悪い円安による海外SaaSの高価感
最近「悪い円安論」をニュースでよく見かけます。
日本の実質的な円安が進んでいる。
なので、輸入品に頼るもの(原油などのエネルギー、食料品、iPhone etc.)の負担感が増している・・・そういう危機感です。
この指摘、企業で利用する海外のSaaS(ITのクラウドサービス)も如実に当てはまるのではないか。
以前は企業で社員利用ソフトウェアを管理していた立場として、こう感じてしまうニュースです。
値上げ相次ぐ海外SaaS
例えば、ドキュメントやメールなど社内従業員コラボレーションツールを提供するMicrosoft365。
来年2022年3月に数百円程度値上げするとの発表がありました。
一方、あまりニュースになっていませんが、実はこれの競合製品であるGoogle Workspaceも2021年になって値上げしていました。
こちらは下位プランに人数制限が導入されたことで、一定規模の従業員がいる企業は強制的に上位プランへ契約を切り替えざるを得ないパターンが発生しました。
こっちのプラン強制切り替えに伴う値上げに至っては、企業のSaaS利用月額費が一気に何倍にもなるような事例も多数あったのではないかと推測しています。
圧倒的な価格競争力のある海外SaaS
難しいのは、企業ユーザーとして「これほど急激に価格を上げられても、容易く乗り換えることはできない」ことです。
仮にいつも買っている日用品のブランドの価格が2倍にも3倍に跳ね上がったとしても「じゃあ別のものを買えばいいや」と切り替えることができます。
が、社内コラボレーションSaaSとなると膨大なデータが蓄積されていますし、従業員のツール乗り換えに伴う教育コストも馬鹿にできません。
製品のスイッチングコストが高すぎて、安易に乗り換えることができないのです。
「安いSaaSに乗り換えることができない」のも問題ですが。
「SaaSが高すぎて利用することができない」のも同じかそれ以上に問題です。
チャットツールSlack
ビデオ会議ツールZoom
高機能ドキュメントツールNotion
などなど、最先端の機能や使い勝手が実現された、日本のIT系メディアでも取り上げられるような海外のツール。
企業のシステム管理者の立場からとすると、従業員分アカウントを購入しようとすると相当に高価だと感じる場面は少なくありませんでした。
こういう単一カテゴリの製品は日本国内のIT企業からも類似のSaaSが提供されていたりするのですが。
海外製品の方が価格が数百円〜数千円高いことがザラです。
(Notionを入れたくても、国内のドキュメントSaaSに比べて何倍にも高くなることから泣く泣く断念したり・・・。)
それでいて、製品の機能や使い勝手は高い海外SaaSの方が優れていることがザラです。
でも、もし例えば
「海外SaaSの高価感は円安によるも。アメリカの企業がアメリカのSaaSをその価格で利用する分にはそこまで負担感はない」
のだとすると、これは怖い話です。
ことになったら、ますます日本企業の地盤沈下が激しくなるでしょう。
海外のテクノロジーが物価差で買えない?
昔、iPhoneが新興国で普及しない理由として
と聞いたことがあります。
その時は、「ふーん、国によって通貨が違うとそうなるんだ」と思っただけでした。
が、企業におけるシステム管理者の立場から、SaaSの海外製品と国内製品の価格差を目の当たりにした今となっては、このiPhoneの話が他人事には見えません。
当時のiPhone、言い換えれば海外の先端テクノロジーが詰まった製品が、円安による物価差により日本での購入が困難になってくる時代が来たとき。
社内システムの導入を担当する立場の人間はどういう戦略を取るべきなのか、真剣に検討する必要がありそうです。
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