ideo『葉月- idiot dance』
本日2024年8月31日に運営するレーベル CUCURUSS より新作の音楽作品がリリースされました。
ideo 『葉月- idiot dance』
ideo is ideo is ideo
葉月- idiot dance
君は夜の帳が下りた頃、ガサガサと葉や樹々を言わせて僕にその姿を見せたね。ライトで照らしたけれど音で君の姿が捉えられただけで、何処から来たのかは分からなかった。体の芯から興奮して身慄いしたのと、生の息遣いと足音が枝を砕いていた。そのあと、地上で何かを食べている音がして、それは西の方角だったので、僕はペンライトのLEDの光を細く光線状態にしてそのスポットライトの下で君は踊っていた。君は僕を知らなかったし、ずっと知らない。僕は君を知ったけれど、特に名前も聞かなかったし、付ける気もしない。「心」に「栗」と書いて「慄」なのはその禁断の果実をバリバリと食べて枝がガサガサと震えてバキバキと折れてそこに君が居たからだ。地上に降り立つ足元の草は無惨にも刈り払い機で切られてしまっていたけれど、短い草の絨毯と土が混ざって、小枝と小石と足許の土にうずくまるクロアシナガバチの巣は君の好物だった。折角闇夜の黒に慣れて紛れたその体毛を照らしたLEDを聖なる君は愚かしいと感じたかい? 眩しいからやめろとも言わずに未だ夜露に濡れていない刈り払い機製の草原の絨毯の上で、誰も気に止める事もなく踊る君はこの夜を支配する神様だった。僕は山羊は山羊だった。山羊は山肌の急傾斜な岸壁にへばり付いて葉っぱをむしゃむしゃ喰みながら、君のスポットライト下の挙動と言うか踊りをただ眺めていた。惚けたLEDの光は山羊の咀嚼に合わせて微妙に上下して、その後ろの山並みの稜線と先人が植えて其の儘になった針葉樹林の突端をほんのりと暗闇に浮かび上がらせていた。君の静かな吐息と動悸と僕の心臓の鼓動が暫く同期しながら少しづつずれて仕舞う。サッと言ってさっさと君は闇の奥に消えて仕舞う。足元には未だ、折れて先の尖った大降りの枝と棘の生えた木の実がバラバラと散らばっている。
カセットテープもございます。
ideo 氏曰く12ヶ月連続リリースだそうです。どうぞ宜しくお願いします。
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