たった1人で温泉地に向かう
何も持たず実家に帰ったわたしは、何か目標を持たなければならなかった。何が自分を幸せにして、どう生きていきたいのか。必要なものは何か。
これまで続けてきた語学は引き続き続けるとして、それ以外に、自分は人生に何を求めているだろう。
20代の時にたくさん海外旅行をしたので、旅の息吹のようなものの魅力の虜になっていた。海外に行きたい気持ちはあるけれど、船出する財力、というか、お金が気持ち良いほど一銭もなかったので、別案を考える必要があった。
そうだ、日本にいても外国人がたくさんくるゲストハウスで働けば良いのではないか。
ゲストハウスで働いて、ノウハウを得た後で、自分でビジネスをスタートすれば、経済的にも精神的にも自立して、もっと対等な関係性を築ける人と一にいられるようになるのではないか。
そのためには、当たり前の健康な精神と身体が必要だ。
そうだ、温泉地に行こう。
ということで、別府に行った。
温泉の湯気とともに、変な気が充満しているのか、別府で起きたことの全てが奇妙だった。
歓楽街でかつて栄えた、ちょっと猥雑な古びた街だったからだろうか
アジア環太平洋大学という半分以上が留学生の面白い大学があって、文化が入り乱れていたからだろうか
なんだか見える世界が歪んでいた。
そして、わたしのことを好きになる人と嫌いになる人のコントラストが激しかった。
ゲストハウスの仕事は体力も使うから、結構疲れた。
でも、毎日温泉に入っては大地にチャージするかのように、生命と繋がり、みるみる健康になっていった。
あの時、異様なほど男性問題に巻き込まれた理由はいまだに謎だけど、くるくる回るコマみたいだったわたしは、あの時どこに転んでもおかしくなかったと思う。
ある時、天津から来た、というアメリカ人がゲストハウスに来た。
服が少しダサくて、スケッチブックを持って日本を旅しながら絵を描いていた。
このアメリカ人がその数年後わたしの夫になった。
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