「だが、情熱はある」の情熱がありすぎる全話レビュー
春クールのドラマが軒並み始まり、なんなら次のクールのドラマが発表されてるタイミングだが、#こっち側 のゲストで海人くんが来て、夢の若林&若林を見せてくれたもんだから、また「だが情」熱量が再燃した。
なので、この勢いで今更ながらだけど、全話レビューを書いてみた。
第1話 初見を繋ぎ止めるのは得体の知れないカッコ良すぎる主題歌
正直に言って、1話は初見の視聴者を繋ぎ止めるパワーが若干弱かったと思う。
特に、お笑い好き、演者ファンでもなければよりそう感じたと思う。
私もその口だったので、現在はこんなにもこのドラマを愛してやまないのだけれど、初見の率直な感想としては(面白そうな感じだけど、ナレーションの多さが気になる、絶対に次も観ようまではいかないかなぁ。)といった感じだった。
それでも観続けようかなと思ったのは、制作発表がされた時に、見た目をそっくりに仕上げている山ちゃん役の森本慎太郎さんに対し、どう転んでも見た目が似ていないことで色々言われていた髙橋海人さんの若林が、その前評判をぶん殴る勢いで若林そのものになっていたことに打ち抜かれたからだ。
見た目は似ていないのに、性格やまとう空気、喋り方をものすごく寄せてきていた。
そして、元々印象的な‘眼力‘を自由自在に使いこなして、光の入らない真っ黒な目玉や、力の入っていない視線など、その目の演技にもものすごく惹かれてしまった。
そしてもう一つ。
1話の時点では正体が明かされていなかった主題歌、SixTONESの「こっから」が、憂鬱な日曜の夜を吹き飛ばす、めちゃくちゃ良すぎる曲だったからだ。
このエンディングが流れた瞬間、それまで感じていたパワー不足が全部吹っ飛んで、(あぁ、来週もこれを聞いて、この爽快な気分になってから寝たい。)と思ったのだ。
そして1話のハイライトは、自分を面白いと断言する山ちゃんと、自分は面白くないと叫ぶ若林の対比の演出のところだろう。
今や(好みはあれど)お笑いのトップに君臨し、多くの人に影響を与えているこの2人が、真逆のことを思いながら、同じところへ向かっていくという構造が、たまらなく刺さった。
この回はプロローグでありエピローグであるから、1話でもあり13話でもある。
この時点では明かされていなかったKing & Princeの主題歌「なにもの」が実はめちゃくちゃ匂わされてたし、「たりないふたり」を知らない人にとっては、1話で出てくる情報量は事前情報がないと辛いので、全編通してからもう一度1話を観るのがおすすめだ。あんなこんながあってここまで来た…と、しみじみしながら観られる。
1話のお気に入りシーン
襟足を攻め込む若林
同じクラスで、前後の座席に座る2人。
前の席の春日のせいで前が見辛いことに腹を立てた若林が、ハサミで春日の襟足を切るシーン。
背筋まっすぐなまま全く動じない春日と無の目の若林(海人くんの目)が良い
俺は面白い、俺は面白くない
先にも書いた、一番引き込まれた対立構造のシーン。
愛がいっぱいエンディング
本編ではないのだが、最高な主題歌に加えてエンディング自体も良すぎて、なんなら1話を観終わった後、エンディングをもう一回観てから寝た。
第2話 始まりは、お好み焼きとうどんが美味しかった日
2話は、二人の大学生活がスタートする。
山ちゃんは関西の大学に合格し男子寮に入る。若林は親が体裁を気にするので、とりあえず関東の夜間大学に入った。
2話のハイライトは、前クールの「ブラッシュアップライフ」で凄まじいインパクトを残した‘粉雪・加藤‘こと、宮下雄也さん演じる、米原先輩だろう。
山ちゃんは「芸人になりたい!」と入寮日に宣言したものの、楽しいキャンパスライフを送るうちだんだんその目標を蔑ろにしてしまい、机の引き出しに溜まっていくNSCの入学案内チラシを苦々しい目で見ていた。
そんな山ちゃんの背中を押したのが米原先輩だ。
ただのうざい先輩かと思いきや、誰よりも山ちゃんが芸人になることを望み、応援してくれた人だ。
暑苦しい程の愛が、応援が、とても素晴らしかった。
そして山ちゃんは、いよいよNSCの門を叩く。
そしてもう一つのハイライトは、大学でうどんを食べる若林のシーンだ。
学食は夜にはメニューがほとんど売り切れてしまい、安いシンプルなかけうどんしか残っていない。
だから若林は毎日仕方なくかけうどんを食べ、「うどんが美味しかった」という、毎日毎日同じ日記をつけ、一緒に芸人をやってくれる相方を探す。その繰り返しの地味な日々。
私はこういう、一見地味な繰り返しの演出が大好きだ。
こういうシーンがあると、少しの変化もグッとくるし、後からこのシーンの地味さが効いてくる何かが起こる、またはこの単調にも思える繰り返しが幸せの象徴だったりと、いろいろな思惑が含まれるシーンになることが多い気がするからだ。
案の定、相方として春日を(とりあえず)丸め込めた日の日記が「うどんが美味しかった気がする」という小さな変化を見せた時、私のツボはグッと押された。
2人は養成所と、若林は事務所かな?のオーディションを受けに行くという一歩を踏み出し、その後にお好み焼きを食べに行く。
2人とも「受からないと思う」みたいな発言をしているのにどこか表情が晴れやかだったし、その日の日記を書く表情も満足そうで、なんとも爽快なシーンだった。
そして、若林の日記の「うどんが美味しかった」の「美味しかった」の部分が、山ちゃんの書き殴りノートの「お好み焼きが」と合わさって「お好み焼きが美味しかった」になるという、最高の変化と融合を見せた。
2話のお気にいりシーン
うどんしか食べられない学食
毎日学食でうどんを食べる若林。先にも書いた、この繰り返しのシーンがとても好き。
その嘆きを日本語ラップで表現しながら食券を買うシーンは、DJ.WAKA感も味わえる!
海人くんってラップも上手。
コンビ結成の瞬間
春日には絶対断られないという若林の思いとは裏腹に、お笑い芸人の誘いをあっさり断る春日だが、飯奢るの言葉にその意見をあっさり覆す。
これが後のオードリーにつながるのだから、本当最高だよね。
芸人になる人間だからです!
米原先輩が、失恋した山ちゃんを連れてドライブに行くシーン。山ちゃんに本心を吐き出させる米原先輩が最高です。
第3話 潜水勝負に芸人人生の始まりを賭けた
いよいよコンビを結成し、本格的に始動する回。
山ちゃんは「侍パンチ」、若林は春日と「ナイスミドル」。
山ちゃんが相方に強く当たるシーンがわんさかになってきて、ナイスミドルの二人のほっこりルーティーンが入らないと結構辛いターンに突入。
実は周りでは、この辺(3〜5話)で脱落した人が多かった。
確かに、この辺りはむちゃくちゃ下積み時代で緩急の少ない展開だし、この後にやってくる活躍を知っているからこそ、まだ⁉ ︎みたいな、ジリジリした思いを感じやすかったかもしれない。
でも、今後やってくる神回の序章なので、ぜひサラッとでも観てほしい。
さて、暴君山ちゃんを和らげるほっこりナイスミドルのシーンだが、ほっこりに見えつつ、鬱屈とした思いが溜まってきている若林が垣間見える。海人くんの目の演技が相変わらず良い。
その原因は、芸人は学生限りと思っている春日。
若林が少し先のことを考えたり、口に出したりするたびに、春日は就活のことをサラッと口にする。その度に若林の目は泳いだり、死んだりする。
しかし、若林はその悩みに終止符を打つため、ルーティンで行っているプールで、春日に宣言する。
(春日の)潜水記録を上回ったら、卒業しても芸人な、と。
いうたら、春日的には学生限りのコンビと思っているのだから、それが成功しない方が良さそうなのに、その一方的な挑戦を止めもしないし、なんなら応援するし、そして成功したらテンションが高すぎもしない感じで普通に喜んで、褒めて、受け入れるところが最高に良い。
一方、暴君すぎる山ちゃんのせいで「侍パンチ」は早々に解散。
次に結成したのは「足軽エンペラー」だが、暴君な性格はそうそう変わるわけもなく、なかなか厳しそうな予感がする中、NSCでしずちゃんと出会う。
3話のお気に入りシーン
潜水勝負
先に書いた、春日が卒業しても芸人を続けるかやめるかを賭けた勝負シーン。二人ならではの関係性にグッとくるシーン
見守る柳沢慎吾おまわりさん
3話ではセリフもないけど、山ちゃんを静かに見つめている。のちに柳沢慎吾自体の起用が伏線だったことがわかるけど、良い距離感で心地よい。
第4話 天才じゃないことに気づく山ちゃんと、みんな死んじゃえって顔してる若林
まだまだ2人は花開かない。
若林はナイスミドルで、山ちゃんは足軽エンペラーでもがき続ける。
足軽エンペラーはガチンコバトルで優勝したり、どんどん力をつけているものの、山ちゃんの暴君ぷりのせいで、コンビとしては危うすぎる状態が続く。
今度の相方はかなり我慢強かったけど、やっぱり山ちゃんの暴君ぶりにはついていけなくなり、いつもネタ合わせをしている広場でとうとうブチ切れ。足軽エンペラーは解散することになる。
ただ今回は、解散が相手のせいとは思わない。
自分が一番正しい、天才だと信じていた山ちゃんだけど、この解散で「自分が天才じゃないことを認めないといけない」ということに気づき始める。
そしてこの回は、山ちゃんと若林にとって人生を左右する出会いがあった回でもある。
若林は、タニショーさんと出会う(現実世界では前田健さんのこと)
タニショーさんは、若林を見て、「みんな死んじゃえって顔してるね」と言い、若林は、この人には見抜かれている、嘘をつけない人だと思ったと後にドラマ内で語っている。
そして、まだ直接出会っていないが、南海キャンディーズのマネージャーになる高山さん、「たりないふたり」のプロデューサーの島さんが登場する。
大切な出会いの予感と、少しずつ変わり始める内面に、今後の流れも少しずつ変わってゆく。
4話のお気に入りシーン
和男君自転車ぶん投げブチ切れシーン
足軽エンペラーの解散が決まったシーン。
山ちゃんの暴君ぶりにさすがの相方和男くんもブチ切れ。かなりキレキレで、ビビる山ちゃんが面白いシーン。
柳沢慎吾おまわりさんが見て見ぬふりをするところも、今までをずっと見ているからこそな感じで良い
むつみ荘で大暴れする若林
伝説のむつみ荘は外観は本物を使用したそう。部屋の真ん中に置かれたテーブル代わりの段ボールを見た若林が思いっきり潰しちゃう。
変な感じにテンションが高いのが若林感があって良い。
後から聞いた話では、ここは海人くんと純喜くんで決めた、台本にないシーンだったんだとか。
オードリーの解像度高すぎだろ(天才)
第5話 春日としずちゃん
まだ正直地味展開。だが、南キャンが結成され、ナイスミドルが解散の危機を脱する、重要な回。
すなわち、二人の相方、春日としずちゃんをきちんと分かってもらう回である。
のちに待っている神回連発は、丁寧に描かれているここら辺が、ガシッと土台になっているからこそだと思う。
5話は、足軽エンペラーが解散し、一瞬ピン芸人になるものの、今後は競争が少ない男女コンビの結成を目指そうと、しずちゃんの獲得に全力で取り組む山ちゃんと、
何がウケるかわからず迷路にハマって、見た目を変えたり試行錯誤を繰り返し、とうとう解散まで考えるウジウジウジウジ若林回。
若林は、コンビ解散を相談しようとむつみ荘へ行く。
春日は裸にライオンズのキャップをかぶって野球を見ている。
同じ問題を抱えているはずなのにこの違いは一体何なんだろうと、若林は驚きと呆れも感じている。
もう若林は爆発寸前。
惨めで苦しくて、この苦しみから逃れるためには解散した方が良いと思っている。
でも春日はそれに対し、今、どう考えても幸せ。(=解散する理由が見つからない)と答える。
これまでも春日は動じない態度で(自覚なく)若林を導いていたけど、今回はっきりとその不動の態度でコンビ解散の危機を救った。
そして山ちゃんは、ストーカーばりに追いかけ、しょうもない嘘をついてまで、しずちゃんをゲットしたけれど、おそらく決め手は、そのこととは全然関係なくて、「しずちゃんとなら面白いことができると思う」というまっすぐな気持ちと、その面白い未来を詰め込んだ台本を読んで、しずちゃんもその未来を確信できたからだと思う。
策略を綿密に練って笑いを作ってきたタイプの山ちゃんが、実はそこは全く響いていなかったじゃないかなと想像すると、たまらなく素敵な展開だなと思う。
こうして2組は、唯一無二の相方と一緒にさらに歩みを進めていく。
5話のお気に入りシーン
もうやめた方がいいんじゃないかな?
海人くんの演技力に胸を打たれる、春日に解散を持ちかけるシーン。飄々とした春日の返しが良い
「面白いからです」
ライブをずっと見にきてくれる女の子。なんでこんな自分たちを見にきてくれるのか、という若林の問いに「面白いからです」と答えるその子。
この言葉にこれから何度も救われる若林。恋の予感的な感じで描かれているけど、若林にとって「救い」となるのがこの子の、この言葉だった
第6話 正しい方向の努力を始めた山ちゃん
6話からは完全に山ちゃんのターン!
しずちゃんと南海キャンディーズを結成し、ネタ作りに励む日々。
一般人にはなかなか分からないところなのだが、‘芸人ならボケたい‘みたいな感情があるらしく、山ちゃんもボケに執着して、最初は2人ともボケる台本を作る。しかしどうも面白くならない。
でも山ちゃんは気づいている。
しずちゃんをボケとして活かす漫才の方がきっと面白いことを。
でもプライドがそれを許さない。したくない。
そんなある日、彼女とご飯を食べていた定食屋にしずちゃんがたまたま来て、その様子に山ちゃんが逐一ツッコミを入れていたら(ツッコまざるを得ない奇行をしずちゃんがしてた)彼女が、笑った。
薄々気づいていたことが図らずも実証されてしまい、しずちゃんをボケとして活かし、自分がツッコミになる台本を作ろうと決意する。
その台本を書き始める前の葛藤シーンが6話のハイライトだろう。
部屋の中に溢れた、自分を鼓舞する言葉の嵐。
俺は天才だ!と書かれた紙をじっと見る山ちゃん。
その直後、山ちゃんは暴れ出す。
天才はあきらめないといけない。
自分のポリシーを曲げないといけない。
それに気づき、悔しい思いをぶつける。
しかし、その葛藤を経て書き上げた台本で臨んだ舞台。その舞台袖で「台本を書いている時、楽しかった。その漫才が楽しかった」と山ちゃんは言う。
あきらめた先に光があったのだ。
そのスタイルが南海キャンディーズの成功の最初の一歩となった。
その後も、しずちゃんが欠点に感じているところを武器にすれば良いと提案したり、収録に呼ばれないとわかるとストリートライブをしたり、今までも努力家だった山ちゃんだが、唯一無二の相方と正しい努力をし始めて、なんとも美しく爽快な展開だった。
一方の若林は、エンタの神様の収録に参加したものの、放映がされず悶々と待ち続ける日々。
そんな中の癒しは、若林のおばあちゃん。
ファミレスで一日ネタを書ける芸人はお金があったんだなと言う若林に、お家でファミレスごっこをしてくれるおばあちゃん。
これ以外でも、居心地の悪かった実家でも、おばあちゃんが笑顔を引き出してくれるシーンが多く、癒しのシーンになっている。
待っているだけの若林は、長期入院していてようやく退院してきたタニショーのライブパフォーマンスを観ながら、自分の不甲斐なさに涙を流す。
今、幸せじゃない。生きながら死んでいるようだ。
6話のお気に入りシーン
ツッコミを入れる山ちゃん
定食屋でしずちゃんにツッコミを入れまくる山ちゃん。
ツッコミに転身するきっかけになった些細な出来事ではあるけれど大切なシーン
天才をあきらめた葛藤の瞬間
しずちゃんをボケとして活かし、自分がツッコミになることを決意した苦しい瞬間。
最大級に増えた貼り紙の巣窟の中で暴れ出す苦悩山里が最高のシーン
坂に寝転がるどん詰まりの若林
いろいろどん詰まった若林。何もかも嫌になって道路に寝転ぶ。
ここにいたら死ねるかな?と、かまってちゃんのメールを打ちながらも送れない、そして、車が来そうな雰囲気になったらすぐ退いちゃう若林。どん詰まりでワーワー言いつつも何も思い切れない若林が愛おしい。
第7話 ここからの勢いは止まらない!努力の天才 山ちゃんに心打たれる2004年M-1グランプリ
ここからは、漫才の再現がすごいなど世間的にも話題になり、とうとう活躍のスタート地点に差し掛かってくるので、もう最後まで完走不可避。
実際、初見の時の私もこの回でグッと心を掴まれ、見終わった後、下記の記事をものすごい勢いで書いた。
なんといっても、とうとうM−1なのだ!
南海キャンディーズが準優勝するまでの話だから、もう夢中になってしまう。
それにしても山ちゃんの綿密な戦略立てはすごい。
これって、仕事や勉強にも活かせるよなぁとそっちで興味が沸き、著作の「天才はあきらめた」を買って読み始めたのもこの頃だ。
一方のナイスミドルもM-1に出場するが、2回戦敗退。
決勝戦で戦う南キャン、テレビの前で決勝戦を見るナイスミドル。
負けてももはや勝ち状態の無双 南海キャンディーズを目の当たりにして、まだまだ絶望を感じている若林だが、あと4年、あと4年!と視聴者的にはもうワクワクしかしない展開なので、次の回がただただ待ち遠しくなる。
ラストはコンビ名が「オードリー」に変わり、現代に繋がっていく予感のするシーン。
とうとうオードリーが陽の目を浴びるのだ。
7話でお気に入りのシーン
M-1決勝漫才シーン
ここしかないでしょう!何回観たか分からない!
M-1決勝進出の瞬間
南キャンがファイナリストになった瞬間!
ファイナリストが書かれたリストにコンビ名が書かれているのを見た山ちゃんの表情は何回見てもグッとくるし、(ずっと南キャンに冷たく当たってきてたスタッフの)朽木さんへの復讐シーンもウケるし、その後のしずちゃんと高山マネージャーと嬉しさを噛み締めて、間違っていなかったことが証明されたシーンは本当に最高でした
「任せます」
「俺と一緒に芸人やってくれる?」「俺が辞めたいって言ったら?」「お前が限界です。俺はまだ頑張れたけど相方が限界なので辞めさせてくださいって言わせてくれよ」
第8話 W主題歌で奥行き爆増!ズレ漫才も誕生寸前
まず、この回からW主題歌になった。
「こっから」が良過ぎて、いくらキンプリと言えども分が悪いのではと心配していたのだが、心配無用だった。
「こっから」と比較すると落ち着いた、静かな始まりの曲なので、日曜の憂鬱を吹っ飛ばす感が足りないかも?と、エンディングが流れた時は思ったのだが、物語展開や何度も見返していくうちに、むしろ、ナイスミドル→オードリーにコンビ名が変わる予感のシーンをラストに持ってきた7話から、このエンディングの方が良かったのではと思うほどになった。
ちなみに、もう何年ぶりか分からないけど、こっからもなにものもCDを買った。
M-1で準優勝した南海キャンディーズはブレイクして忙しくなる。しかし世間の注目はしずちゃんに。
山ちゃんはまたもや嫉妬の塊で悪いところが出てきてしまい、コンビ仲は雲行きが怪しく…。
一方若林は、オードリーにコンビ名を変えてから、トーク力を磨くために、春日の自宅でトークライブを開くことになった。
状況的に惨めなのは変わらないけど、それは間違いなく糧になっているし、少しずつ状況は変わっている。なんせ、まだ若林は気づいていないで、何かに気づきそうになっている。そう、世紀の大発見「ズレ漫才」だ。
さらに、8話では、ラジオのフリートークの番組のオーディションに合格し、若林のトークが初めてラジオから流れるという胸熱展開。
「本気で悔しかったり惨めだったりする話は面白いんだよ」という評価の言葉をもらい、惨めさに押しつぶされそうになっているその時点の若林の救いにもなったし、今後のラジオの若林の軸にもなっていたんじゃないかなぁと思う。
いよいよ次回は伝説の9話。
ラストシーンは、2008年のM-1敗者復活戦に立つオードリーと南海キャンディーズだ。
8話でお気に入りのシーン
フリートーカー・ジャック!のオーディション
ラジオ出演のオーディションで披露したフリートーク
ズレ漫才の誕生の兆し
とうとうキタ!ワクワク感が半端ないシーン
愛のあるエンディング
また本編ではないけど入れたい。
エンディング曲の変更に伴い、ビジュアルも変更。「こっから」で勢いよく物語が始まり「なにもの」で日曜の夜にやさしく溶けていくような終わりを迎えるだが情、天才すぎる
第9話 何度でも観たい神回、オードリー敗者復活戦
9話は、いよいよオードリーがM-1敗者復活をし準優勝する神回。
予告では、一瞬の漫才に(めっちゃ似てね!?)と動揺。
さらにオードリーが敗者復活を遂げたところが映っていて、まぁ予告で隠したところで現実ですでにネタバレしているのだが(笑)そこは見せても良い、他に見どころがたくさんあるっていう自信なんだろうなぁと思ったら、さらにワクワクが止まらなくなり、1週間、放送を今か今かと待っていた。
予告含め、この回は何回繰り返して観たか分からない。
春日とのズレが漫才になることに気づいた若林は、ピンクベスト、テクノカットの、いわゆる春日を作り込み、オードリーはいよいよ完成形に近づく。
これはいける!と、意気揚々と2006年のM-1にエントリーをするが、結果は2回戦敗退してしまう。
この回はとにかくハイライトだらけなのだが、まずは敗退が分かった後の、春日が若林に「春日はこういう時どうしたら良いのか」と聞くところ、それに対し若林が「凹みもしないし凹んだふりもしないのが春日だ」というやりとりがもうたまらない。
春日は若林さんの作品だ、と言っているのを聞いたことがあるが、その名の通り、若林が作る春日に、春日は全面的な信頼を寄せ、細部まで、大事なところまでしっかり春日であろうとする。その信頼関係にグッとくる。
敗退後、彼女もおばあちゃんも、自分のことを面白いと言って励ましてくれたが、若林の心は晴れない。
悔しくて悔しくて、せっかくおばあちゃんが譲ってくれたおやつのエクレアを窓ガラスに投げつけてしまった。でも結局そのエクレアを拾って食べるところがなんともカッコ悪く、愛おしい。
その後、渡辺正行が審査員を務める新人コント大会のオーディションに出る。
9話が放映されるまでの1週間、待ち遠しくて色々情報を検索してしまっていたので、ここで渡辺正行に認められたことは知っていた。
と思っていたら渡辺正行本人が、本人役で出演!これはアツい。
そしてやっと、「M-1で戦える漫才だ」と評価してもらえた若林は目を潤ませる。
ズレ漫才を発見した時、良いデタラメができたと思っていた。でもそれでも売れなかった。
ここでようやく認めてもらえた。良いデタラメであることが、やっと、やっと証明されたのだ。
ずっとズレ漫才の面白さが分かっていなかった(この時点でも?)春日が「あの漫才面白かったんですね」と若林に飄々と言うところも、春日すぎてめちゃくちゃ良い。
一方山ちゃんは東京へ行くことを決意。
いつもの広場で彼女にそのことを告げた後の、ずっとずっと見守ってくれていた柳沢慎吾おまわりさんの「あばよ!」が心地良い。
物語はいよいよ2008年M-1グランプリ敗者復活戦へ。
もう何も言うことはあるまい。
圧倒的な4分間を刮目せよ。
#こっち側 で海人くんが言っていたが、この敗者復活の漫才は、本物さながら大勢のお客さんの前で行い、しかもパートごとに純喜くんと練習はしていたものの、実は通しでやったのはこの日が初めてだったと言う。すごすぎる。
そしてこの漫才の中で、テクノカットをしているのは春日と柳沢慎吾くらいというネタが出てくる。
柳沢慎吾おまわりさんはこの伏線だった。
でも役どころは山ちゃんを見守っていてオードリーには全く絡んでいないとこがオシャレすぎる。
もう一つ言えば、この敗者復活の時の実際のリポーターはタニショーさん役の藤井隆さんで、リポーター役をやっていたマヂラブの村上さんは、この時の敗者復活戦にいたと言うのだから、エモすぎるでしょ。
私があんまりお笑い詳しくないので気づいていなかったのだが、小ネタはこれ以外にもたくさんあったようで、そういったところも楽しめると思う。
そして見事に敗者復活を遂げたオードリー。
決勝の会場に向かうタクシーに乗り込む時の「アタシちゃんと春日をやれてましたか」という春日の確認、若林の「春日より春日だったよ」という返し、
駆けつけていた若林の彼女(元彼女?)の「面白かったです」という口の動きをタクシーから見つめる若林、
エントリー番号4431(オードリーのエントリー番号)が読み上げられた時の、若林のお父さんの44と31の阪神の選手の背番号で興奮している、そこかよ!と突っ込みたくなるほのぼのシーン、
本大会の決勝で、春日が噛んででもそれがウケるという伝説のシーン、
そして、たりないふたりの始まり、それを見るクリー・ピーナッツ(Creepy Nuts)のふたり。
もう見どころしかなくてまとまらないのだが、物語はこの後も神展開が続いていく。
9話のお気に入りシーン
凹まないのが春日
9話はレビューとお気に入りシーンがだだ被りしてしまうのだが、まずこのシーンは欠かせない。いけると思った矢先の絶望と、ふたりの信頼関係が美しい
敗者復活漫才
まだ言うかという感じだけど、やっぱりこの回はここ無くして語れない。
撮影日が、King & Princeの3名が脱退する2023年5月22日で、そんな中でもこんなに素晴らしい演技を魅せる海人くんに脱帽
敗者復活の瞬間
先に書いた、ハイライトが全部詰め込まれてるシーン。結果が分かっているのにこのシーン観る時はいつも緊張するし、感動してしまう
第10話 たりないふたりはこっから始まる
オードリーがとうとうブレイクし、忙しい日々を迎える回。そして、たりないふたりが本格的に始動する。
最初のシーンの楽屋で、ここで寝ちゃうのはさすがに売れっ子過ぎるとか、オーディションを覗きに行って頑張りたまえと声をかけたいとか、もうウキウキが止まらない様子は本当に見てて微笑ましく、良かったね…良かったね…という思いが溢れてしまう。
しかし、来る日も来る日も春日の節約生活のロケで、売れた嬉しさがありながら、面白いことができているのか不安に襲われ、若林は楽しくない。
売れてテレビに出たら幸せになれると思っていたのに、売れて良かったことよりも、売れて悪かったことが増え続ける日々だった。
そんな中、オールナイトニッポンのパーソナリティに抜擢される。
日々、溜まり続ける鬱屈をぶちまける場ができたのだ。
それを思いっきり出せる場所がここで出来たことはめちゃくちゃ運が良かったと思う。
これ以降、売れて悪かったことが増える描写はなかった。
一方、山ちゃんは、スッキリの天の声がスタートして、コンビ仲は悪いままではあったが、仕事は順調な日々。
そして、島さんがずっと決められていなかった、山ちゃんの相方に若林の名前が上がり、ふたりはとうとう出会うことになる。
「たりないふたり」の準備は整った。
たりないふたりは見たことがなかったが、放送時ちょうどTverで配信されていたので、少し観てみた。面白かった。
そしてより、だが情に夢中になった。
本物を観て、創作によりハマるのは我ながら変だなぁと思うけども。
慎太郎は、見た目も話し方もあれだけ寄せているのにスッキリのおはようございますの言い方が違うのはなんで?と思っていたけど、たりないふたりの初ライブ後、あの「おーはよーございまーーす!!!」が聞けた。
俺って漫才師なのかな?って悩んでいた山ちゃんにとってもこの、たりないふたりは確かな自信になった。
それがあの、おーはよーございまーす!!で表現されていてグッときた。にくい演出!(歓喜)
10話のお気に入りシーン
楽屋で寝ちゃいそうな若林
最初の楽屋の幸せなシーン。浮かれてる様子がひたすらかわいい
虎の被り物がかぶれない若林
お笑いポポロで虎の被り物を被らされるのに拒否反応を示す若林。オフショットではノリノリアイドル風情でかぶる海人くんがウケる
オードリーのANNが始まる
海人くんが若林さんの話し方を覚えるのに使ったというラジオ。ここからラジオ描写も増えていく
第11話 それぞれの行く道、出会いと別れ、再生
この回から、若林が、物語の展開に合わせて自身のエッセイを読み上げるナレーションが増えてくる。
ラジオもそうだけど、あまりにも話し方が似過ぎていて、ナレーションだけは本物の若林さんなんじゃないかと疑ったことは数知れない。
本物の若林さんの言葉を借りれば、後半はもはや狂気だった。いや、まさに。
特にこの回は、若林の3つの別れと、クリー・ピーナッツとの出会い、山ちゃんの再生が描かれる、心を揺さぶる回だ。
最初の別れはおばあちゃん。
おばあちゃんとのシーンは癒しのシーンばかりだったので、視聴者的にも寂しさを感じるのだが、サラッと笑いで〆るところが良かった。
おばあちゃんが亡くなった後、父親が入院した。
そんな中、外出許可をもらって、若林と2人で出かけたのだが、そのときのやり取りは涙無しには見られなかった。
ずっと自分の著書を読んでないと言っていたのに、父親のふとした一言で、実は読んでいたことが分かったり、若林が今、幸せか問いかけたときに「死にたくないと思うくらい幸せ」と返ってきた。その言葉に、若林は涙を堪えたり。
売れるまではあまり関係が良くなかった父親みたいだけど、死にたくないと思うくらい幸せという言葉は、最大級の幸せ表現で、これはたまらないなと思った。
そして、父親との別れは若林に、会うことについての考えを改めさせた。
そしてその2週間後、タニショーさんが亡くなった。
若林は、喫茶店で注文したパスタを傍に、エッセイを書く。
パスタは、今も残る前田健さんのTwitterの最後の投稿に添えられていた写真だ。
そして若林は、「たりないふたり」という曲を勝手にリリースしたクリー・ピーナッツに、感謝の気持ちを伝えに会いに行った。
実際のCreepy Nutsが、この2人が好き過ぎて、勝手にリリースしたという、伝説の一曲だ。
若林と山ちゃんが、こんなのが誰に届くんだ?という思いで迎えた、たりないふたりの初ライブ。
それが、こんなにも才能溢れた人にも届いていたのだ。
その感動は、山ちゃんにも力を与えた。
ある日、しずちゃんから、もう一度漫才をやりたい、M-1に出たいと告げられる。
真剣にボクシングに取り組んだことで、本気でお笑いに取り組んでいた山ちゃんの思いを改めて知ったのだ。
その言葉に、覚悟を持って返事をしたいと考えた山ちゃんは、ラジオのゲストにしずちゃんを呼び、M-1にもう一度出ることを宣言した。それを電波に乗せた。
このやり取りをラジオで聞かせるところに、山ちゃんの並々ならぬ決意を感じた。
めちゃくちゃカッコよかった。
7年ぶりのM-1は大変だったが、怒りをガソリンに、届いていた感動をガソリンに、ネタを作り、本番に臨んだ。
優勝はできなかったのだが、決勝でやろうと思っていたネタをラジオで披露した。
南海キャンディーズの漫才に惚れてマネージャーになった高山さんが見守る中、リスナーが見守る中、堂々と披露した。
めちゃくちゃカッコよかった。
そして2018年、わたしも7話を観た時点で購入した「天才はあきらめた」が出版された。
11話を視聴している時点でまだ読み終わっていなかったのだが、なんと解説が若林さんとのこと。
なにそれ、やば。
慌てて解説を読むことにした。
11話のお気に入りシーン
ばあちゃん、ありがとう
もう一度、漫才がやりたい
親父はさ、今幸せ?
山里亮太は天才である
第12話 これでいい。だってふたりの物語は終わってない
最終回はもはや2023年の、ガチの現実です。
たりないふたりがドラマになる、2人を演じてくれる俳優さんが今日来てます、というシーンすらあり、ドラマが現実に追いつく回です。
2019年、山ちゃんが結婚。
妬み嫉みキャラの山ちゃんが、ものすごい幸せを掴んだということで、一部ではあるものの、芸が受け入れられないという声があり、キャラ作りに悩んでいた。
しかしその悩みに対ししずちゃんは「(もっと)おもろくなったらええだけの話やん」と、繰り返し伝える。
ロールプレイングゲームの村人みたいに同じセリフを繰り返していたしずちゃんだけど、めちゃくちゃ痛快だった。
一方若林は、高校の同窓会に参加。
同級生からせがまれ年収を教えたところ、喋ってご飯を食べるだけでそんなに貰えるの⁈という言葉をぶつけられる。
若林が抱える葛藤や思い、ここまでの苦しい道ははここにいる誰にも分かってもらえない。
孤独に苛まれた帰り道で、若林は暴れる青年に会う。
暴れる若者を見て、こいつとは絶対気が合う、でもそれはもう許されなくて残念だ。と思う若林。
同窓会で感じた孤独も影響し、そこでも圧倒的な孤独感を覚えたのだろう。寂しいシーンだけど美しいシーンでもある。
このシーンは好きすぎて、下記の記事にも書いた。
2020年、たりないふたりの解散ライブ開催。
ドラマのオープニングもこのライブの始まりが使われている。
観客のいない会場に2人が両袖から出てきて、観客のいない座席に、2人の背中が映るところが本当に堪らなくて、これがとうとう本編で見られることに興奮を覚えた。
解散ライブには、クリー・ピーナッツが来て、たりないふたりを披露する。
クリー・ピーナッツ役には芸人のかが屋が起用されているのだが、この2人もすごい。
Creepy Nutsの実際の映像も観たけど、めちゃくちゃ似てる。
まじでこのドラマ、天才しかいない。
解散ライブから3年後の2023年。
山ちゃんがゲストでやってきた0時の森が放映されている。
そして「だが、情熱はある」が制作されることが告知される。
今日は、2人を演じる俳優さんが来てくれています。と、髙橋海人と森本慎太郎が入ってくる。
それを出迎える、若林役の髙橋海人と、山ちゃん役の森本慎太郎。
ジャニーズさんくるなんて思ってないじゃない〜と言う、若林役の海人くん
だが情が始まるんだよ〜春日役の戸塚くんがさ〜と、ラジオで春日役の純喜くんとしゃべる若林役の海人くん
ドラマの実況をツイートする、山ちゃん役の慎太郎
ナイスミドル差し入れしに来る、若林役の海人くん
山ちゃん役の慎太郎のラジオに来る慎太郎
大渋滞wwwwwwwwww
この時空歪みまくりの演出は、何回観ても楽しいし、元ネタも公式で上がっているから、見比べるのも楽しい。
そして、最後の2人のセリフは、「漫才したいなぁ。」
ラストシーンは、2人が同じエレベーターに乗り込み、お疲れ!と言い合って、エレベーターが閉じる。
あっさりと終わるのだが、これで良いのだ。
なぜなら、ドラマの終わりは現実に繋がり、現実のふたりはまだまだ続いていくからだ。
12話のお気に入りシーン
せっかく話が合うのに
大好きなシーン。若林の圧倒的な孤独感が、圧倒的な表現力で再現されているしびれるシーン
明日のたりないふたり
解散ライブ終盤の迫力のやりとり。本物の方も思わすみてしまった
若林と髙橋、山里と森本
頭がバグる、胸熱演出
こちらはカレーパンを差し入れる本家の動画
以上、情熱があり過ぎる「だが、情熱はある」全話レビューでした。
ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます!
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