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「あ、私、こっち側の人だ」自分のスキの見つけ方

よく好きなことを仕事にしろって言われるよね。でもそもそもその好きなことがよく分からないっていう人は、大人でもいる。もちろん何か仕事を始めてみて、だんだん好きになっていって、それが結局、その人の一生の仕事になるっていうこともあるけれど、もし自分の好きがわからなくて困っている人は、とにかく行動したらいいと思う。その中で「あ、私、こっち側の人だ」という瞬間があったら、それはあなたの天職である可能性があるかもしれない。

私は、学習欲が旺盛で、新しい物事を知ることが大好きだ。また一つのことを探求するのも大好き。特に専門家の話を聞くことがたまらなく好き。博物館の学芸員さんとか、大きな書店の店員さんとか、何かの研究者とか。そういう人の話はずっと聞いていたい。そう考えると、私は「聞く側」「調べる側」を仕事にすればいいのかなって思うかもしれない。中学生の頃、考古学者に憧れたこともあった。つまり専門家の話を聞くのが好きすぎて、私はそういう専門家になりたいんだと思っていた。けれども、教える立場に立った時に「あ、私、こっち側の人だ」と悟った。
心理学を学びたくて大学に上がったら、そこはなんと教育学部で、教育実習が必須だった。私はその時はもうミュージシャンになりたかったので(笑)本当に教育実習はめんどくさいなーと思ったんだけど、行ってみたらこれが最高だった。子供たちが興味津々の目で、色んなことを聞いてきて、私は丁寧に、一つずつ、子供達の知識欲に答えていく。もうたまらなかった。「あ、私、こっち側の人だ」って思った。
その時の担当教官も「あなたが教師にならないのは知ってるけど、あなた、教師にめっちゃ向いてるよ。一緒に仕事がしたかった。残念だ」と言ってくださった。結局その後私はミュージシャンに挑戦して挫折して、また教育業界に戻ってきているというわけなんだけどね。自分が教えることの方が好きということを大発見した、貴重な6週間だった。元気かな、あの子たち。

さて、その後私は結局プロのミュージシャンになることを諦め、塾の先生になって、結婚して、子供を産み、バンド活動からは遠ざかっていた。子供が中学生に上がった時「セッションに出てみない?」と誘われた。人前で演奏するなんて、16年ぶりだった。大好きなshow-yaの曲を3曲ぐらい弾いた。ステージに立って弾きながら「あ、私、こっち側の人だ」ってひしひしと感じた。16年間抑えていた感情がムクムクと大きくなり、私は思い切り楽しんで弾いた。その時セッションマスターだった力石理恵さんが「16年ぶりとは思えない。生き生きしていたよ。これからも続けなよ」とおっしゃってくださった。で、続けている。りえぞうさん、ありがとうございます。
これは、「子どももいるから、楽器を演奏するなんてもう無理」と思っていた私が行動してみて分かったことだ。今の私からしてみたら「なんで、子どもがいると、楽器、やらないになるの?」というくらい不思議なことだ(笑) 行動している側からすると、行動を起こしていない人が頭だけで悩んでいるのがおかしく思える。

ちょっと私の話が特殊で分かりにくいかもしれないけれども、例えば演劇を観に行って「この企画は、休憩時間に観客がお金を落とす仕組みを持ってないな」って感じたり「物販が手薄だな。なんとかしたらいいのに」ってイライラし、私だったらこういう動線を作るのにとか、私だったらお客さんがお金を落とす仕組みを作るのにとか思うんだったら、あなたは企画側の人間。
それとか、あの人の衣装もうちょっとこうだったらよかったのにって思うんだったら、あなたは衣装を作る側の人間だし、あの時の照明の赤はちょっと強すぎ。もうちょっと弱い赤がよかったのにって思うんだったら、あなたは照明を照らす側の人間。ストーリーに口出ししたくなるなら脚本を書く側の人間。
何て言うかな、一言、口出しせずにはいられないようなことがあった時、あなたはきっと、そちら側の人間なんだ。

好きなことはたくさんある。でも「仕事にするほど好き」っていう基準は多分、そのことについて一言居士(いちげんこじ)になっちゃうくらいの感じなのかも。

そのためには行動。行動しないとめっちゃ狭い範囲で自分のスキを選択することになる。
何かについて「もっとこうしたらいいのに」「私だったらこうするのに」とお客様ではいられない感情に気づくには、行動しかない。
16年間ギターを弾かなかった私が、弾いてみるまで「あ、私、こっち側の人だ」と気づかなかったように、行動しないと分からないことの方が多い。

スキの周辺のことを、とにかくやってみたらいい。何かについて一言居士になった時、きっとあなたは気づく。
「あ、私、こっち側の人だ」と。

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