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祭りのあと・コンテスト受賞によせて【なぜ私は書くのか】

 賞の旨を伝えられたのは、結果発表から一週間ほど前までさかのぼる。
 コメントの通り、嬉しさや喜びよりも先に安堵の方が大きかったのは事実だ。全力を尽くし、持てる技の全てを用いて練り上げた渾身の一矢――応募作という名の得物が、もし届かなかったりしたらどうしたもんかな、とずっと考えていた。それだけに、受賞の二文字は大変ありがたいものだった。

こちらのコンテストに☟

この記事で参加していたよ☝

 け取ったメッセージには続きがあり、『受賞コメントをいただければ』とのお話があった。文字数500文字程度、締め切りは四、五日といったところだった。もちろん喜んで用意させてもらいたい、そう思ってキーを叩こうとしたのだが、ほんの一瞬、はたと迷ってしまった。考えてみれば、これまでに『受賞コメント』など書いたことがなかった。何書いていいものか、サッパリ分からなかったのだ。そりゃまあ、初めてだもんな、受賞

 ツウに考えてみたならば、『この度は素晴らしい賞をありがとうございます』みたいなアイサツから始まって、受賞の喜びや執筆の苦労、テーマと向き合った感想、なんかが分かりやすく並ぶのだろう。それ自体は別にいい。ただ受賞作で大見得切った手前、ここで急にキャラ変わるのもなんだかムズムズする。どうせなら最後までらしさ全開で、とまで考えたところで『ああ500字でショートショート書けばいいのか』とひらめいて、そこからは出勤前の小一時間でパッと書き上げてしまった。家を出る時間が迫っていたので最終チェックは後回しにしてそのまま夜、メッセージを返信したときにちょっとした行き違いが発生した。

 は、いただいたメッセージには『受賞しました』とは書いてあったものの、『どの賞を』とは書かれていなかったのである。受賞者へのお知らせを送るのに、自分がどの賞を授与したかを書かない授賞者も多分あんまりいない。さすがマネージャーさんが『うちの社長はステータスを編集力に全振りしていて他は何もかもダメです』というだけのことはある。なんていうか、抜け方に抜け目がなくて面白い。私も私で、あえて最後まで確認もせずに『グランプリを獲った』と信じて疑わなかったものだから、『優秀賞』と伝えられた時にはがっかり感の方が大きかったのが正直なところだ。
 元々、このコンテストの賞はグランプリひとつだけだった。やるならたったひとつに選ばれようと、絶対にハートを射抜く、と意気込んでいただけに、それが叶わなかったのは残念でならない。全力で叩き上げた武器もここまでなら、これから先、文章に携わる意味はあるのか……。

 とか考えたところでふと、我に返る

 や確かに望んだ結果には至らなかったかもしれないけど、別に何ももらってないわけではないね???
 そんな風に考えちゃ、授けてくれた人や、そこに届かなかった参加者たちにも失礼というもの。むしろ『受賞』自体が初めてなのだから、プラスかマイナスかでいえば明らかにプラス、必要以上に嘆く必要はそういえばどこにもない。いやまあ、それでもその日は、続きを書こうと思っていたショートショートが1文字も進まなかったけども。
 考えてみるに、いきなりいちばん上を獲ってしまったら(もちろん目指したものであるとはいえ)そこで満足するとか、もしかして調子に乗っちゃったりしたかもしれないので、そこはまだまだ発展性があると捉えておくことにしよう。

 の収穫も確かにあった。今回の結果に関しては本当にものすごく悔しかったのだけど、それだけ悔しいってことは心から本気で挑んでいたことの裏返しでもある。いくつかの他のコンテストで落ち慣れるうちに、いつからかそこまでの情熱は失われていたのだ。落ちても動じないものの、最初から期待値も低い……みたいな状態が続いていたように思う。それが今回グランプリになれなかったことで『ああ、まだまだ悔しがれるだけの気概が残ってるンだな』と、改めて自己の一部分を再発見できた。こいつは結構重要な財産になってくれるだろう。受賞作に書いたのとはまた違ったところで思い出した感情のひとつだ。

 うして、いくらかの残念さも含みながらの『優秀賞』をいただいたわけだが、中間に残った他の作品を全部読んだうえで『上に行かれるとするならたぶんこの人たち』と感じた人の作品には本当にほぼ全てにキレイに負けたので、そこに異論はない。今の自分の力がちょっとだけ明確になった、それだけの話だ。何より、書いていてすごく楽しかったしね。
『優秀賞』のこの結果は、私の受賞歴の第一ページに燦然と輝いていてくれれば構わない。ここがスタートだと、ここから始まったのだと振り返る日のために。

結果発表の会場はこちら☟

 ところで先ほど述べた『受賞コメント』だが、こちらの下書きには実はルビが振られている部分がある。しかし引用範囲内で用いた文章にはルビが表示されない仕様のようで、そこはさすがに覆せなかった。ということで、ルビ付き完全版の受賞コメントをここに改めて掲載する。

『ホッとした』。受賞の報せをいただいて、真っ先に抱いた感情だ。
 自分を信じて挑んだ戦い、しかし勝負は終わってみるまでどう転ぶか分からない。ま、それが醍醐味でもあるのだけど。
 ともあれ、ひと時の安堵ののちにこうして『受賞コメント』なるものを書いていると、ふつふつと実感がわいてくる。文章で賞をいただくのは実は初めてで、素直に嬉しい。自分の言葉が、バシッと届いたことが、何より。
 だって相手は『日本一の編集者』と、そのもとで働く、いわば『最強のマネージャー』なんだぜ。最高位には至らなかったといえ、嬉しくないわけがない。今の今まで自分がずいぶんヌルい物書きだったコトは否めないが、それでも書き続けていて本当によかった。積み上げてきた経験や技術は、決して無駄ではなかった。

 喜びと同時に、身が引き締まる思いもある。全力でハッタリぶちかましたぶん、今度は全力でそうあり続けねばならない。ジャンルは様々、でも根元の部分は変わらない。さらなる高みを目指し、これからもっと研鑽けんさんを積んでいく所存だ。
 なんたって私、至上紙上のエンターテイナーだからね!

 この度は優秀賞に選出していただき、誠にありがとうございました。
 神月 裕🌛

 さて。コンテストの話はとりあえずここまでである。がしかし、ここでお知らせしておかなければならない重要な事実がある。

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コンテストの!

受賞者の!!

私が!!!

書いています!!!!

 エッセイとはまるで傾向が違う短編集(だいたい表紙通り)だけど、

何卒。


何卒。

何卒!!!

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神月裕
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