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FAT LAVA: Ruscha【ライフワーク】
おはようございます。
今日はこれから降るみたいだけど、昨日は真夏日が来たみたいな日差しの強い熱い一日でしたね。
今日からは、いよいよ西ドイツ時代の陶器において、その代名詞とも言えるFAT LAVAの作品を多く作り、その名を世界に知らしめたファクトリーを1つずつ掘り下げていきます。
Ruscha(ルシャ)
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数あるファクトリーから、まず最初にご紹介するのはRushca。
Rushcaを選んだ理由は2つ。
このRuschaから後にFAT LAVAと呼ばれる理由となる『Volcano glaze(ヴォルケーノ釉薬)』を開発したこと。
数ある陶器の形で唯一と言って良いほどのアイコンの形、313を持つこと。
いわゆるFAT LAVAを見始めた段階では見ることが多くはない、言い換えればわかりやすいファクトリーではない。しかし、西ドイツの陶器やFAT LAVAの今の地位を確立し確固たるものにした立役者であり、その歴史上とても重要な役割を担ったその功績を讃えて、一番最初にご紹介したい。
ファクトリーの起源
RuschaはKlein&Schardt(クライン&シャルト)として1905年に設立される。1948年に創設者の次男、Rudolf Schardt(ルドルフ・シャルト)が会社を引き継いだ際に自らの名前から頭の文字を取ってRuschaになった、と言われている。
創業者のお父さんの名前とか入れないのね…とは思うけど、結果的に親しみやすい名前だしそういった自由なスタイルが『Volcano glaze(ヴォルケーノ釉薬)』の開発に繋がったのかもしれない、とも思える。
1996年にRuscha(ルシャ)が閉鎖し、その後は、同じく西ドイツの陶器ファクトリーであるScheurich(シューリッヒ)に買収される。いわゆる競合他社に統合される形になったものの、Scheurichは『Ruscha Art』という名前を残しRuscha時代の名残のあるデザイン作品を製作していたとか。
ファッション業界でもあることではあるけれど、ちゃんと職人さんも工場も守られて素敵な作品が作られ続けるというのは、競合他社であっても、というかだからこそ、産業と文化の保護の観点からも重要だよね。
『Volcano glaze(ヴォルケーノ釉薬)』
で、『Volcano glaze(ヴォルケーノ釉薬)』
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これ以上ない必殺技みたいな名前だけど、その流れ落ちる躍動感のある厚い溶岩のような釉薬が、Ruschaとなって3年後の1951年にOtto Gerharz(オットー ゲルハルツ)によって開発される。これにより、Rushcaは一気にメジャーなファクトリーとなり、一世を風靡。
ただ、面白いのはこれがすぐに他のファクトリーでも取り入れられて西ドイツの代名詞になったこと。これは開発された釉薬を独り占めしていたらこうはならなかったはずなので、意図的に?この技術をシェアしたのか、職人の流動性が高くて自然と漏れてしまったのか、その背景は気になる。三点留めする車のシートベルトを開発して特許を取ったものの、乗車する人の安全を最優先して他のメーカーにも率先して使ってもらったVolvo的な配慮があったのか。はたまた開発者であるOtto Gerharzも独立して自分のファクトリー(その名もOtto)を作り上げているから後者の可能性もあるよね(あくまで個人的な推察だけど)。
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Ruschaとしてだけでなく、FAT LAVAのアイコン:313
そして2つ目の理由として挙げた、Ruschaが誇る、FAT LAVAの代表作:313。
西ドイツの陶器では、食器ではなく花瓶や取手がついた水差しのような形がメインだと以前にも書いたが、こちらも御多分に洩れず水差しのような形。
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そして、釉薬で括られる事が多い西ドイツの陶器は全体としてその釉薬が使われた仕上がりがメインとなっており、「それっぽいカタチ」はいくつもあれど、「このファクトリーのこのカタチ」と言うのが実はあまり無い。これはマーケティング上の「アイコン」という概念がまだ殆ど認識されていなかったからという背景が大きいと思う。
そんな中にあって、である。
Kurt Tschorner(クルト・チョルナー)によって設計された、この西ドイツ陶器史上最も有名なstyle、313。
その特徴は、ぽったりとした柔らかな丸みとそれに相反するおちょぼ口なきゅっとしまった注ぎ口、そして全体のバランスから見ても大きい象徴的な取手。
まるで翼を広げた鳥のように見える、アイコン然したそのシェイプは意図的に様々なバリエーションで作られ、結果現在に至るまで多くのファンに愛されている。
(そのやり方もかなり今のマーケティングに近く当時としてはかなり画期的だったはずで、そのRuschaが廃業となった背景も興味深い)
最初のファクトリー紹介でRushaをご紹介したけど、作品だけでなくその作られた背景もセットで知る事は個人としてやはり面白いな、と。
結果的に、皆さんにも興味を持ってもらえたらこれ幸い。
僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。
皆様も、良い一日を。