『スチームプリズン』ザクセン・ブランデンブルクとかいう面白すぎる悪役
ルート開設おめでとう……でいいんだよね?
中の人が攻略ルートと仰ってたのでキルスが恋愛的にザクセン氏を攻略するルートという理解でいいはず。
先日投稿した記事にもちらっと書きましたけど、
移植時にザクセンルート追加されなかったことは、個人的には結構製作者さんの意図を感じる部分だったので驚きました。
ザクセンかっこいい好き!とか攻略ルート欲しかったとか言う方が多いのはものすごくわかるしそれだけの魅力を持ったキャラだとも思うのですが、正直な所私個人としては、彼に向けている感情はだいぶとっ散らかっています。
プレイ中の心境の大雑把な変遷で言うと、
「コイツ言動は心底胸糞悪いけどあまりに突き抜けすぎてて逆に気持ちいいな……」
↓
「こんなに嫌な奴なのに微妙に振り回されてたり損な役回りさせられてたりする場面多いせいでなんかだんだんギャグキャラに見えてきたな……」
↓
「ルートごとに見せる顔が極端すぎるわ!!! オモロ!!!!!!」
という具合で、最終的な結論としては一言で言うと「クソムカつくけどだからこそ愉快な奴」という評価になっています。すなわち、間違っても真っ当な好意ではない。
そして、そういう私の個人的な感情は抜きにしても、彼の過去やキャラ性を鑑みるとこの人はキルスに攻略できる人ではないんだなあとも感じたんですよね。攻略できないからこそ映えるキャラだったと言い換えてもいい。
スチプリをプレイして攻略対象達のことは皆大好きになったのですが、ザクセン氏はある意味彼ら以上にインパクトあるキャラだったので、ちょっと彼について語ってみたいような気がしたためこれを書いています。ルート開設記念ということにしておきます。私がザクセン氏に向けてる愛情が歪みまくってるせいであんまり祝うような内容になってないけど。
上に置いてある記事よりはラフな感じで、私のプレイ時の時系列順に沿って彼への印象を並べていくような構成になっているので、文章としてのまとまりはあまりないです。ネタ記事だと思っていただいていいです。実際プレイしたのはもう三年近く前なので細かい記憶違いはあるかもしれないですすみません。
※注意※
繰り返しますが私がザクセン・ブランデンブルクに向けている愛情はめちゃくちゃ歪んでいます。
前提として胸糞悪い奴だと思っていますし、だからこそ良き悪役だとも思っています。そして前述のように私の中では半ばネタキャラみたいになっている部分もあるので言い草が普通に失礼です。
真っ当なファンが読むと不快になること請け合いです。前書きの時点で嫌な予感がした方は読まない方がいいかと思います。イネスルートの項だけは比較的(あくまで比較的)真面目な語り口なのと、後書きでは全体的な印象と私の考えを簡潔にまとめているので、強いて読むとしたらその辺りだけでお願いします。
プレイ中の印象
●共通ルート
というか前回の記事から当たり前のように「ザクセン氏」と妙な呼び方をしている私ですが、これマジでどこから湧いてきたのか自分でもよくわからないんですよね。プレイ当時、自分用の記録というか日記のようなものを付けていたのですが、最初に彼について触れた時点で既に何故かザクセン氏呼びしていました。多分、さん付けするほどの敬意はないけど呼び捨てするほどの親しみも湧かなかった結果、若干他人行儀かつ揶揄を含んだ言い回しとして出てきたのがこれだったんだと思います。それがなんかしっくりきてしまい、以降私の脳内では常にザクセン氏呼びになっています。
これは後から判明することではありますが、そもそもキルスがクソ親父(医者の方)に目を付けられた大元のきっかけはザクセン氏との揉めごとなので、ある意味スチプリの物語を引き起こした元凶と言えなくもないんですよねこの人。共通ルート時点では絵に描いたような嫌な奴だな……というポジションでしかなかったのにまさかあんな……あんなことになるとはこの頃は思っていませんでした。
●エルトクリードルート
初回攻略推奨のはずのこのルートでいきなり掌の上で転がされてるのはいいんですかこれ? エルトが上手すぎるだけなんだけどそれにしたって。それにしたって既に滅茶苦茶面白すぎる。
エルト個人としてはこういう正直者で野心家なタイプ好きなんだろうなというのは伝わったので、HOUNDSとの同盟は意外ではあったけど納得でした。今にして思えばザクセン氏がまともに味方に付くめっちゃ貴重なルートだったんだなこれ。ただなんかどさくさに紛れてキルスとも和解した感じになってたのはちょっと納得いかなかったけど。キルスさんその人貴女の元パートナーを調教した人ですよ。
ウルリクルートでは登場しないので割愛。
●アダージュルート
イネス殿が連れてきた半死人はどうせザクセン氏の雑な暴走のせいだろと最初思ってました濡れ衣でしたすみません。でも狂犬モードのフィンがやったということはやはり元を辿ればザクセン氏のせいなのでは?(言いがかり)(とも言い切れない)
終盤で嫌そうにクソ親父にクレーム入れにきたシーンはちょっとウケました。エルトルートといいこれといい、あんなに悪役ムーヴしてる癖になんか変な所で苦労してるせいでちょっと憎めない感じになるのが余計にムカつくなと思いつつ、「頑張って悪役の任全うしてるんだね……大変だね……(笑)」みたいな心境になってきたのはこの辺り。
からのベストエンドの一連の急展開で私の中での彼は完全におもしれー男判定になりました。イネス殿も提案するならあんな土壇場じゃなくて事前に裏で言えばいいのにわざとザクセン氏に恥かかせたかったんですかと邪推したくなるいいぞもっとやれ。こいつほんとイネス殿の言うことは素直に聞くな。なんか弱みでも握られてんのかと思ったけど別にそんなことなくて、ただ単に本当にイネス殿のこと友達と思ってるんだというのがイネスルートで判明するので一層面白いわけですが。
キルスが正式な外部委託先になっちゃったから、目と鼻の先にいるにもかかわらず手出しするわけにはいかなくなったし裏でギリギリしてるに違いない。同じ建物内であんなにイッチャイッッチャされてるのに制裁下せないザクセン氏の心境を思うと爆笑モンでしたね。アダージュ先生もしリーダーが重症負ったら麻酔なしで手術してやってね!!!!(いい笑顔)
●イネスルート
「愛は人を狂わせる」がイネスルートのテーマのひとつだと思うんですけど、ザクセン氏もまさに「愛に狂った」人だったとこのルートで判明します。攻略したかったと思った人もいた理由はわかったけど、攻略できちゃったらそれはそれでなんか違うんだろうなとも思いました。彼のスィアさんへの想いに恋愛感情が含まれてたのか否かは微妙なところだろうけど、彼はキルスに救えるような人ではないし別に救いを必要としてもいないとも感じたので。
彼は本当にスィアさんを慕ってて、当時から別に罪人に特別慈愛があったわけではないにしても(相手はあくまで罪人だし上界の法に殉ずる警察官だった身としては当然のスタンスともいえる。そういう意味ではスィアさんが甘すぎただけ)、保護地区とHOUNDSのために自分ができることをしようと真剣だった。でも自分の策が裏目に出てスィアさんを失ってしまった結果、責任感やら自分への怒りやらが暴走したんだろうなと。枷が外れた人は狂ってはいるけど強い。外道の人でなしだったのは間違いないけど、彼は彼なりの正義や信念を貫き続けてきた。だからこそ、キルスの「正義」とはかけ離れた平行線で、決して交わることはない。キルスがどこかスィアさんの真正直さを彷彿とさせるからこそ、スィアさんと違って生きているキルスが目障りで仕方ないし憎い。スィアさんはその真正直さを貫いたことで死んだから。そんなわけでザクセンはキルスを絶対受け入れられないし、キルスの方もたとえザクセンの事情を知った所で「それはそれ、これはこれ」ってなりそうだなと。
私が個人的に悪役とは安易に和解してほしくない派だからというのもありますけどね。特にこの人の場合は作中、特に保護地区内でのムーヴがろくでもなさすぎるので。ただエルトルートでは比較的まともな責任者としての顔を見せてくれるのと、イネス殿には人並みに友情感じてるんだろうなというのがちょいちょい見えるのと、外道になるのも納得いくような事情はあるのと……いうのがあった上で現在は徹底的にろくでなしであることには変わりないってことをあの末路で示しつつ最期まで「自分の命は自分のもの」と言って決して主人公側にはなびかなかった潔さとが、絶妙なバランスをもって「嫌な奴だけどいいキャラだな」と思わされました。
あと上記のようにアダージュルートでだんだん滑稽に見えてきた所でのあのイネスルートだったので「この人基本的に情緒不安定なんだろうな……」みたいな気持ちも追加されちゃってなんかもう一周回って好きだなって(本当に失礼)
●ユネルート
ユネ様の下界訪問を受けて頑張って猫被ってるのに被りきれてない様に盛大に草生えた。今までのルートで活き活きとキルスに八つ当たりしてたのを思うと流石にユネ様の付き添いに失礼な態度取るわけにもいかずイラついてるのが手に取るようにわかってほんと笑えた。その後今度は罪人として下界に来たユネ様に対して鬼の首取ったような顔でドヤっててニッコリしました。
ザクセン氏を語る上で絶対に外せないのが、このユネルートでのフィンによる壮絶な復讐シーン。誤解を恐れず言うならほんっと気持ちよかった。舐めプしてたのか元々荒事苦手だったのがここにきて響いてきたのか(なんだかんだでエルトルートでもイネスルートでもキルスに負けてるので気迫とか残酷さとかで補正してるだけで結局技術的にはそこまでではなかったのかもしれない)あっさり逆転されてそこから一切反撃できなかったのには流石にツッコミ入れたくなった。自分が狂気を引き出したフィンにその狂気で倒されて、飼い犬に手を噛まれるどころか噛み殺される結果になったというのがこの上なく因果応報で、曲がりなりにも誇りを保ったまま死んでいったイネスルートと対比になってるのかもうこれ以上ないくらい無様全振り。
かつては吸わなかったのにスィアさんが死んでから吸うようになった煙草がフィンから見て「支配者の証」だったっていうのが上手いなって思うし、その煙草を「こんなものか」って嘲られるのが言うなればリーダーを継いでからのザクセンの生き様全てを見下すというメタファーになってる。で、最期はその煙草の火で炙られる。これも自分のやってきたことが自分を滅ぼしたという描写に見える。焼かれて悲鳴上げてたシーンは素で笑い声出ました。
●フィンルート
今までの「キルスは上界の罪人」という前提が覆ってるのでキャラ同士の関係が割と今までと違ってて新鮮だったルート。楽しそうにパワハラ上司やってるザクセン氏に失笑しました。今までのルートでフィンにやってきたこと見てるから同じHOUNDSでも油断ならないと警戒してたけど想像ほど無茶なことはしてこなかった。同僚としてのやり取りを見るとやっぱりキルスの方が上手というかまだ大人な気がした(まあ本当の大人ってのはイネス殿みたいな人のことを言うんだろうが)けど、「まるでザクセンに事情があるような言い方」とか言ってたのはちょっとまあ流石に色んな方面に失礼だなって思いました。ザクセン氏が嫌な奴なのはぜんっぜん否定しないけど、薄暗い過去を経て性格がねじ曲がってしまう人間というのもこの世にはいるということを想像すらできないキルスは潔癖すぎるというか世間知らずすぎるというか。話が逸れた。
というかザクセン氏そっちの欲もちゃんとあったんだって割と本気で驚きました。いやまあその辺の女性に路上で襲いかかってたのも(あまりの治安の悪さとザクセン氏のテンプレ悪役ムーブに)驚いたけどバッドエンドであっ貴方そっち系の拷問もするタイプだったんだってことの方が驚いたいやだって今まで散々投獄して暴力振るってたのにそういうことした描写は一切なかったから(全年齢ゲームであっても困るが)。散々小娘だの玩具だの馬鹿にしてた癖に初手接吻なんだ……へぇ……と生暖かい視線を送ってしまった。
詳細は前回の記事で書いたけどフィンルートは恋愛以外の縦軸が無いも同然なので、このルートのザクセン氏はあまりにもただの舞台装置で出番多い割に何ひとつ回収されないのは残念だったけど、ムカつく動きしといて大体キルスに勝ててないのとかフィンに遠回しに馬鹿にされてた(してない)のとか基本的に二人の仲を深める踏み台役でしかないのとかがまるっきり人権なき舞台装置でこれはこれで変な快感がありました。
●グランドエンディングルート
保護地区代表としてザクセン氏を激推しするイネス殿とドン引きするその他の面々の温度差に笑った。エルトだけはザクセン氏にやたら好意的だけど、振る舞いに問題ありすぎることも理解してるだろうから中立的な立場で傍観してるのも面白かったです。
エンド後はなんかご機嫌らしいけど神官院が潰れて癇癪が収まったんでしょうかね(言い方が性悪)。今後保護地区の扱いについても改善されていきそうだけど、そうなるとぶっちゃけザクセン氏ってともすれば有罪レベルのことしてると思うんだけど一切お咎め無しだったのだけがちょっとモヤるポイント。千歩譲って保護地区民の扱いについてはギリグレーゾーンにしても、クソ親父のやらかし黙認してたのはアウトだと思うんだが。もし万が一カイナベル編でこの辺回収されてたらヒューネックス本社に向かって敬礼します。
まとめ/後書き
散々悪行働いてはいるけど、
真面目に仕事してる場面や地味な苦労被ってる所も見せつつ、
なぜ歪んだかという背景事情をしっかり描写した上で、
ある時はたらし込まれて協力関係を築き、
ある時は丸め込まれて同僚になり、
ある時は気高き悪の華としてかっこよく散り、
ある時は自業自得の極みの情けない死に様を晒し、
最終的にはなんとなくちょっと浄化されたらしい姿を披露する。
なんなんだ。なんなんだこいつ。こんなんもう好きになるしかないじゃん。ルートによって本当に様々な顔を見せてくれて全然退屈しない。なんて素敵なキャラクターなんだ。
ただ、だからこそ……と言うか。私個人としては彼を攻略したいとは全く思わなかったんですよね。イネスルートの所でも書いたように、根本的にキルスとは合わない人だと思っていたので。だから、きっとオリジナル版の時点でも攻略したいファンはいただろうに移植時にルート追加されなかったのは結構納得でした。
なのでこの度晴れて攻略ルート開設されたのはめでたいと同時に複雑ではあります。でも、これだけ色々な姿を見せてくれるキャラなのだから、キルスと恋をする姿もまた、彼の中のどこかには存在していたのでしょう。
きっと今だからこそ紡げる物語なんだろうということで、一体どういうアプローチで仕掛けてくるのか楽しみにしています。それまでにもうちょっと真面目にザクセン氏を乙女ゲー脳で見られるように心の準備を整えておくね!
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