米国から学ぶ、「マイナー・ニッチスポーツリーグ」の重要性②~NFLも昔はニッチリーグだった~
前回米国におけるニッチスポーツの発展とその役割に関わる触りを説明させていただきましたが、今回はもう少し深堀し、今米国で断トツの人気・収益を誇るNFL(プロアメフトリーグ)を例に①具体的にニッチスポーツが米国メジャースポーツの発展にどのように寄与したのか、また②ニッチスポーツがメジャーになる上で何が重要なのかにも少し触れたいと思います。(ニッチスポーツがメジャーにある為に必要なことについては、第三弾以降に触れます)
まず、前回(見てない方は以下ご参照)米国におけるすべてのメジャースポーツは最初ニッチ・マイナースポーツから始まったことを記載しましたが、ではメジャー化に成功できたものと、そうでないものにどのような違いがあったのでしょうか?
この場合具体例を見ていくのが最も早いかと思います。
米国で最も成功しているプロスポーツリーグとされているNFL(プロアメフトリーグ)を例にとってみましょう。今となっては世界一評価額が高いリーグと揶揄され、また資産価値世界一とも言われるダラス・カウボーイズをもが所属するリーグとなっていますが、(あまり米国でも知られていないですが)実はリーグ発足当初は将来的な存続が危ぶまれるほどのリーグだったのです。
(https://me.me/i/nfl-memes-surprise-well-now-it-makes-sense-11749519引用)
少しNFLの歴史を説明したいのですが、同リーグは1920年に米国オハイオ州というド田舎にて、American Professional Football Association(APFA)として誕生し、2年後にNFLへと名称を変えました。当時はオハイオを中心とした田舎に本拠地を置くチームがメインで、一時的に26年に22チームまで増えるものの、大不況や、そもそものリーグ運営のまずさから31年には10チームにまで減ってしまったのです。
そうです、NFLも発足後20年は全くリーグ運営が安定せず、その存続が真剣に危ぶまれていたのです。しかし、ここで終わらなかったのは、NFLの経営層の起点の良さ(柔軟性)があったからと言えます。彼らは当時のモデルだと、観客となる対象者数がそもそも少なすぎるため(注:TV放映も当時はなく、田舎町の本拠地周辺の住民しかファンを獲得できなかったため)、対象地域に何か問題が起きた際(例:大恐慌)、その影響をもろにチームが受けてしまうという、極めてVulnerable(脆弱)なリーグ形態であることに気付き、グリーンベイという田舎町に本拠地を置く1チーム以外は全てが大都市にチームを移転させたのです(筆者注:大都市に本拠地を置く事は次号で紹介するニッチリーグ成功の大原則となります。)。この時期の混乱については、①全てのNFL所属チームが一度は破産している事、②最初の41年間で41チームもがリーグに参戦後撤退したことからわかるかと思います。
さて、そんな困難・混乱を極めていたNFLですが、フットボールという競技自体の人気は米国でIvyリーグ(米国東海岸に属し、超難関校とされる8校が所属するリーグ)を中心に絶大であったため、そのスポーツを対象にしたプロリーグ発足の動きが後を絶ちませんでした。その最初の対抗馬となったのが、第二次世界大戦直後に発足したAll America Football Conference(AAFC)です。
同リーグは裕福な資産家を中心に設立され、NFLには無いイノベーティブな施策が多く例えば、安全性を高めるためにフェースガードをつけたり、コーチを年間契約としたり(NFLは当時コーチを重要視しておらず、時期によって変えていた)、Precisonパスパターンの導入(今のNFLでは当たり前の、パスプレーに関する明確なプレイパターンの事)だったりがありました。
同リーグはNFLと同等の人気を当初発揮したものの、所属チームが当時としては比較的小規模都市に属していたことなどの理由から、NFLに49年に吸収合併されてしまいます。ただ、AAFCが発明・導入した上記のような施策・取組は、所属チームと共にNFLに受け継がれました。
時が少したち1959年になると、また新規のアメフトリーグとして、AFL発足しました(他にも同時期に然程成功しなかったWFLの発足)。AFLは目の付け所が当時としては極めて優れており、リーグ発足と一番に①ABCチャンネル(米国超大手放送局)とのテレビ放映権(注:初年度は当時としては破格の2.1百万米ドル/年!!!!の契約)を獲得すると共に、(過去チームが発足しては消えていったジレンマからチーム数の拡大にNFLが消極的だったことを受け)当時NFLがまだ本拠地をもっていなかったものの、②アメフト人気が絶大だったテキサス州を中心にチームを発足させていったのです。AFLのチームオーナーの大半はNFLに新規チーム購入を拒絶された者であり、また各チームの本拠地はNFLがない場所に作られました。(注:上記2点も次号以降で紹介するニッチリーグ成功の秘訣要因です。)
AFLはその後も急成長を続け、60年代中盤までNFLと並ぶ人気を博し、最終的に両者の競争と共に選手の契約金が高騰しすぎたために、両者合意の下70年に完全合併し、前回紹介したMLBの例のように2リーグ制を敷く今のNFLの形となったのです。
次回に続く~~
(次回はNFLがその後さらに発展するうえで何が必要だったのかをより分析していきます。また新規ニッチリーグが成功するための要因分析も触れていきた
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