あなたもわたしも、少しづつ無関心で残酷だ
このあいだ、触覚過敏の子の家に百年杉を敷いて、その子が思い切り寝転がったのをみて、嬉しさがこみ上げた。
そして先日、引きこもりの子の母親から、百年杉を敷いてから調子がよくなってきて驚いた、と、嬉しい報告があった。
当人やご家族からすれば驚きの変化。
百年杉はすごい!
・・と、あらためて思わされた。
けど、ほかの杉はどうなのだろうか?
加藤木材さんによれば、杉精油とその芳香こそが”杉のいのち”であるという。
手で触れてみると、
精油が染みわたっているところは、ほかのところよりも波動が強く、よく温まる。杉が発熱して「温かい」のではなく、触れた自分の手が「温まる」のだ。
また、百年杉を敷き詰めた部屋だと、いつのまにか鼻の奥が開いてビックリする。鼻呼吸がしやすいのだ。
雨量豊富、密植という生育環境のなか、100年もの年月をかけ、太陽と水と土のおかけで、精油分が蓄えられ、天然乾燥又は自然界にある温度での低温乾燥で、精油を保持したまま水分を抜くから、”奇跡が起きる”ような材になる。
生産者の畦地さんと加藤木材さんは、このあり方を貫いている。
でも、流通するほとんどの木材は、高温または中温乾燥で、細胞が破壊され精油が流出し、ただの木材=死んだ木材になってしまっている。
つまり、杉を植物として扱わず、モノとして扱っているのだ。
たしかに百年杉はすごいけど、おそらく日本のどの産地の杉だって、ちゃんと「いのち」が尊重されるように扱われれば、強弱の差はもちろんあっても、人を元気にしてくれるはずだ。
もともとある木の「いのち」が活かされない。杉の国に暮らしているのに、ものすごくもったいないことをしている。
ところが、
ふつうの生産者は、概ねわかっていながら木を「殺し」、ふつうの消費者は、わかろうとも感じようともせず、安いからと「殺す」側に加担する。
あなたもわたしも、みんな少しづつ無関心で残酷なのだ。
杉をたくさん植えて伐期を迎えたのに、石油化工品や防腐剤まみれの外材を使って、森をほったらかしにする。
伐採したら木をモノ扱いし、本来の力を失わさせて、結果として、自分たちが住む環境が貧弱なものになり、”奇跡の起きない空間”にしている。(そして杉を花粉症の原因として悪者扱いする)
このことは、この国の睡眠時間がすごく短いことや、自殺者が多いことや、20人に1人が不登校であることと、まったく無関係なのか?
杉で変わる人をみたら、森林の問題と住まいの問題は、そこにつながる社会問題だと感じる。
杉は日本にしかない固有種で、学名はクリプトメリアジャポニカ。
その意味は”日本の隠された財産”。
なんとも皮肉で、核心をえぐっている。
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(以下、自分に問いながら)
経済的な豊かさと、家族や友達と幸せに暮らしたいと、誰もが願うし、私もそうだけど、それがいのちを「殺す」側に加担していることで成り立っていること、それがどのような仕組みなのかを、わかっておきたい。
そして、”いのちを活かす”やり方で、幸せになれる方法を見つけたなら、そのあり方を選びとりたい。
(だから杉を敷いて、人と出会う)
そのあり方を貫くと、自分の尊厳が守られ、自分の全体の筋が通るはずだ。
私は、自分のあり方を見つけ続ける旅をする。
そこが、どうしても外せない。
そうしないと、糸が切れてしまったようになり、生きていることにならなくなってしまう。