アンドロメダのリミト 9話
偶然見てしまった天女の姿が、頭から離れなかった。
家に帰ってからも、、、セイは体が震の震えが止まらない。
何の魔術を使うのか、どうしようか、、どうしたらいいのかわからなかった。
見間違えかもしれないし、
動物に化かされたのかもしれない。
次の日も、またその次の日もセイは滝に通った。
天女はいなかった、、、
やっぱり見間違えか。
と、安心した時、
眩い光が前方の空に現れた。とっさに、しげみに隠れた。
空から、舞い降りたその姿は、やはり天女だった。見たこともない美しい服を着て、肌は透き通るように白い、、、
セイは身動きがとれず、そこでしばらく見ていた。
天女たちは、とても楽しそうに遊んでいた。その動きは美しく、まるで舞を踊っているようだった。
そのうち、1人の天女が光とともに消えていった。
残った天女は、滝を離れ、辺りを確認して、また進み、動物に出会っては驚き、風に吹かれて驚き、
虫をしばらく観察していたと思ったら、
満足げな顔をして、光とともに消えていった。
天女がいなくなり、ようやく動ける状況になったセイは、思い悩んだような暗い顔で、山を下りて行った。
それからというもの、セイは何度も何度も滝に通った。
雨の日こそ行かなかったが、晴れの日と曇りの日は、必ず滝まで行った。
それは、天女を観察するためだった。
二人の天女は、二人で帰っていくこともあるが、
一人残る事もあった、、、。
セイの母は病弱だった。父はセイが幼い頃に亡くなっており、母が一人で長年無理をして、家計を支えてくれた。わずかな収入で暮らしてきた。
セイが大人になった今でも、生活が苦しいのに変わりはなく、
母親は無理がたたって、病気になってしまった。
このままでは、母は近い将来死んでしまうだろう。
「天女を捕まえたら、、、という噂、あれが本当であれば、、、」
悩みに悩んで、セイは自分たちが生きていく方を選んだ。
気付いたら、わずかに残っていたお金を持って、
天女を捕まえるためのお札を買っていた。
そして、家の四隅に貼りながら、
母親に、これからのことを説明した。母親は、初めは冗談だと思って聞いていたが、セイの鬼気迫る表情を見て、
「天女さんきてもらえたらいいなぁ」
と、セイを落ち着かせるために言った。
半信半疑だったが、もしも自分の病が治って、働けるようになったら、、、と思い、 これから滝に行くというセイを笑顔で見送った。
いつもの様に滝に到着した。
セイは息をひそめて、天女が1人になるのを待った。
やはり、1人の天女が残った。
セイは天女のあとをつけた。天女は花畑まで来ると、とても嬉しそうに辺りを見渡した。
見つかる!!
セイは焦り、天女の腕をつかんでいた。
「あんた天女か?うちに来ないか?」と、とっさに言った。
焦っていた。恐怖で体に痛みが走り、おかしくなりそうだった。
何とかして連れて帰らなければ、、、どうやら言葉は通じないようだ。
もたもたしていると何か妖術を使われるかもしれない。と思い、天女の腕を引こうとした、その時、
頭を切り裂くような、大きな耳鳴りがした。
驚きと、恐怖、母を思い。死にたくないと思い、
走っていた。
険しい山を下り、必死に走る中、引いている方の腕をおそるおそる見ると、確かに天女の腕を握っていた。
誰にも見られてはいけない。
幸い、日が暮れかけていて、村人が近くを歩いていたとしても 、天女の姿ははっきり見えないだろう、、。
セイは急いで家に入り、戸をしめた。
リミトの周りから映像がすべて消えて、
アザラシとリミトの子供の魂が見えた。
アザラシはクルッと宙返りして言った。
「同じ物語でも、セイの目線だと、こうなるんだよ、、、。驚かせちゃったかな?」
反応のない、リミトの魂に、
アザラシは焦った。
「でも、リミトの事を好きになったのは真実で、母親のためにはリミトの力がどうしても必要で、リミトは次元の違う星の人で波動が高いから、近くに存在するだけで、お母さんは元気になっていったの。弱って亡くなっていくリミトに「すまないねぇ」と、何度も言ったのは、本当にすまないと思う気持ちから言っていたの。最後にリミトの手を握りながらセイは、愛している気持ちと、本当にすまない事をしたという気持ちを伝えて、泣いていたの。」
早口で言い、アザラシはリミトの光を心配そうに見た。
大丈夫そうだったので、
あとはゆっくり話した。
「セイはね、、、天女を観察しに行っていたとき、
天女はとても恐ろしいものだと思っていたのに、
無邪気に1人で冒険しているあなたを見て、
まるで子供のように可愛い姿を見ながら、クスクス笑っていた事もあった。
だから、心を鬼にして、捕まえた。あなたがいなくなったこの後も、後悔は消える事がないの。自分達が元気であればあるほど、あなたを思って、悲しいの。セイは、ずっと、自分を責めつづけたの」
リミトの光が揺れています。
心配して、子供の光は、リミトの周りをクルクル回っています。
揺れがおさまりました。
「さて、また時間をさかのぼりますよ♪」
アザラシは空間を泳ぎながら、グルグルと螺旋を絵描き始めました。