楽に仕事するために認知負荷の高さをコントロールする3つのポイント
はじめまして、
株式会社MIMIGURIでPMをやっています。湯川卓海と申します。
この記事は、MIMIGURIメンバーが6つのキーワードで連日記事を書いていくMIMIGURI AdvetCalendar2022(15日目)の一環として執筆しています。
今、この記事を最後まで書き終わってからこの冒頭を書いているのですが、多分「理論と実践」の往復ってなんでやるの?という記事になってると思います。それを念頭に置いて読んでみてください。
ガチで理論と実践往復している人からすると怒られそう!怒ったらごめんなさい。
しかも僕くらいの仕事量で認知負荷高いとか言ってねえぞ!という声も聞こえてくる気がする。許してください。
僕は今、MIMIGURIでなにをやっているか
さて、MIMIGURIにいると様々な種類のプロジェクトがあります。僕が今関わらせていただいているものだと、
クライアントワーク
新規プロダクトのUI/UXデザイン
社内メディアの運用/改善
ミッション・ビジョン開発
マネジメント/経営人材の育成
新規事業開発の壁打ち
自社事業
新規事業立ち上げ(マーケ/CS/サービス開発)
社内の動き
ナレッジ共有会
チーム対話会
深く関わっているものからちょびっと関わらせていただいているものまで様々ですが、とても彩り豊かなラインナップです。
さて、これらに同時に関わりながら日々生きているとなにが問題でしょうか。そう、「認知負荷の高さ」です。
ただでさえ、案件のバリエーションが豊かで日々認知負荷が高い生活をしているなかで、さらにMIMIGURIには毎月5時間くらいの全社会があります。
この全体会、とても内容が濃くて毎回面白いのですが、ときたまあまりの認知負荷の高さに社員の方々からは悲鳴が聞こえてくることもあります。
日々の認知負荷の高さに悩む人は結構いそう
常時接続の時代、日々大量の情報が流れているスマホの画面を常に見てしまう僕たちは情報量の滝に打たれ続けています。
ただ、この認知負荷の高さ、あるポイントを抑えることで軽減できると思っています。今回はそのために僕がやってみていることについて書いてみようと思います。
「自分の認知のポイントを押さえてハックする」というのは僕の趣味でして、この系列で、MIMIGURIが発信しているCULTIBASE Radioでも趣味である読書を習慣化する方法を話したことがあります。これは今日のポイントと全く同じ内容ではないですが、まあ似てると思います。
仕事忙しいんだよな〜
仕事のこともんもんと考える時間減らしたいな〜
仕事やりながらも趣味とか他のことにも脳みそ使えるようになりたいな〜
という方にとって少しでも参考になっているといいなあ〜。
自分の認知負荷をコントロールできると、苦しい滝行が楽しい滝行に変わっていきます。本当に。
情報の受け取りと認知負荷について
僕たちは情報をどう受け取るのか?
まずは情報を僕たちはどう受け取るのか?ということを仮説的に考えてみたいと思います。
土台となっているのは現象学の知識ですが、かなり雑な僕の言葉にしてしまっていて、仮説の域をでない点ご了承ください。
僕たちはまず、情報を目でみることで認識をします。この時点ではまだ「情報があるなあ」ということしかわかっていません。
この次に、判断をします。その情報はいいのか?悪いのか?あってるか?まちがってるか?どういう意味があるのか?
この判断軸というのは1軸に決められるものではありません。情報によって様々な軸があります。
さらに、判断をして最後は行動を起こします。判断を踏まえ、行動しない、という行動をすることもあれば、いつ行動するのか、など色々な選択肢があります。
認知負荷が高い状態とはなにか?
さて、情報を受取る手順を整理した上で、認知負荷が高い状態とは一体なにか?考えてみます。
具体的な例があったほうがわかりやすそうだったので、Webサイト上の認知負荷、を例に説明してくれている文章を引用します。
さっきの図で考えてみると、下記のように、各レイヤーで課題が発生している状態が認知負荷を与えている状態と言えるのではないでしょうか。
「認識」フェーズ:画面を見てもなにがなんだかわからない
「判断」フェーズ:今自分はどうすればいいのかわからない
「行動」フェーズ:ボタンをおすことができない
というわけで、上記のことから仮説的にここでは認知負荷が高い状態=3つのうちどこかがスタックしている状態、と置いてみたいと思います。
認知負荷が高い状態を解消する3つのポイント
今回は仮説にのっとって、「認識」「判断」「行動」の3つのポイントを抑えることで認知負荷が高い状態を解消していく方法を考えていきたいと思います。
①認識:言語化やモデル図で俯瞰する
情報を認識したら、それをどう認識したか?まず言葉やモデル図に起こすのがポイントです。(この記事もまずはなに書けばいいのかぜんぜんわかんなかったので認知負荷ってなんだ?と思いながらとりあえず図に起こしてみました。)
実は3つのポイントのなかで一番これが大事であり、抜けがちなところかもしれません。
頭の中で考えていても、それがどう認識されているか、案外人間はわかっていません。まずは自分のノートに書きなぐってみたり、miroとかfigmaで図に起こしてみたり、1on1で上司に話してみたり、同僚に愚痴ってみたり、吐き出してみます。
そうすると、自分がいかにごちゃごちゃと認識しているか、わかってきます。
ごちゃごちゃしていることを認識したら、それを整理してみましょう。ここで整理する方法は1つではありませんので、整理方法に悩むかもしれません。整理する方法がわからないからごちゃごちゃしてるんだよ!と思うかもしれません。でもとりあえず手や口を動かして仮説的に整理してみます。
例えば、僕は最近新規事業立ち上げのPMをやらせてもらっているのですが、とても脳内がごちゃごちゃしていました。今もごちゃごちゃしています。
で、色々な人になんかこうごちゃごちゃしてて…とごちゃごちゃ喋っていたら、いろんな時間軸の悩みがあること、がごちゃごちゃしている原因なのでは?と思い至りました。
なので、こんな感じで時間軸ごとに悩みを言語化してみました。これでかなりすっきりしました。認知負荷が低減された感覚がありました。
認識のときに整理をするときのやり方としては例えば以下のようなやり方があります。
まず超ミニマムに雑に「行動」して振り返る
ちょっと、「行動」を先出ししちゃいますが、これが一番効くかも
大きなタスクであってもまず行動してみる、で振り返って「認識」の解像度をあげる
仕事と関係ないことをする
この記事(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/081600372/)でもありますが、シャワーを浴びたりするのは「判断」から離れて「認識」に目をいかせるために有用です。
僕の場合は映画とか演劇とかジムもつかってます。
理論書、学術書を読む
認識段階で整理したい場合は実体験が書いてある本とかよりも理論っぽいことが書いてある本がおすすめです。
例えばマーケティングについて悩んでる、とかだったらマーケティング理論の本読むとすでに構造化されてたりするので、それをたたきに整理してみることにつながります
1冊のものに従うよりも2-3冊読んでみると様々な整理方法があることを認識できるので「自分なりの整理方法」が見つかりやすいです
抽象的な、哲学書とかも読んでみる
哲学の本とかは普遍的な事象に対する構造化にアプローチしていることが結構あるので、実はとても役に立ちます
とくに領域をまたいで整理をしたい、未開の領域を整理したい、というときにはおすすめです
会議じゃない場所でラフに相談してみるとかでももいいです
そのときにしゃべってみると突っかかるポイント、とかが発見できるのでそこがまだ整理できてないポイントか!みたいな気付きがあります
②判断:実体験などのエピソードで選択肢を洗い出す
さて、認識のフェーズでごちゃごちゃしていたものが整理されました。ただ、整理をしただけでは判断はつきません。判断しやすくなった!というのはあると思いますが、ここでもポイントを抑えるとさらに判断がしやすくなると思います。
ここでも①で整理した言葉や図をもとにどう思う?と実体験がありそうな人複数人に相談してみることです。さっきから相談ばかりしているな。
「"複数人に"相談」というのは判断の答えが一つではない、という認識をもつために重要と考えています。判断というのは点でできるものではありません。その前にどういう歴史、文脈があったのか、どういう失敗、成功があったのかによって、どの判断をすることがよさそうか、変わってきます。
また、ここで相談した相手の判断にただ従い、判断をしてしまうとあとで後悔します。「あの人のせいだ」と他責になってしまうリスクも有ります。あくまで自分が判断するための材料集め、という認識をもち、最後は自分で判断します。
ここで相談をしてみることで、いくつか判断をするにあたり、論点が出てくると思います。こういう視点や文脈でみるとAという判断になる。こっちだとBという判断になる、などなど。
これをすると「それぞれの判断のメリデメがわかってきて」「でも最後は決めの問題だな」ということがわかってきます。この状態に持ち込むことが大事です。この状態になるまでは「なにか最もいい選択肢があるのではないか」ともんもんも考え続けてしまい、認知負荷が高い状態が続きます。
例えば、僕の事例で言うと、新規事業のマーケティング施策をゼロから立ち上げるときにとにかくどう判断すればいいのか?よくわからなくなっていました。そこで、「マーケティングが得意な人」「MIMIGURIの商材理解度が高い人」「事業の将来性を見据えている人」様々な人に意見をもとめてみました。
これにより、一つの正解がなく、文脈によって様々な選択肢があることがわかりました。
また、このフェーズでは、人に相談する以外にも下記のようなやり方があると考えています。
実体験系の本をひたすら読む
①のときと違うのは実体験系の本がここには適している、ということです。読むと背中を押されます。
実体験が書いてある本は様々な選択肢があるなかでの葛藤が見え隠れします。これが学術書や理論書だとあまり読めないところです。
類似案件とか、類似の他社事例の情報を漁ってみる
これも上と同じ理由です。様々な選択肢があるなかでどういう選択をし、そのあとどうなったか?という事例を読むことで判断をする勇気がでてきます。
最近だと企業発信のpodcastがとても充実しています。ぜひ色々漁ってみてください。
③行動:期限を決めて絶対やる
最後に行動をする際のポイントです。
判断の部分で書きましたが、情報を認識し、判断し、行動にまで至る際に判断には確実な正解というのがない場合が多いため、それが原因となって行動に至れない、ということが起きがちです。やろうと思えば判断フェーズで無限に考え続けることができるのです。
「いつやろうか、いつやろうか、はやくやらなきゃ」と思っている状態。これが認知負荷の高い状態です。
そのため、行動のポイントは「判断」を早めるため、「判断」を決めてしまうためのポイントでもあります。
ずばり、行動のポイントとしては「いつまでに行動するか」を決めてしまうことです。Googleカレンダーとかにいれておきましょう。
また、いつやるか?というのはマクロからミクロ、それぞれの粒度で可視化しておき、適切な定例だったり自分のタイミングで見る習慣をつけるとよいです。
僕の事例でいうと、新規事業のプレスリリースやLPのローンチ日を絶対に動かさないぞ、ということに死ぬほどこだわりました。
Paul Grahamも「自分がリリースしたものが恥ずかしくないなら、リリースが遅すぎるということを肝に銘じよう」と言っています。考え続けても、つくって市場に出してみることが一番学べるので、期限決めてさっさとやる。これが一番ですね。
まとめと3つのポイントに共通すること
さて、ここまで認知負荷を下げる僕なりのポイントを書いてみました。認識、判断、行動のポイントをちょっと絵っぽく書いてみるとこういうイメージになるでしょうか。
また、この3つのポイントには実は共通する考え方があります。先程の認知負荷の考え方をもう一度引用してみます。
そう、僕たちの脳みそのメモリ容量には限りがあります。なので、認識だったり、判断だったり、行動だったりの負荷を下げる際には存分に脳の外部のツールを使っていきます。
イメージとしては自分がツールを使おう、とするのではなく、ツールに自分が使われるようになるようにするには?と考えることです。例えば、Googleカレンダーの例がわかりやすいですね。Googleカレンダーに行動すべきタスクが書いてあるとき、もはや僕は自分で逐一判断して行動をしていません。Googleカレンダーにあやつられています。
同様に、認識や判断も、書き起こした図や言葉が正であり、自分の脳みそにあるものを信じない。もっと脳みそにあるんだったら、それを吐き出す、脳みそは空っぽにする。
そうすると、いろんな仕事をしてても認知負荷を下げて、楽に仕事をすることができます。
実はこれは様々な領域の理解の土台に使える考え方(と思う)
なんだかここまで書いていてとても普通な、仕事のやり方、考え方、みたいなことを書いてしまった気がします。みんなこれ読んでどう思うんだろう。当たり前すぎて面白くない、と思われた方いたらすみません。
ただ、個人的にはこの考え方をしておけば全仕事とか趣味とかを気持ちよくこなせるようになるのでは?と考えています。それくらい普遍的に使える考え方だと思っています。
事例:組織論に応用している"チートポ"
組織論で認知負荷にアプローチしている書籍といえば、『チームトポロジー』通称"チートポ"でしょうか。
この書籍とここまで書いてきたこととつなげると、ソフトウェアを認識レベルで整理して、A部分の判断をするのはAチーム、B部分の判断をするのはBチームと言うふうに認識レベルの整理を組織構造でお手伝いする、という仕組みになっています。
事例:PMはなにをやっているのか?(あくまで個人の考え)
僕は普段プロジェクトマネージャーとして案件に入っているのですが、だいたい、ここで書いたポイントのうちチームで取り組む仕事について、①認識領域と③行動領域の主導、支援を積極的にし、②判断領域をみなさんにおまかせする、みたいなことをやっていることが多いです。
また、構造的には入れ子構造になっていることが多いですね。よく会議の中で「抽象度が違う議論がでてきてごちゃごちゃになっちゃう」ということはないでしょうか?そういうときはこの入れ子構造の認識が揃っていない事が多いと思っています。これを整理していくのがわりとPMの仕事かな、なんて思ったりしています。
あとは、長期的なプロジェクトやアジャイル開発系プロジェクトになってくると、認識→判断→行動を繰り返す、ということになります。これがいわゆる「理論と実践の往復」ということとイコールだと思っています。
事例:ワークショップの考え方
MIMIGURIではよく、ワークショップなるものを企業様、社内両方に対して行います。そのときには下記のフレームを使うことが多いです。
1時間でワークをするときも、6時間ワークをするときも基本的にはこの流れが意識できているとワークとしてはうまく機能します。なぜか?
実はこのフレーム、今回の記事でいうとこういう役割を果たしているからだと思っています。
例えば、新規事業開発のワークショップをやるとしましょう。
知る活動では新規事業を考える上でのモデル的なことの考え方をみんなでインプットします。ここで少しそれを応用した事例も紹介できると次の活動の足場になります。
そのうえで、モデルをもとにみんなで選択肢を埋めていってみます。営業部のAさん視点だとこう意味づけしたくなる、企画開発部のBさん視点だとこう意味づけしたくなる。ここで様々な判断が存在することを理解します。
ワークショップには時間制限があります。そのなかで、決めきってプレゼンします。
社内でワークショップ形式でやってみよう!と思ったときにはこういう考え方をすると、複雑に考えすぎず、すっきりうまくいくと思います。
事例:ミーティングファシリテーションの考え方
ミーティングをしていて、「なかなか物事が決まらない」「何を話しているのだかよくわからなくなってきた」ということはないでしょうか?
そんなときにもこのフレームにそって考えてみるとわりと整理できます。
大体、ミーティングがカオス化している場合はは認識レベルの部分がごちゃごちゃしてしまっています。Aさんが話していると思っていることとBさんが話していると思っていることが違う対象を指している、みたいなことが起きてしまっているのです。
なので、そうなった場合は、プロジェクト全体をざっくりでいいので可視化して認識を揃え、この点を喋ります、と合意をとってから喋ります。
どうやってこの考え方を身体に覚え込ませるのか?
さて、ここまでの考え方を理解するのはできるかもしれませんが、意外とこれ、いきなり実践するのは難しいかもしれません。
そんなときにおすすめなのは、この3つを意識的にとりあえずひたすらやってみる、ということです。以外と認識のところで整理することを怠っていたり、判断で選択肢を洗い出さず行動しちゃってたり、考えてばかりいて行動にうつしていなかったり、ってことが多いと思います。
認識フェーズが足りないな、と思ったらが、ちょっと理論的なことを書いている本を読んでみる。とりあえず言語化してみる。
判断フェーズが足りないな、と思ったら、世の中の人たちが具体的にどういう判断をしているのか?事例を調べてみる。
行動フェーズが足りないな、と思ったら、とりあえずGoogleカレンダーに「これやる」と書いておいて、実際やる。
これを繰り返すことで、3つをバランス良く向上させることができる、と思います。
最後に
アドベントカレンダーってこんな感じでいいのか…?とよくわからなくなってきましたが、とりあえず書けたので、もうこれでいこうと思います。
実は他にもいろんなテーマで書いてみて、あ〜もうこれもだめ、あれもだめ、と何本もテーマを捨ててきました。でも、期日が迫ってきたのでこれにしたいと思います。
抽象的っぽい内容になってしまったことをとても反省しています。
さて、明日の記事はMIMIGURIで一番、Slackのtimesチャンネルが"やばい"男、矢口泰介さんです。矢口さんは多彩なMIMIGURI社員のなかでも特に「多彩」という言葉が似合う本当に色々なことをやっている方、と思います。お楽しみに!