大学時代に不登校になったこと⑥~就職と反省~
8.就職後
就職後は引きこもりになることもなく、今までのところ通常の生活を送ることができている。卒業直前に大学卒業時に保健センターで多めに向精神薬と睡眠導入剤を処方してもらったが、就職後にこれらを使うことはなかった。
全く危なげなく過ごせていたわけではない。就職後も半年のタイミングで少し危ないことがあった。しかし、この時は早い段階で周囲に相談することができたので、原因を対処することでほとんど影響なく仕事を進めることができた。
お守りとして持っていた薬を捨てたのは、就職して2年くらい過ぎたときだった。そのとき自分はやっと完全に立ち直ることができたのだと自信を持って言えるようになった。
9.再発の可能性
よく、うつ病は再発するとか、一生付き合っていくもの、ということを聞く。当時はそれがとても怖かった。今後、自分が働いていく中で症状が再発するのではないかとか、ずっとこの焦燥感を感じ続けることになるのだろうかとか考えていた。
しかし、10年近くたった今、症状が再発する兆しや焦燥感を感じることはない。自分はそのようなうつ病や適応障害の手前で手を打てたことも良かったのだろう。
もちろん将来、再発する可能性を否定はできないが、再発の可能性はそこまで高くないと考える。
理由は2つある。
一つは価値観が変わったことだ。昔は大学院生としてできて当然のことができなかったり、知らないと恥ずかしい常識を知らないことがつらかった。しかし今は大学院生ならできて当然なことができないこと、自分の知らない常識があったっていい、と思えるようになった。
そう考え方が変わると当時の自分が悩んでいたことは些細なことに思えてくる(物事への感受性が鈍ったともいえる)。だから、今、昔と同じ状況になっても、そんな些細なことでは挫けないと思っている。
もう一つは経験をしたことだ。一度精神的にバランスを崩す経験したことで精神的にバランスを崩すタイミングが分かったし、その対処法も経験した。
ストレス耐性が一般の人より強くなったとまでは言えないが、ストレスがかかりすぎないような安全弁を設定できるようになったと感じる。そういった安全弁は不登校を経験したからこそ設定できるようになったものだ。
10.どうすればよかったか
ここからは反省となる。
Q.この不登校生活を脱するために私はどのようにするべきだっただろうか。
―――3つルートはある。
①大学4年生の段階で、大学院に進学しないという選択肢をとるべきだった。これは自分の能力や性格、研究との相性をもっと吟味していれば、学部での卒業という選択肢をとることができたかもしれない。
当時の自分には全く選択肢になかったので完全に後出しだが、大学院に行きたくなったら、就職してから大学院に行っても良いのだ。
②修士1年の不登校が長期化する前に精神バランスがおかしくなった早い段階で周囲に相談するべきだった。自分の現状や精神状態を周りの人やカウンセラーに相談し、早い段階で抜け出すことを検討するべきであった。
問題は問題になる前の段階で、周囲を巻き込んでおおごとにしておくことが、最も良い処置であることが多い。
③長期の不登校になった以上は、専門家に相談するべき。ここは正解を選択することができたので、不登校生活が終わるきっかけになったし、今の健康的な生活につながっていると感じる。
ただし、当時の私は引きこもりからの回復は長期になることを理解しておらず、引きこもりを再発させたことは防げたかも、と考えている。
私は、心療内科に通えば、薬を飲めば、明日にでも通常の研究に戻れると思っていた。あるいは適切に治療をすれば簡単に回復すると思っていた。しかし現実には、カウンセリングや薬を飲んでも、自分で認識できるほどの短期の回復はなく、浮き沈みのある長い回復期間が必要だった。
そういったカウンセリングや治療に対する過度な期待からの引きこもりの再発であったため、再発を受け止められず、再発した引きこもりを長期化させてしまったのではないかと考える。
(⑦に続く)
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