翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その2
これまで馴染みのなかった信頼のハグ...
実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを始めることにしました。
(2)ハグ
【ガットマンに会う】
日本にガットマンを招聘するのなら、まず、The Slaughter(『臓器収奪ー消える人々』の原著)を翻訳しなければ…
というわけで、知り合いを通じて、著者のイーサン・ガットマンを紹介してもらった。アメリカ人ジャーナリストで中国アナリスト。ロンドン在住。
今思うと、2016年6月に発表された報告書 An Updateの共著で忙しかったに違いない。なかなか返事をもらえなかった。ようやくカフェで会ってもらった。2016年1月のことだ。
ガットマンが案内役を務める『知られざる事実』(56分の映画 有料)は見ていた。なぜこのような状況になってしまったのか?なぜ我々は知らないのか?映画内の解説はこの問題の理解に役立った。お礼を言った。
波長が合っていた。性格が似ていた。話をしていて相手の一言から考えが思いついてしまい、相手の言葉を遮って思ったことを口にしてしまう点や、会話があれこれ飛ぶ点も私と同じ(本書でも一段落にいろいろな情報が盛り込まれていた)。しかし、私が切り込もうとしても「これだけは言わせてくれ」と引かない。日本人感覚では実に無礼で、隣に日本人がいたら、この人たち何を言い争っているんだろうと思われたに違いない。しかし、意気投合してしまった。
無所属の私が日本で作った蓮の花入りの名刺を渡したら、すごく気に入ってくれた。
無事に会合を終え、地下鉄の改札口で、大きなお別れのハグ。これまで馴染みのなかったハグだった。
【信頼】
このハグは「信頼」だったのか、と翻訳しながら納得した。
人間には「落ち度」があるが、その属性として信頼がある。「信頼」は研究室では製造できない。限界があり、偏見を抱き、失敗するがために、人間を単純に再生することは難しい。(p.56 第一章『新疆での試み』の最後)
本書の背後に存在するものは互いを反目させ「信頼」を失わせようとする全体主義国家だ。AI化の進む世の中で、ロボットではない自分。ロボットが再生しにくい人間性ってなんだろう?「落ち度があってもいいんだよ」「人間で良かったね」と温かく受け入れてもらえること。「信頼」の絆はここから生まれる。
このあと、なぜか臓器収奪関連の欧米のスピーカーを日本でアテンドすることとなり、「落ち度」だらけの珍道中の連続...。「信頼」があったからこそ、こなせたんだな、と今、振り返って感じている。(その3へ...)
本文中にもリンクを入れたが、お時間のあるときに是非ご覧頂きたい一作。(56分 有料)
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