翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その19
(...実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。)
過去と未来
中国共産党が「国家の敵」と定めたグループへの迫害は、人間の領域を超える凄まじいものだ。
本書の第二章から第六章にかけて、エスカレートしていく法輪功への迫害が被害者側と加害者側の証言から綴られていく。今回は、二人の全く別の被害者が、伏線を張ったかのように交差する場面にスポットライトをあてたい。
【趙明(ジャオミン)】
趙明は、中国のエリート校、清華大学で法輪功を最初に伝えた人物だ(第二章)。法輪功迫害が始まった後、中国共産党のプロパガンダが社会に植え付ける法輪功の汚名を晴らそうと、ダブリンの留学先から中国に戻る。街中で「法輪功は良い」という横断幕を掲げ、政府ではなく人々に訴えることの重要性を説く(第四章と第五章)。逮捕され肉体的な拷問を生き抜くが、当局は方針を変えて「ソフトなアプローチ」で彼の信念を折ろうとする(第六章)。
【ジェニファー・ゼン】
天津で不当に逮捕された修煉者が釈放されるよう、1999年4月25日に陳情のために府右街に赴いた一万人の中の一人(第三章)(その16参照)。1999年から2000年にかけて4回逮捕され、4回目は強制労働所へ。ここでのむごい体験を世界に暴露しなければ、と迫害に屈することにして釈放される。
しかし、法輪功を放棄したからといってすぐに釈放されるわけではない。他の修煉者が法輪功を棄却するよう説得しなければならない。「ソフトなアプローチ」で趙明を転向させようとした女性の中にジェニファー・ゼンがいた(第六章)。
【過去と未来】
ジェニファーは、釈放後、匿名で明の偉業を讃え、彼の抵抗に関する記事を明慧ネット(minghui.org)に投稿した。そして、罪悪感を乗り越えて、『Witnessing History』(歴史の目撃者として)を発表した。(英語版と中国語版はこちらから購入できるようだ。)
趙明を「過去の抵抗の精霊」と括ってしまうことには疑問がある。本書に記された不屈な抵抗の数々を著述している時点で「過去」の記録としたのだろう。しかし、趙明は表には出ずとも、現在も人間性を守るために貢献しているに違いない。
ジェニファーをこの時点で「未来の抵抗の精霊」と形容することは納得できる。実際、ジェニファーは著者発表のあと、ドキュメンタリー映画「フリー・チャイナ」でも証言し、エポックタイムズの記者としても活躍していた。
2019年に裁定が発表された「中国(臓器狩り)民衆法廷」では、オンライン上で証言。6月17日の裁定ではメディア対応のために来英している。(その20へ続く….)
◎ ◎ ◎
本書『消える人々』のアマゾン・リンクはこちらへ。
◎ ◎ ◎
故・安倍元総裁のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
大往生された「天国の精霊」に背中を押される気持ちで、細々ながらもブログを続けていこうと思っております。安倍元総裁が「過去の精霊」となられた今、日本人一人ひとりが「未来の精霊」としての役割を担っていく時が来た、と気を引き締める思いです。