或る日の妄想


ある日の妄想

ある日の日中、部屋の目立つところに堂々とネズミがあらわれた。

その日の前夜、夢を見て或ることに気が付いていた。

昔々、式紙使いといわれる方たちが居て、
その方たちがネズミを式紙として使う、
ということを聞いたことがありました。

前夜見た夢と式紙としてのネズミがリンクして、
部屋に出現したネズミは
式紙として送り込まれたネズミと思い込んでしまいました。

その日から、ネズミさんとの暮らしが始まった。

ネズミさんに朝の目覚まし役をお願いしたみた。
ネズミさんはわたしの要望を聞き入れて下さり、
次ぐ日の朝、要望通りの時間に
私を起こしに来てくださいました。

私は嬉しくなって、
そのネズミさんにご飯と水をあげる場所を作り、
毎日、新しいご飯と水を上げることにしました。

一ヶ月もすると、食べる量が増えてきて、
ある日、ネズミの数が殖えているのを発見することになりました。

その頃にはネズミさんの目覚ましは来なくなっていましたが。

目覚ましとして機能していた時期は二週間ぐらいでしたね。

ネズミの数が増えると同時に糞が目立つ様になり、
糞尿の臭いがたちこめるようになってきました。

式紙どころではなくなりました。
仮に式紙として送り込まれてきたにせよ、
ネズミは所詮ネズミなのでした。

一ヶ月ほどで家族も増え、
このままではネズミ屋敷になってしまう、
ということで、ネズミ退治をすることに。



秋から冬にかけての時期だったので
大掃除は年明けになってしまいましたが。

これには、後日談がありまして
ネズミさんたちが大方旅立っても
出しっぱなしになっていたネズミさんのご飯(殺鼠剤)が
少しずつ少なくなっているのに気が付きました。

ご飯は追加しないで、殺鼠剤をご飯のかわりに置いておいたのですが。

しばらくした或る日の朝、私がいつも座るところの横に
ゴツイ身体の立派な親ネズミが横たわっていました。

それから二ヶ月ほど過ぎたある朝、
冬なので野菜のキャベツをはだかのままおいておいたものが、
少し齧られていいました。

これは、悪夢の再来かと、すかさず殺鼠剤を出しておきました。

と、その日の夜夕飯を済ませて片付けをしているときに、
突然停電になりました。

次ぐ朝、停電の原因は漏電ブレーカーが作動しての、
我が家だけの停電だったことがわかりました。

その後、ネズミさんの気配はありませんでした。

思い込みとは恐ろしいもので、
一遍その眼鏡をかけてしまうと、
そういう見方しかできなくなってしまう、
という妄想でした。

自分が見ている世界はあるがままの世界ではなく、
自分の目というフィルターを通しての世界です。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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