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通り雨 【シロクマ文芸部】

みなさん、こんにちは。
次回『令和源氏物語 宇治の恋華 第二百三十二話』は9月19日(木)に掲載させていただきます。

今週もやってまいりましたシロクマ文芸部です。先週は仕事が忙しくお休みさせていただきました。
今週のお題は「懐かしい」から始まる創作です。

小牧部長、よろしくお願い致します❗️

『通り雨』

懐かしいそのうしろ姿は、どんな人ごみに紛れても私には特別なものだった。
少し右肩を下げて体を揺すりながら歩く癖が前よりもひどくなっていると思ったら、その手の先には小さな女の子がはしゃいでスキップしていた。

圭太、幸せなんだね・・・。
少し寂しいような、ほっとしたような。

私達、何で別れちゃったんだっけ。
子供の頃からずっと一緒だったのに。
けして離れることはないとぼんやりと思っていた。
それが運命だと感じていたけれど、圭太の赤い糸は彼女につながっていた。
激しい喧嘩をして、罵り合って、ボロボロに疲れてしまった。
昔の事だと今では懐かしささえ覚えるのは傷が癒えたせいだろうか。
「真帆、どうかした?」
私の名を呼び、心配そうに顔を覗き込む彼がいたおかげで私はまた笑えるようになった。
「ん?なんでもない」
そう答えたのに、涙がぽろり。
「あれ?ねえ、雨降ってきた」
「ホントだ。早く家に帰ろう」
彼は私の手を引いて、先を急ぐ。
圭太も女の子を抱えて私達とは違う方向に走り出した。
雨がすべてを洗い流す。
私達がすれちがった跡さえも。
それでいいと今では思えるようになった。

〈了〉

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