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発達障害じゃなかった事例

文章力養成コーチの松嶋です。以前、脳を損傷した人たちの支援をしているNPOの理事をしていました。失語症のある方の意思疎通支援者の資格も持っています。国語、言語から、脳の言語野のしくみなどに興味があり、勉強会やセミナーなどにも参加しています。

先日、この世界で著名な渡邊修先生の講演会に行ってきました。私は分かりやすい修先生の講演会が大好きで、いわばファンです(笑)

今回は、そんな修先生が初めて話すという小児の分野のセミナーでした。中野区障害者地域自立生活支援センター「つむぎ」が主催です。

2歳の時に自転車から落ちてた

ママチャリに子どもを乗せようとしたら、足がひっかかって落ちてしまった。頭を打って激しく泣いたけど、じきに泣きやんで、そのあとは元気。

私も母親なので、こんな経験、たくさんあります。皆さんも思い当たりますよね? 他にも、川でおぼれたけど意識が戻って助かった、ドアに激しくぶつかったけどそのあとは遊んでたとか。実は脳を損傷している可能性があるとのこと。そして、その時はなんとなく過ごせても、前頭葉が成熟する12歳以降になって、行動に問題が出てくることがあるそう。

多様な脳の損傷による障害

脳波様々な役割を果たす臓器なので、強打したり、一時的に酸素がいきわたらなかったり(息を止める潜水も危険です)することで損傷すると、様々な障害が残る可能性があります。高次脳機能障害といいます。損傷した部位によりますが、次のような症状が代表的です。

ボーっとする
気が散りやすい
自分で計画して行動できない
やる気がない
相手の気持ちが分からない
怒りやすい
約束を忘れる

言葉の読み書き、話す聞くができなくなるのが失語症ですが、失語症も高次脳機能障害に含まれます。
さて、多かれ少なかれ、そんな症状、私にもあるよーという症状ばかりですが、これが学校で、職場で、問題となるような状態を障害というのだと思います。

認知症は治らないけど、高次脳機能障害はリハビリで良くなる

上記の症状は、認知症にも似ていますよね。私の父は認知症ですが「怒りやすい」以外、全部当てはまります(笑)←やっと笑えるようになってきました……。
認知症は進行するものです。進行を抑えることはできますが、進行することには変わりありません。でも、高次脳機能障害はリハビリで機能が回復します。そのために、環境調整が必要です。でもまず、高次脳機能障害であるかどうかの見極めが必要です。

発達障害との違いは?

私はセミナー内で質問しました。
「症状を見ると、『やる気がない』『気が散りやすい』など学習支援が必要な子たちと似ている部分があります。何か明確に区別する目安はありますか?」
「医者に診せてください。私のところでもいい」と修先生が答えました。
脳を見て、脳に傷の痕跡があれば、高次脳機能障害である可能性が非常に高いそう。

学習支援とは別のプログラムが必要

友達ができない、いじめにあった、そういうような理由で登校拒否をしていた中学生男子。小2の時に交通事故にあっていた例。

特別支援学校に通っている問題行動のある生徒。ADHDと診断されていたが、実は生まれた時から脳の血管に奇形があった。

そんな例がたくさんあるそうです。とにかく脳を見ないと分からないことなのに、MRIも撮らずに、問題をかかえたまま普通級にいる。本人が一番つらいとのこと。

小児の高次脳機能障害の特徴

前頭葉の損傷の場合、そこの部分が発達するまで人と違うことが分からない、学習に支障をきたすような症状の場合、学校教育が始まらないと分からないという特性があります。
また、障害により、友人との関係がうまく作れず、健康な子供との差が大きくなり、成長するにつれ、ますます関係が作りにくくなります。
親が、障害を認めず、学校に通わせ続けることで、適切なリハビリの機会を逃し、かえって、本人の一生に大きな負担が生じることも、大人の障害とは別の特徴があります。

高次脳機能障害に関しては、法律ができていませんが、様々な制度が整いつつあります。カウンセラー、スクールワーカーなど、学校側の連携体制も整ってきています。「そういえば、子どもの時、頭を打ったことがある」「交通事故に遭ったことがある」と思い当たる親御さん、まずは専門家に脳を診てもらいましょう。
そして「障害」はその子にあるわけではなく、社会とその子の間にあるので、それを取り除くために、保護者、学校、医療関係者などがチームとなって、その子をサポートすること、社会との間にある「障害」を取り除いてあげることが一番大事だと、私はいち教育者として思うのです。

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