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翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その3

皆、イベントでは険しい顔で恐ろしい話をするが、一旦オフになると、メチャ明るい...

実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。

(3)笑い

【上映会で】

ロボットが再生しにくい人間性ってなんだろう?

逸話を一つ...

2016年、レオン・リー監督(『人狩り』『馬三家からの手紙』の監督)の最新作『血の刃』が英国の国会議事堂内で、プレミア上映されることになった。元ミス・カナダのアナスタシア・リン主演。知り合いを通じて招待状を手配してもらい、英国議会内の会場に入った。

カナダ在住のリー監督とアナスタシア・リンの他にも、カナダから支援議員などがこの上映会のために来英していた。ショッキングな映画の後(あれ?殺されたはずのアナスタシアが実物で出てきた、と現実に引き戻されるのに時間がかかったが)、質疑応答やコメントの交換などがあった。

カナダの映画祭前の話が語られた。

ある日、「中国制作の映画を調べに来た」と中国大使館からスタッフがやってきた。「中国制作の映画はありません」と答えたところ『人狩り』を指摘してきた。そこできっぱりと「これはカナダの映画です」と言い放つと、この人物はすごすごと帰っていった。

会場が一斉に笑いで盛り上がった。別に言葉を交わしたわけではないが、皆に共通の認識があった。参席者全体に一体感があり、居心地がよかった。

【明るさ】

この“居心地のよさ”を私はこんなふうに分析している。

人生にやましいところがあったら、この問題は扱えない。他国に浸透しようとする工作員は、財産、名誉、健康、異性関係など、各国の要人の弱みを狙う。チャイナマネー、臓器移植、ハネートラップなどがここで用いられるわけだ。しかし、これらに左右されることのない人々が上映会の会場にいた。

たとえ世界中から批判されても揺るぎなく「悪い物は悪い」と言い切れる人々。そうでなければ、闇に光をあてることはできない。

このあと、4年半にわたり、臓器収奪に関わる調査者や証言者をアテンドすることになった。皆、イベントでは険しい顔で恐ろしい話をするが、一旦オフになると、メチャ明るい。笑いが絶えない。人生の明るい場所に足を据えていて、その足がすくわれることがない。

『消える人々』にはあまりにも酷い現実が収録されているが、この本の背後には、一緒にいると居心地のいい「善良な人々」がたくさんいることだけ、お伝えしたい。(その4へ...)

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上映会での写真はなかったが、その後、英国議会内で定期的に開かれたラウンドテーブルの後に撮影された一枚の写真から、関係者の“明るさ”を汲み取っていただければと思う。「強制臓器摘出に反対するブリストル市民の会」主催で、2017年から2018年にかけて、臓器収奪問題の調査者が集まり、1人5分ずつ発表する機会が設けられた。右端と右から3番目に、臓器収奪を停止することを支援する議員が写っている。会合のための部屋を予約してくれる。右から4番目が著者のガットマン(日本人の私は密かに “ほていさん” を連想している)。

本書「消える人々」のアマゾン・リンクはこちら。書店でも扱っています。

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