりに輝いている。アリさんによると、市内の建物の約48%が白大理石で造られているという。

朝食は、ホテルの最上階レストラン「パノラマ」で。

【朝食レストラン】
パノラマ (Panorama Restaurant)
https://www.yyldyzhotel.com/dining/panorama

  • 地元料理と西洋料理のビュッフェスタイル

  • 窓一面の街並みビュー

  • バリスタ常駐のコーヒーステーション

朝食後、市内観光へ。最初の目的地は独立記念塔だ。高さ118メートルの塔頂には、トルクメニスタンの初代大統領の黄金像が輝く。像は太陽の動きに合わせて回転し、常に太陽に向かって微笑んでいるという。

続いて向かったのは、世界最大の屋内観覧車を持つ「アシガバートエンターテインメントセンター」。白大理石とガラスで作られた巨大な建物の中で、観覧車からは街全体を見渡すことができる。

「この建物、人がほとんどいないですね」と夫が呟く。確かに、壮大な建築物の割に人の気配が少ない。アリさんは「平日の昼間は、こんなものです」と淡々と答えた。

昼食は、現地のレストラン「アク・アルティン」で伝統料理を楽しむ。

【レストラン】
アク・アルティン (Ak Altyn)
住所:Magtymguly Avenue, Ashgabat

おすすめメニュー:

  • プロフ(羊肉と米のピラフ)

  • シャシリク(羊肉の串焼き)

  • チョレクパン(伝統的なパン)

午後は国立博物館を訪れる。2万点以上の展示物を通じて、トルクメニスタンの歴史と文化に触れることができる。

特に印象的だったのは、古代メルヴから出土した遺物のコレクション。シルクロード交易の重要拠点として栄えた当時の様子を、鮮やかに伝えている。金細工や陶器、織物など、その技巧の素晴らしさに目を奪われる。

夕暮れ時、トクルチカ・バザールへ向かう。ここは現地の人々の生活を垣間見ることができる市場だ。

【トクルチカ・バザール】
営業時間:7:00-19:00
アクセス:市内中心部から車で15分

カラフルなドライフルーツやナッツ、伝統的な織物が所狭しと並ぶ。値段交渉は当たり前だが、あまり強引な交渉は避けたほうが良いとアリさんはアドバイスしてくれた。

夕食は、ホテル最上階の回転レストラン「アスマン」で。

【レストラン】
アスマン (Asman Restaurant)
https://www.yyldyzhotel.com/dining/asman

窓の外には、ライトアップされた白大理石の街並みが広がる。「まるで未来都市のようだね」と夫。確かに、この景色は現実離れしている。

3.Day3:ダルヴァザ-地獄の門と砂漠キャンプ

早朝6時、四輪駆動車に乗り込み、カラクム砂漠へと向かう。約4時間のドライブだ。車内には、朝食用のボックスと十分な量の水が用意されている。

【必需品】

  • 日焼け止め(SPF50以上推奨)

  • サングラス

  • 帽子

  • 防寒着(夜間の気温低下に備えて)

  • カメラ予備バッテリー

  • 常備薬

舗装された道路から砂漠のオフロードへと入ると、車体が大きく揺れ始める。その揺れの中、アリさんがダルヴァザの歴史を語ってくれる。

1971年、ソビエト時代の地質調査隊が天然ガス採掘を行っていた際、地盤が崩落。直径70メートル、深さ30メートルの巨大な穴が開いた。有毒ガスの放出を防ぐため、地質学者たちは穴に火を放った。その火は50年以上たった今も燃え続けているという。

正午過ぎ、ついに「地獄の門」の前に立つ。

【ダルヴァザ・ガスクレーター(地獄の門)】
入場料:現地ガイド手配に含まれる
ベストな見学時間:

  • 日中:12:00-15:00(クレーターの全容確認)

  • 夜間:19:00-21:00(炎の様子が最も美しい)

巨大な穴から立ち上る炎と熱気は、まさに地獄の入り口のよう。「実物は想像以上だね」と夫。確かに、この壮大さは言葉では表現できない。

【砂漠キャンプ】
ダルヴァザ・デザートキャンプ
Yurt Camp at Darvaza Crater, Turkmenistan

設備:

  • 伝統的なユルト(2人用)

  • 共同トイレ・シャワー

  • 食事用テント

  • 発電機(18:00-23:00稼働)

夕暮れ時、地獄の門はより一層その魔力を増す。オレンジ色の炎が夜空に映え、まるで生きものように揺らめく。キャンプで用意された伝統的な夕食を取りながら、この神秘的な光景に見入る。

【砂漠キャンプディナー】
メニュー:

  • シャシリク(羊肉の串焼き)

  • ピラフ(現地スパイス使用)

  • 伝統的なグリーンティー

  • ドライフルーツとナッツの盛り合わせ

夜、満天の星空の下でベッドに横たわる。地獄の門のオレンジ色の明かりと、無数の星々。右手には北斗七星、左手にはさそり座。光害のない砂漠の夜空は、まさに天然のプラネタリウムだ。

4.Day4:メルヴ-シルクロードの古代遺跡を訪ねて

朝日とともに砂漠を後にし、古代都市メルヴへ。約5時間のドライブだ。

【メルヴ遺跡群】
UNESCO世界遺産(1999年登録)

見学ポイント(所要時間:約4時間)

1.スルタン・サンジャール廟(12世紀)
2.キズ・カラ城塞(6-7世紀)
3.エルク・カラ(古代要塞)
4.ギャウル・カラ(パルティア時代の遺構)

【宿泊先】
メルヴホテル (Merv Hotel)
住所:Mary City, Turkmenistan

メルヴの遺跡群は広大だ。12世紀には世界最大の都市の一つだったという。アリさんの説明を聞きながら遺跡内を歩く。「ここでは、数々の文明が交差しました。仏教、キリスト教、イスラム教の文化が混ざり合い、独自の文明を築いたのです」

炎天下の中、遺跡を巡る。撮影スポットでは、アリさんが積極的にシャッターを切ってくれる。彼のおかげで、夫婦での記念写真も数多く残すことができた。

昼食は地元のチャイハナ(茶館)で。

【レストラン】
メルヵ・チャイハナ
住所:Mary City central market area

おすすめメニュー:

  • ドグラマ(羊肉と野菜のスープ)

  • サマサ(肉入りの揚げ餃子)

  • グリーンティー(無料おかわり可)

午後は考古学博物館を訪れる。メルヴ遺跡から出土した貴重な遺物の数々が展示されている。

【メルヴ考古学博物館】
シルクロードを通じて、はるか東アジアや中東との交易の証が、ここに残されている。中でも印象的だったのは、唐の時代の陶器の数々。これらが、かつてこの地まで運ばれてきたと思うと、感慨深い。

5.Day5:アシガバートで最後の1日

最終日は再びアシガバートへ。朝一番でトルクメンバシ廟を訪れる。

【トルクメンバシ廟】
参拝時間:8:00-16:00

青と金で彩られたモスクは、まさに中央アジアの芸術性を体現している。静寂に包まれた廟の中で、イスラム建築の精緻な装飾に見入る。

その後、カーペット博物館へ。

【トルクメン国立カーペット博物館】

展示内容:

  • 世界最大の手織りカーペット

  • アンティークカーペットコレクション

  • 織機の実演(不定期)

  • カーペット製作工程の展示

トルクメニスタンの誇る伝統工芸、トルクメン絨毯の歴史と技法を学ぶ。特に印象的だったのは、ギネス記録に認定された世界最大の手織りカーペット。301平方メートルもの大きさで、制作に26人の職人が1年8ヶ月を要したという。

最後の昼食は、現代的なショッピングモール内のレストランで。

【レストラン】
アルティン・アスル
住所:Berkarar Mall, Ashgabat
営業時間:10:00-22:00

夕暮れ時、アシガバートの街を見下ろす展望台に立つ。白大理石の街並み、カラクム砂漠の荒涼とした風景、そして古代シルクロードの遺跡。わずか5日間で、私たちは全く異なる三つの顔を持つトルクメニスタンを体験することができた。しかし、この国の本当の魅力は、そこに暮らす人々の中にあるのかもしれない。

ガイドのアリさんが最後に言った言葉が心に残っている。
「また来てください。そしてトルクメニスタンの本当の姿を、もっと多くの人に伝えてください」

帰国の途につく私たちの心には、また必ず戻って来たいという思いが芽生えていた。

≪トルクメニスタン旅行情報≫

■入国について

  1. ビザ

  • 観光ビザ要事前取得

  • 必要書類:パスポート(残存有効期間6ヶ月以上)

  • 現地旅行会社による招待状が必須

  • 申請から取得まで約4-6週間

  • 費用:約80ドル

  1. 税関申告

  • 2000ドル相当以上の現金

  • 貴金属・宝石類

  • 撮影機材(プロ用機材は要許可)

■気候と服装
季節別の気温(アシガバート):

  • 春(3-5月):15-25℃

  • 夏(6-8月):35-45℃

  • 秋(9-11月):15-25℃

  • 冬(12-2月):0-10℃

推奨される服装:

  • 夏季:軽装だが肌の露出は控えめに

  • 冬季:防寒着必須

  • モスク訪問時:女性はスカーフ着用

■通信環境

  • Wi-Fi:主要ホテルで利用可(接続不安定)

  • SIMカード:空港で購入可(パスポート必要)

  • SNS:多くのサービスに制限あり

■両替・支払い

  • 主要通貨:マナト(TMT)

  • 両替:空港、ホテル、銀行で可能

  • クレジットカード:高級ホテル・レストランのみ

  • 現金推奨:USドル(新札・破損なし)

■治安

  • 全般的に安全

  • 夜間の一人歩きは避ける

  • 写真撮影は許可を確認

■交通手段

  • タクシー:メーター制なし、事前に価格交渉

  • バス:観光客の利用は非推奨

  • レンタカー:外国人の利用は実質不可

※この記事は筆者の主観に基づいて作成されています。旅行前に最新の情報を確認することをおすすめします。

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